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聖なる夜に 26

「宗吾さん、信じられません。ホワイトクリスマスなんて……嬉しいです。まるで……函館の冬のようです」 「そうだな。きっと、これは天国にいる夏樹くんからの贈り物だな」 「あ……実は、僕も夢を見て……そう思っていたので、嬉しいです」  三人で音もなく軽やかに舞い降りてくる優しい雪を、浴びた。   「ねぇ……おにいちゃんおしえて。お空から雪がふってくるのは、どうしてなの?」 「それはね。きっと……お空に逝ってしまった人が、幸せでいると知らせてくれているんだよ」 「そっか、だから雪にふれると、つめたいのに、ふわんとあたたかいきもちになるんだね」 「うん、僕たち家族も幸せになるね」  三人で微笑みあう。  とても優しい時間が流れていた。 「おっ、ここに手紙も届いているぞ」 「サンタさんから?」 「そうだ」 「瑞樹と芽生へと書いてある」 「え……僕にも……ですか」  宗吾さんが、ふっと表情を緩めた。  僕は彼のこういう大人っぽい顔が好きだから、思わず見蕩れてしまう。宗吾さんの黒い髪にも白い雪がついている。うん、とてもカッコイイ人だ……。 「お兄ちゃん、カードだよ! みてみよう」 「うん」  芽生くんと一緒にカードを開くと、ポップアップになっており、立体的な緑の木が突然現れた。そして木の枝に……ぶら下がっているのは、可愛い天使だった。    粉雪が、カードにも降り積もっていく。  雪の結晶のツリーができあがる。  もう駄目だ……堪えていたものが、溢れ出す。 「なつきっ……」 「そうか、このテンシくん、おにいちゃんのおとうとのナツキくんなんだね」 「うん、芽生くん……僕の弟の夏樹は、あのお空にいるんだ。天使になって……この雪を届けてくれたんだ」 「よかったぁ。おにいちゃんがいい子だから、ちゃんとサンタさんが、ねがいをかなえてくれたんだね。やった! やったー!」  芽生くんが、嬉しそうに笑う。 「ありがとう。芽生くん。僕と夏樹を会わせてくれて」 「よかったね。あれ? カードの中に何か入っているよ」 「なんだろう?」  芽生くんと確かめると、それは電車の切符だった。 「わー、切符だ。これ、なんてかいてあるの?」 「あ……軽井沢への往復切符だ」 「かるいざわ、しってる! そこって、雪がつもっているよね」 「うん! スキーもかまくらも出来るよ」 「ねぇねぇパパー。もしかして、またみんなで、リョコウにいけるのかな」  宗吾さんが芽生くんを僕から受け取って、もっと高く抱き上げた。 「そうだぞ! 瑞樹の弟の潤のところに遊びにいこう。雪遊びをしに行くぞー!」 「ほんとう? うれしいよ! やったー」   **** 「いらっしゃい!」 「やぁ、母さん」 「お邪魔します」  俺たちは簡単に朝食を食べた後、実家に遊びに行った。今日は兄さんと美智さんも集まって、昼食を兼ねてクリスマス会をする予定になっている。 「母さん。元気か。箱根旅行は、楽しかったな」 「ありがとう。おかげでまた人生を楽しもうと思えるようになったわ。やっぱり旅はいいわね。あなたたちはまだ若いんだから、行けるうちにいろんな場所に行きなさい」 「そうだな。行けるときに、出来ることをするって……大事だな」 「そうよ」 「軽井沢に行ってくるよ」 「……そうなのね。瑞樹くんは……もう、大丈夫なの?」 「あぁ、自分から行きたいと」 「そう……じゃあ、宗吾、あなたが、しっかりサポートするのよ」 「あぁ、そうするよ」  芽生は日に日に成長していく。いつまでも俺たちとべったりしてくれないだろう。だからこそ、今は三人でギュッと集まっていたいんだ。  瑞樹が苦難を乗り越えようとしているのなら、両脇からサポートしたい。  2月に、二人を軽井沢に連れて行く。  皆で、冬のレジャーを楽しもう! 「お、宗吾たち、来たのか」 「兄さん……えっ!な、何ですか、その格好は‼ 」 「え、憲吾さん? わぁ……どうしたんですか」 「えー!」  

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