539 / 1741

恋満ちる 31

「あれ? もう二人とも、ぐっすりなんですね」 「あぁ、早寝早起きだってさ。さぁ、早くこっちに来いよ」  浴衣姿の瑞樹を、俺のベッドに誘った。  洋室と和室は襖のようなもので仕切られているとはいえ、話し声は筒抜けだ。だから、さっきから俺たちは馬鹿みたいに小声で囁き合っている。 「だ、駄目ですよ。同じベッドなんて……今日は、空いている方で眠ります」 「おいおい、まさかこの状況で、君に手は出さないよ」 「あっ、また……っ」  瑞樹が参ったなという表情で、苦笑する。 「……君とくっついて眠りたい。なぁ、駄目か」 「も、もう……宗吾さんは……僕が断れないのを知って」 「そうだよ。おいで、じっくり見たかったんだ」 「な、何をですか」  戸惑う瑞樹の細い手首を掴んで、仰向けに寝かせた。 「あの、宗吾さん……」 「なんだ? 」 「僕、最近……とても、おかしいですよね」 「何が? 」 「変では、ありませんか」 「どういう意味だ?」 「う……やはり変です。売店であんなことするなんて……」 「あぁそれか。傑作だったぞ。だが俺は、楽しいし嬉しかったよ」 「やっぱり……」 「可愛かったよ。もう一度、パンツを見せて。ちゃんと見たかった」  可愛い唇を吸いながら、瑞樹の浴衣に手をかけて、太腿を撫でながら裾を割っていく。 「ん……っ、駄目です」 「ここは俺だけのものだろ?」 「あ……」  彼の平らな胸にも触れたくて、襟元から手も入れた。胸の尖りを指で弾いてやると、瑞樹の目元が赤く染まっていく。  甘く可愛い男だよ。君って人は……  女装姿の瑞樹よりも、俺は断然こっちの方がいいな。 「んんっ……感じてしまうので、駄目ですって。今日は何もしないって言ったのに」 「ごめんな。君といるのが嬉しくて、つい」 「嬉しいです。さっき……僕の方から『1122』号室を訪ねようと思っていました」 「俺も部屋番号を君にちゃんと聞けばよかったと後悔していたんだ。しかし、菅野くんはいい奴だな」 「はい……あっ、もう……ふ、触れないで」 「お? もう……こっちは、少し湿っているな」 「み、見ないで」  そう言われたら見たくなるのが、大人心さ。(違うか)  浴衣の裾を大胆に開いて、瑞樹のパンツの前面に触れると……絶妙な位置が嵩を増して、じわっと湿っていた。 「うーむ、これは……やっぱり我慢できそうもないぞ」 「ば……『バツ』です。って、パンツに書いてあるじゃないですか!」 「ははっ、嫌な予感はしていたが、実に絶妙な位置にある『×印』だな。しかも息子の字だしなぁ……悪さが出来ないようになっている」 「……ですよね。自分でも笑ってしまいます」  俺たちは抱き合って、笑いを必死にかみ殺した   「やっぱり続きは……家でだなぁ」 「ですね……でも……朝まで、ここにいてもいいですか。僕をずっと抱きしめていて下さい」  そう言いながら俺の胸元に顔を埋め、背中に手を回してくれる君が可愛くて、メロメロさ。 「もちろんだ」  瑞樹は可愛い男だ。本当に俺好みだ。  いつだってこんな風に、ポカポカと喜ばせてくれる。  いつも……相手をしっかり見つめて考えてくれるから、俺も瑞樹をしっかり見るようにしている。  それにしても、今回は唐突だったが、来てみて良かった。なんとなく君が寂しそうだったから、押しかけてしまったのだ。  俺……君の助けになっているか、君の癒しになっているか。 「宗吾さんは男の僕を、丸ごと、そのまま愛してくれるから……好きです」 「当たり前だろう? 俺は瑞樹だから好きなんだよ」 「嬉しいです」  花のように微笑む瑞樹は、少し眠たそうに眼をこすった。たまにする幼子のような仕草も、愛おしい。 「おやすみ。俺は……まぁ、その……精進するよ」 「ふふ、僕もです」

ともだちにシェアしよう!