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深まる絆 3

 しかし葉山先輩って、ガード硬いよな~  なかなか暴けないプライベート。  一度だけ家にお邪魔したのに、俺の記憶がないとは……悔しいぜ!  しかも、あの家からは引っ越してしまったなんて……隠せば隠すほど、気になるぞ。  まぁいずれにせよ、本当に可愛い先輩だ。 「おい、いつまでボケっとしてんだ。金森、行くぞー! 」 「え? 菅野先輩も一緒ですか」 「悪いか、お邪魔だった? 」 「い、いえ!」  わっ、ヤバイ! 俺、あからさまに邪魔が入ったって顔していた? 「何、情けない顔してんだ? いいか。今度バケツをひっくり返したり花をぶちまけたりして、葉山に迷惑かけたら、ぶっ殺すぞ!! 」 「わ、その節はすみません!! 」  葉山先輩と菅野先輩って、結束固すぎ! 仲良すぎだろ?  俺が入る余地も作って欲しいよ。 そうだ部署の飲み会でも、またないかな~ 「おらおら、新人よ、働けぇー」 ****   「くすっ菅野って、こんなに人使いが荒かった?」 「『金森鉄平』限定だ。アイツにはあれくらいで丁度いい」 「ふふっ本当に頼りになるよ。僕は注意する前に……金森くんのペースに巻き込まれちゃうからね」 「それそれ、この前なんて頭から水被ってたよな」 「……あれは二度とごめんだよ」  菅野には恥ずかしくて話していないが、今思い出してもロッカー室での着替えを覗かれた時の気まずさったらなかった。それというのも、宗吾さんがあんな場所にキスマークを丹念につけるからだ。  あっ……まずい。仕事中に宗吾さんのことを考えるのはやめようって誓っているのに。 「そうだ。葉山、今度一緒にランチに行こうぜ。行ってみたい店があって」 「うん、いいよ。どこ?」 「銀座のレストランで、ストロベリービッフェをやっていてさ。なっ内勤の時、行こうぜ!」 「へぇもう苺の季節?」 「苺と言えば……なぁ葉山って、苺には牛乳浸し派? それとも練乳派?」 「れ、練乳!! 」  やめてくれよ……封印したはずの北海道旅行での痴態を思い出してしまうじゃないか。  僕……耳まで真っ赤になってしまう。 「なるほど、練乳か。俺は牛乳かな。あれ? 葉山……何だか顔がまた赤いぞ? お熱か」 「ち、違うって」 「ほんと可愛い奴! 練乳は甘くて美味しいよな。苺につけてペロリと舐めるのは俺も好きだよ」  まずいって……!! もうよせって! 胸の先っぽがムズムズしてくる。  これって絶対に宗吾さんのせいだ!  宗吾さんは愛をスキンシップで伝える派(?)だから、毎日毎日最後までスルわけじゃないのに、僕の躰にたっぷり触るから、どんどん過敏になってくる。    練乳、ぷ、プレイとか、未知な体験は、僕にとって忘れられない北海道の思い出だ(いや、違う!! と思いたい) 「おいおい、ひとりで勝手に百面相してんな」 「あ、いや、これは……」  菅野に指摘されて、ますます動揺してしまう。 「でも、葉山はすごく明るくなったよな。前はいつも遠慮しがちで、何か思い詰めていたけど、今は……ちょっとヤバい? 」 「や、ヤバイって? な、何かな」 「ニヤついている。仕事中に何考えてんだ? まぁよほど幸せなんだな」 「う……」 「さてと、仕事仕事!」 「あ、うん!」  そこからは仕事に没頭した。  明るくなったのかな、僕……  友人から、そう言われるのは、とても新鮮で嬉しいことだった。  宗吾さんはいつも太陽みたいに明るくて陽気な人だから、傍にいる僕までポカポカな気分になれる。  あ……これって冬の日溜まりと似ているかも。  だから僕は、彼の傍に寄り添うのが好きだ。 「寒くなってきたね」 「今日は11月下旬の気候だと、天気予報で言っていたよ」 「そうか、もうすぐ寒い冬がやってくるのか」 「じきにね」  屋外で作業してしていると、日陰はひんやりとして寒い位だった。  だからかな、早く、早く、彼に会いたくなってしまう。  宗吾さんは今頃、何をしているのだろう。  仕事モードの宗吾さんは、大人の魅力溢れて格好いいだろう。  日常の中のふとした瞬間に、ふわっと会いたい気持ちが湧き上がってくるのって、素敵だ!  夏を経て秋を迎え、ますます宗吾さんとの愛が深まっている。  そう実感している。

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