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聖なる夜に 23

「嬉しいです。あの……中身は、なんですか」 「当ててみて」 「えー、おにいちゃん、なんだろうね?」  僕の隣で、芽生くんがワクワクした表情で、ラッピングの包みを抱きしめていた。 「よーしっ、おにいちゃん、がんばって、あてようね」 「う、うん」  どうやら、芽生くんの大好きなあてっこゲームが始まったようだ。  子供っていいね。  幼い子供から見る世界は、どこまでも新鮮で、日常が冒険なんだ。  日常から小さな楽しみを、いとも簡単に見つけ出す天才だ。  冒険って、与えられるものではなく、作り出すものなのだなと、芽生くんといると強く思うよ。  僕のこの日常が、ワクワクとする冒険になっていく。  いつも指を咥えて見ているだけだった僕も、いつの間にか、つられて……冒険家になっていた。 「そうだね、僕のは、ふわふわだよ」 「ボクのは、モフモフだよ。あー、ここからちょっと色がみえるよ」 「芽生くんは、何色?」 「えっとねぇ、赤かな。お兄ちゃんのは?」 「んーっとね、白かな」    赤と白? 「はははっ、もう分かったか」  宗吾さんが腕を前で組んで、楽しそうに笑っている。 「ん……」 「パパぁ、ヒントぉ」 「そうだな。この季節にぴったりなものだ」    まずいな。さっきから僕の脳内では、赤と白がグルグル回っている。  まさか……? まさかアレではないですよね。 「どうした? 瑞樹、神妙な顔をして」 「え、いや、その……まさか」 「まさか?」  先週、宗吾さんに抱かれた時、変なことを口走っていたので、それが過ってしまう。  …… 『あの……宗吾さんは、クリスマスに何が欲しいですか』 『そうだな、君が欲しい』 『もう、そんなことばかり、あっ……んんっ』 『君にサンタクロースの衣装を着せて、それから脱がしたい』 『いつもそんなことばかり言って……』 『なぁ、駄目か』 『駄目ですよ』    平らな胸を揉まれ、腰を掴まれて揺さぶられ……身体が紅潮していく。 『瑞樹の顔も身体もほわんと赤くなって、綺麗だ。クリスマスには、サンタの衣装の中に君を埋めたいよ。俺の恋人はサンタクロースだ。俺に毎日、幸せを運んでくれる人だからさ!』 『駄目ですって……』 『きっと、月影寺の洋くんなら喜んで着てくれるぞ』 『そんな……あっ、んんっ……ま……さか、彼だって嫌がりますよ……』 『そうか。今度聞いてみような』  彼に包まれていく。ここは、暖かい……大好きな場所だ。  …… 「まっ、さか、本気で、サンタクロースの衣装を?」  思わず口に出すと、宗吾さんはポカンと口を開けた。  えっ……違うの? 「瑞樹……? そうか。そんなに欲しかったのかぁ……あの時、駄目だって言うから、泣く泣く諦めたのに、こんなことならクリスマスプレゼントは本気でサンタの衣装にするんだった」 「え、違いますって! そんなぁ……」 「瑞樹って、案外積極的だよな。サンキュ」 「ち、違いますってば」  あぁ、また引っかかった。  恥ずかしくてプレゼントの包みを抱きしめて俯いていると、芽生くんがポンポンと肩を叩いてくれた。 「おにーちゃんはね、サンタにはなれないよ」 「えっと、どうして?」 「だって、おにいちゃんは、サンタさんからプレゼントをもらう方だもん!」 「そうなの?」 「うん、だって、おにいちゃんはずっと、『いいこ』にしていたでしょ」 「あ……」  芽生くん。君からの言葉はいつもいつも……最高のギフトだよ。 「さぁ、もう開けてみろ。二人に似合うと思って選んだんだ。着せてみせてくれよ」 「はい!」  中身はノルディック柄のセーターだった。僕は白を基調としたもので、芽生くんは子供らしい赤だった。ふかふかモコモコで、とても暖かそうだ。 「素敵なセーターです!」 「わー、これならゆきがふってもだいじょうぶだよ」 「そうそう、雪国にも着ていけるぞ」  宗吾さんは大人の笑みを浮かべていた。 「あの……宗吾さんの分も買いましたか」  僕が、つい自分の分を買ってしまったのと同じ気持ちでしたか……。 「もちろんさ、瑞樹と色違いだ。これを着て、寒い冬を一緒に過ごそうな。君がくれた靴下とセットで」 「はい! 宗吾さんと……僕は、今年はずっと一緒にいます」 「あぁ、傍にいてくれ」  

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