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聖なる夜に 39
「宗吾さん……っ」
「瑞樹」
僕たちはクマとうさぎの部屋着のまま、同時にベッドに潜り込んだ。
早く……愛して欲しくて、愛したくて。
僕は仰向けに寝かされ、宗吾さんが覆い被さってくる。
彼の懐に入ったような安心感がある体位が、好きだ。
だから宗悟さんは、こうやって僕を抱くことが多い。
「しかし、本当にモコモコなうさぎだな」
彼は僕の頭にフードをすっぽり被せる。
「特にこの長い耳がいいよな」
うさぎ耳を引っ張られチュッとキスされると、何故か僕の耳まで熱くなった。なんだか……変。こんな着ぐるみみたいな姿で抱かれるのは、初めてだからかな。
宗吾さんもグレーのモコモコなクマさんなので、手を伸ばして背中をさすると、肌触りが良くて心地よかった。
「……んっ、宗吾さんのクマも、いいですよ」
「はは、お互い、なんだか今日は動物にでもなった気分だな」
「いいですか……大人しいクマですからね」
「んー、どうだろう? 無性に君を食べたくなっているクマだが」
宗吾さんの大きな手の平が、裾から入り込んで、胸を大きく揉んできた。
「あっ……っ」
窓辺にいたので少し冷えた身体が、一気に熱くなる瞬間だ。
「んっ……」
僕の顔を覗き込むように宗吾さんの顔が近づいて、そのまま唇がぴったりと重なった。角度を変えて唇を押しつけられ、僕も誘導されるがままに薄く唇を開くと、中に彼の舌がやってきた。
身体の力を抜いて、瞼を閉じて、ぜんぶ受け入れていく。甘いデザートのようなキスを。
だがそう思ったのは最初だけで、だんだん荒いキスになっていく。息をするのが苦しくて、一瞬押し返そうとするが、逆に僕の身体を彷徨う手の動きが速くなった。
部屋着を着たままなので僕の視界からは宗吾さんの手が見えないのに、乳首を擦られたり、捩られたり、乳輪ごと揉まれたりして、気持ちを持っていかれる。
身体が火照って熱い……。
「宗吾さん……もう、脱がして……」
「今日は可愛いから、このままな」
「えっ」
それでいて、ウエストからもう片方の手が入り込み、今度は下半身に伸びていく。腰から腿……際どいラインを下着越しに撫でられて、過敏に震えた。
「ん……っ」
鼻にかかった吐息が漏れると、宗吾さんが唇を解き、僕を愛おしそうに見下ろした。
「いい声だ。瑞樹」
「は、恥ずかしいです、そんな風に言わないで……」
「感じてくれ、もっと」
下着越しに触れられ、部屋着を着たまま高められて、興奮した熱に冒され、僕の背中がしっとりと汗ばんでいた。
「しっとりして気持ちいいな」
「もう、脱ぎたいです」
「今日はうさぎの姿の君を抱く」
「もう……っ」
よほど、うさぎの姿の僕を気に入ってくれたのだ。結局、僕もほだされてしまう。だから宗吾さんに体中を愛撫されながら、僕も彼の毛並みを指で梳いて整えてあげた。
ほんとにクマさんみたい。そう言えば……幼稚園の頃に買って貰った僕の大好きだったクマはどこに行ってしまったのか。
あぁ……そうだ。あれは夏樹にあげたんだった。あの日のピクニックに、一緒に参加していた。
青いギンガムチェックのレジャーシートのバスケットにもたれていたのが、僕が見た最後。
「僕のクマさん……」
「ん? どうした? あ、事故の日を思い出して」
「うん……」
「クマのぬいぐるみは夏樹が抱っこしていたんです。たぶん、最後も車の中で……」
「それで?」
宗吾さんが心配そうな顔をする。
「そこまでです。その先は、覚えていません……」
「そこまででいい。俺がその時のクマになってやる!」
強く抱擁してもらい、気持ちが落ち着いた。僕はこんな風に最近、夏樹との今生でのお別れのシーンを思い出せるようになっていた。
「宗吾さんのクマ、似合っています……好きです」
宗吾さんはそう言いながら、僕のボトムを下着ごとずらした。
「ふっ……言っていることと……ちぐはぐですよ」
「だが、君のここ、もう苦しげだ」
「あ……もうっ、そんなに?」
自分でも驚くほど固くなっていたので、宗吾さんが男らしい節のある指で、昂ぶるものを扱いてくれた。
「あっ……やっ……」
喉を震わせると、そこをパクッと食べられた。まるで仕留められたうさぎみたいなポーズに、一気に顔が火照ってしまう。
「や……っ」
両腕を頭上で留められて、腰を揺さぶられていく。
僕の身体が食べられていくような、不思議な感覚。
身体が宗吾さんの色に浸食されていく。
「瑞樹、来年も一緒だ。その次も、その次も、ずっと一緒だ」
「はい。そうしてください。僕を繋ぎ止めてください。この地上に」
地上だなんて……
自分でも大袈裟なことを言っていると思ったが、今年のクリスマスはずっと天国に逝ってしまった夏樹が近くにいるように感じていたせいかもしれない。
ずっと心の奥底で、あの事故で、僕だけ生き残ったことを恥じる日々だったが、今は違う。
生きていたから、宗吾さんに出逢えた。
芽生くんやお母さんたちにも……函館の家族にも会えた。
今こうやって愛し合えているのは、僕が生きているから。
宗吾さんのモノが先走りを浮かべて、一気に僕の中に入ってくる。
「瑞樹の中に……入るぞ」
ぐぐっと体重をかけられ、宗吾さん自身を、僕の身体が深く呑み込んでいく。
「あっ、あっ……」
快感が身体を駆け巡り、涙が迸る。
涙は頬を伝い……シーツに吸い取られていく。
今の僕には、こんなにも強く僕と繋がってくれる……愛しい人がいる。
それが嬉しい。
受け入れた部分に熱を感じるのは、僕が生きているから。
馴染みきれない部分を揺すられ、煽られていく。
「瑞樹、今年のクリスマスは最高だ。ここまで出来た。君をしっかり抱けた」
「はい……僕も嬉しいです」
去年を思えば、切なさや苦しさが募る。
だが、あの苦しい時間も、僕たちの恋を育てる大切な時間だった。
過去の僕に囁いてあげたい。
君はよく耐えた、よく頑張ったね。
今の僕に言いたい。
愛されることに臆病にならないで……もう自由に愛して、愛されていい。
メリークリスマス、素敵な時間をありがとう。
聖なる夜に 了
あとがき(不要な方はスルーです)
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ずいぶん長引いてしまいましたが、ようやくクリスマスの話が終わりました。kindleで公開された『天上アンソロジー』で、夏樹を主人公で書いたのもあり、瑞樹も大切な弟のことを地上から沢山思い出していました。39話も読んでくださってありがとうございます。また明日からお話を進めていきますね。
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