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恋満ちる 31
「あれ? もう二人とも、ぐっすりなんですね」
「あぁ、早寝早起きだってさ。さぁ、早くこっちに来いよ」
浴衣姿の瑞樹を、俺のベッドに誘った。
洋室と和室は襖のようなもので仕切られているとはいえ、話し声は筒抜けだ。だから、さっきから俺たちは馬鹿みたいに小声で囁き合っている。
「だ、駄目ですよ。同じベッドなんて……今日は、空いている方で眠ります」
「おいおい、まさかこの状況で、君に手は出さないよ」
「あっ、また……っ」
瑞樹が参ったなという表情で、苦笑する。
「……君とくっついて眠りたい。なぁ、駄目か」
「も、もう……宗吾さんは……僕が断れないのを知って」
「そうだよ。おいで、じっくり見たかったんだ」
「な、何をですか」
戸惑う瑞樹の細い手首を掴んで、仰向けに寝かせた。
「あの、宗吾さん……」
「なんだ? 」
「僕、最近……とても、おかしいですよね」
「何が? 」
「変では、ありませんか」
「どういう意味だ?」
「う……やはり変です。売店であんなことするなんて……」
「あぁそれか。傑作だったぞ。だが俺は、楽しいし嬉しかったよ」
「やっぱり……」
「可愛かったよ。もう一度、パンツを見せて。ちゃんと見たかった」
可愛い唇を吸いながら、瑞樹の浴衣に手をかけて、太腿を撫でながら裾を割っていく。
「ん……っ、駄目です」
「ここは俺だけのものだろ?」
「あ……」
彼の平らな胸にも触れたくて、襟元から手も入れた。胸の尖りを指で弾いてやると、瑞樹の目元が赤く染まっていく。
甘く可愛い男だよ。君って人は……
女装姿の瑞樹よりも、俺は断然こっちの方がいいな。
「んんっ……感じてしまうので、駄目ですって。今日は何もしないって言ったのに」
「ごめんな。君といるのが嬉しくて、つい」
「嬉しいです。さっき……僕の方から『1122』号室を訪ねようと思っていました」
「俺も部屋番号を君にちゃんと聞けばよかったと後悔していたんだ。しかし、菅野くんはいい奴だな」
「はい……あっ、もう……ふ、触れないで」
「お? もう……こっちは、少し湿っているな」
「み、見ないで」
そう言われたら見たくなるのが、大人心さ。(違うか)
浴衣の裾を大胆に開いて、瑞樹のパンツの前面に触れると……絶妙な位置が嵩を増して、じわっと湿っていた。
「うーむ、これは……やっぱり我慢できそうもないぞ」
「ば……『バツ』です。って、パンツに書いてあるじゃないですか!」
「ははっ、嫌な予感はしていたが、実に絶妙な位置にある『×印』だな。しかも息子の字だしなぁ……悪さが出来ないようになっている」
「……ですよね。自分でも笑ってしまいます」
俺たちは抱き合って、笑いを必死にかみ殺した
「やっぱり続きは……家でだなぁ」
「ですね……でも……朝まで、ここにいてもいいですか。僕をずっと抱きしめていて下さい」
そう言いながら俺の胸元に顔を埋め、背中に手を回してくれる君が可愛くて、メロメロさ。
「もちろんだ」
瑞樹は可愛い男だ。本当に俺好みだ。
いつだってこんな風に、ポカポカと喜ばせてくれる。
いつも……相手をしっかり見つめて考えてくれるから、俺も瑞樹をしっかり見るようにしている。
それにしても、今回は唐突だったが、来てみて良かった。なんとなく君が寂しそうだったから、押しかけてしまったのだ。
俺……君の助けになっているか、君の癒しになっているか。
「宗吾さんは男の僕を、丸ごと、そのまま愛してくれるから……好きです」
「当たり前だろう? 俺は瑞樹だから好きなんだよ」
「嬉しいです」
花のように微笑む瑞樹は、少し眠たそうに眼をこすった。たまにする幼子のような仕草も、愛おしい。
「おやすみ。俺は……まぁ、その……精進するよ」
「ふふ、僕もです」
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