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聖なる夜に 5
「お客様、お待たせ致しました」
「はい」
「あの、よろしければ、贈り物にカードを同封出来ますが」
「あ、ぜひ」
「では、こちらをお使いください」
差し出されたのは、乳白色の無地のカードで、銀色の箔押しの星が一つ瞬いている上品なデザインだった。
「わぁ、星が綺麗ですね」
「これは北極星です」
「インパクトがあって、素敵です」
「ありがとうございます。北極星は何があろうと動かない目印ですので」
何があろうと動かない星か。
とても素敵な言葉をもらった。
生きていると本当に……毎日いろいろなことが起きる。
感情が揺れ動き、常に上機嫌ではいられない。嫉妬や怒り……苦しみ悲しみ、負の感情だって、良いことと同等に、誰にでも訪れる。
僕だってそうだ。努めて上機嫌でいたいと願うが、そうでない時だってある。僕も人間だから……。
そんな時は『心の|北極星《Polaris》』を目印にしたい。
北極星は地球から見ると、天の北極に位置して動かずに座位しているので、見つけた角度によって、自分が今どの方角、どの地点にいるのかを教えてくれる星だ。だから人は……人生という道に迷った時は、心の中にある北極星を探したくなるのだろう。
誰にでも、心の中に……その人だけの北極星を持っている。
それは誰かからもらった温かい言葉だったり、鮮明に刻まれた心地良い体験や経験だったり様々だろう。
進む方向に自信が持てなくなった時は、見つめたい。
北極星の光を──
僕にとっての光は宗吾さんと芽生くんという家族だ。そしてその光の周りには、今日靴下を贈る人たちがいてくれる。
贈り物を選びながら、今の僕がいる場所を改めて確認出来た。
カードには、こう書いた。
メリークリスマス! 僕の大切な家族に多くの幸せが訪れることを祈ってます。I'm so glad I met you. I'm glad to able to spend this time with you again.(あなたに出会えてよかった。共に過ごすことができて嬉しいです)
少し気恥ずかしかったが、贈りものとは物だけではない。者……つまり人の言葉も添えたい。
函館も軽井沢も東京も……場所は離れていても、僕と同じ時を刻んでくれている。それが嬉しくて。
店の重厚な飾りがついた扉を開いた時、急に冷たい外気に晒されて怯んだ。
一瞬目の前をちらつく光を感じたので、思わず雪かと思い、空に向かって手を差し出してしまった。
「雪……?」
北海道だったら、もう、とっくに雪がちらついている時期だ。
「夏樹……?」
夜空の向こうに、今日靴下を贈ることの出来なかった家族の存在を思い出した。
僕の可愛い弟、夏樹……君が生きていたら、何色が良かったかな? 夏生まれの君には、思いっきり日差しを浴びた明るい青だろうか。あの年……君に、夏の海も見せてあげたかった。
いつもなら悲しい気分になるのに、今日はなぜだか、夏樹が近くにいるような気がして、ふっと微笑んでしまった。
時計を見ると、待ち合わせ時間よりも少し早かったが、そのまま外で待つことにした。
今から、僕は……|北極星《Polaris》……僕の大切な人と待ち合わせだ。
時を合わせられる、時を揃えられる……時を重ねられることが、どんなに奇跡的なのか。
亡くなってしまった両親や夏樹を想えば、しみじみと感謝する。
僕は、心に誓う。
今を大切に、生きて行こうと。
あとが(不要な方はスルーです)
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読者の皆さま。年末ですね。いかがお過ごしでしょうか。
この後、クリスマスのお話が続きます。少し季節がずれてしまいましたが、ぜひ書きたいので、お付き合いいただければ嬉しいです♡
このお話が少しでも癒しになれば……うれしいです。
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