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聖なる夜に 12

上等な包装紙だったが、待ちきれずにビリビリに破いてしまった。  早く、中が見たくてさ!  薄くて白い紙に丁寧に梱包されたものは、マスタードイエロ―のウールの靴下で、どこか懐かしいノルディック調の柄が入っていた。 「あ……っ」  なんだかタイムリ―過ぎて、泣けてくる。  ヤバイ……涙腺が。  中には、綺麗な色のカードが同封されており、瑞樹からのメッセージが書かれていた。  懐かしい文字、よく勉強を教えてくれた……兄の筆跡が懐かしい。 ……  潤へ。  元気に頑張っているか。メリークリスマス!  僕の大切な家族に、多くの幸せが訪れることを祈っています。  I'm so glad I met you. I'm glad to able to spend this time with you again.(潤に出会えてよかった。共に過ごすことができて嬉しいです)  軽井沢と東京と、距離は離れていても……心は近いよ。 ……  嬉しくて、すぐに東京に電話をかけた。  用事もないのにかけるのは照れ臭いが、今日ならいいだろう。  すると、すぐに瑞樹が出てくれた。 「潤?」 「あぁ……に、兄さん」(こう呼ぶのは、まだ少し照れ臭い) 「どうした? あ、もしかして……」 「靴下が届いたよ。すごく暖かそうだな。洒落た色だし、気に入ったよ。ありがとう」    そう告げると、電話の向こうで瑞樹がニコッと微笑んだ気がした。  目に見えなくても心が繋がっているから、伝わってくる。 「気に入ってくれて、よかった。潤……元気にやっているか。そっちは冷えるだろう。慣れない仕事で、きっと夜になったら、疲れてぐったりしているのだろうな。足は冷やさないようにした方がいいよ。潤は案外風邪をひきやすいから」 「あぁ、分かった。早速今日から履くよ。俺からは何も送っていなかったのに……悪かったな」 「いや……ちゃんと、もらったよ」 「へっ?」  何のことだ? 「俺? 何もやってねーよ」 「この電話だよ。僕……潤と話したかった。その……何も用事がないのに電話をするのは、なんだか照れ臭くて……だから潤から連絡がもらえたのが、プレゼントだよ」  なんだよ! 瑞樹も同じこと考えていたのかよ。それにしても相変わらず謙虚過ぎるぜ。 「それ、分かる! オレも同じだった」  力強く頷くと、瑞樹も可憐に笑ってくれた。 「ふふっ、分かってくれる?」 「あぁ!」 「そうだ。潤……年末年始は函館に帰省しないんだって?」 「あー、今年はもう無理そうだ」 「そうか、潤も……お母さんたちも、お互いに寂しいな」  瑞樹と気が合った。それが嬉しくてデレデレになっていた。だから、つい瑞樹の寄り添う優しい言葉につられて……甘えてしまった。こんなセリフをオレが吐くなんて、自分でも驚くぜ。 「そうなんだ……ひとりは寂しいもんだな。なぁ兄さん……そのさ、よかったら宗吾さんと芽生くんと一緒に、こっちに遊びに来ないか。こっちの雪もかなり綺麗だぞ」 「えっ……僕が軽井沢に?」  瑞樹は一瞬驚いた様子で、言葉を詰まらせていた。  あっ、しまった! 瑞樹にとって軽井沢って、あの事件の現場じゃないか。オレはアホだ……全く学んでいない!! 「わっ、悪い、今のは忘れてくれ!」 「……潤……もしかして、寂しいのか……」 「だっ、大丈夫だ」 「いや、寂しいんだな。僕が行くよ……うん、遊びに行く! 潤の働いている所を見たいし、会いたいし……実はちょうど旅行先を迷っていたからタイムリーだよ」  俺の心配とは裏腹に、瑞樹からの返答は、意外なものだった。 「いっ、いいのか」 「うん、宗吾さんに早速話してみるよ。僕はね……潤が誘ってくれて嬉しかったんだ。潤、改めてメリークリスマス!」

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