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白銀の世界に羽ばたこう 6

 この先は……言葉はいらない。  あとは吐息で語り、身体で伝えあおう。  瑞樹の舌と俺の舌を絡ませて、濡れた舌を吸った。パジャマの裾から手を這わせ、1週間ぶりに素肌に重ねていく。 「ん……っ、あ、あ……ああっ」  過敏になった彼の身体は、すぐに熱を持つ。滑らかな胸元を撫でると、瑞樹は蕩けそうな顔で艶めかしい反応を繰り返した。 「ここ、気持ち良さそうだな」  触るだけで固くなる乳首を摘まんで擦ったり、捩ったりすると、切羽詰まった声をひっきりなしにあげてくれた。いつもより過敏で……可愛い反応だな。1週間俺を待ってくれたのがダイレクトに伝わって、俺も煽られる。  俺たちは今、一方通行でない恋、歩み寄る恋をしている。  君との営みは、それを実感する瞬間だ。 「瑞樹も俺が欲しいだろう?」 「そ、宗吾さんは……とても意地悪です」 「どうして?」 「僕が触れて欲しかった場所ばかり……弄ります。あの、僕も……」  瑞樹の手が、そろりと俺の股間に触れてくる。  相変わらず、少しひんやりと冷たい手だ。 「あの、冷たいですよね。すみません。でも、触れてもいいですか」」 「何を謝る? もちろん、君が積極的なのは嬉しいだけだ」 「僕の手は、いつも冷たいから、気にしていたのですが……でも先日読んだ『ランドマーク』という小説に、『Cold hands、 warm heart』という言葉があって素敵だなと……だからもう躊躇わずに、僕からも触れていこうと……」  謙虚で優しい瑞樹らしい発想に、感動する。俺にはない繊細な思考回路が愛おしい。俺の股間に静かに触れていた瑞樹の手を撫でてやった。 「それって『手が冷たい人は心が温かい』という意味だよな。外国では握手が習慣だが、手が冷たいと何となく握手するのをためらってしまい、相手にもそれが伝わるから、そんな時に『手が冷たい人は心が温かい』と言ってやると場が和むって、話だったような」 「そうです。優しい言葉だと思いました。相手に対する思いやりが溢れていますよね」 「ありがとうな。なぁ、ここ、もっと触れてくれよ。君の手で」 「はい……あ、もう、こんなに……」  瑞樹が触れてくれた途端、元気一杯になっていた。   「……あぁ、ずっと我慢していたからな」 「とても熱いです」  瑞樹がおもむろに身体をずらして、上体を起こし向きを変えた。 「おい……?」  瑞樹が俺のそこに顔を近づけて、口に深く咥えてくれたので、動揺した。 「お、おい……、無理するなよ。君はそんなことしなくていい」 「いえ……僕にも、たまにはさせて下さい」 「はぁ……煽るな。知らないぞ。暴走しても」 「余韻が残るほど抱いて欲しいんです。今日は――」  俺たちは口には出さなかったが、互いに明日から、あの軽井沢へ行くことをやはり意識していたようだ。  あの日、病院のベッドで、全部……俺に触れて欲しかった場所だったと、悔しそうに泣いた瑞樹を思い出す。だから俺は……今日は瑞樹を深く強く抱く。全部……俺が触れてやる。   「くっ……」  清楚な君がそんなことまで……。  これは溜まらない。  悦楽に溺れそうになるよ。 「もう……ダメだ。君に挿れさせろ」  瑞樹の細い身体を持ち上げて、俺の腰を跨がせる。そして手を尻の奥に這わせ様子を窺う。震える窄まりに用意していたオイルをあてがい、指で掻き混ぜてやる。  くちゅり――  卑猥な音がして、瑞樹が小さく喘ぐ。前も同時に弄ってやると先走りでぐっしょりと濡れていた。 「感じているな」 「……とても」 「欲しいか」 「……はい」  素直に俺を求める君に煽られる。先端をあてがい一気に貫くと、瑞樹は上体をビクッと震わせた。 「あ……っ、う……やっ……あぁっ」  艶めいた声がひっきりなしに上がるのを聞きながら、俺は瑞樹の細い腰をしっかり掴んで、上下に小刻みに揺さぶった。 「ん……ん、ん……あうっ」  腰を突き上げる度に、君が啼く。  珍しい姿勢で繋がったことに感極まって、俺もいつになく執拗に君の中を穿った。 「もっと……もっと」  瑞樹もいつになく積極的だ。むしろ、もっとして欲しいと懇願してくる。 「だが、これ以上は疲れてしまうだろう」 「いいんです。明日、余韻が残る程……抱いて下さい」 「分かった」  なんとなく瑞樹が望む理由が見えたので、俺は力強く抽挿を続け、責め続け、君を、最上まで上り詰めさせた。 「はっ、はっ……うっ」  息を弾ませながら、声を殺そうと唇を噛みしめる瑞樹は、いつもに増して色っぽかった。  君の一番深い所で溜めていたものを一気に放つと、瑞樹は全部受け止めてくれた。そのまま覆い被さるように俺に口づけして、その後、胸にもたれてぐったりしてしまった。 「大丈夫か……」 「まだ……もっと欲しいです」 「分かった」  今度は胸の尖りを舐めてやる。  ふたりの身体はどこまでも火照り、燃えるように熱い真冬の夜になった。  ****  宗吾さんと深く繋がった翌朝……僕は芽生くんと手を繋いで東京駅のホームを歩いていた。すぐ後ろには、僕たちの荷物を持った宗吾さんがいてくれる。  背後から見守ってくれている。  このホームを歩くのは、あれ以来だ。流石に心臓がバクバクして僕の手は、また冷たくなっていた。しかし芽生くんはそんなことは気にせず、隣で目をキラキラ輝かせていた。   「おにいちゃん。どのシンカンセンに乗るの?」 「えっと、20番線の『はくたか』というのだよ」 「わかった! ボクが探してあげるね」 「うん」  あどけない日常の会話が愛おしい。今は、とても……。  僕の様子を、宗吾さんもさり気なく気にしているようだった。  「みーつけた!」 「すごい! 合っているよ」  新幹線に乗り込んで指定券を見ると、一番後ろの三人掛けの席だった。 「おにいちゃん、ボク、お外みたい」 「いいよ」 「瑞樹は真ん中だ」 「はい」  僕の左には芽生くんがいて、右には宗吾さんがいてくれる。  二人に挟まれる心地良さに、ほっと息を吐く。 「大丈夫か」 「大丈夫なんですけど……ほっとしたら眠くなってしまいました」 「眠っていてもいいぞ。着いたら起こしてやるから」 「はい……寝不足で、その……」 「だろうな。まだ余韻が残っているのだろう。よく眠れるよ」 「くすっ」 「ほら、冷やすなよ」  宗吾さんが僕の膝にダッフルコートをかけてくれて、その中で手を優しく繋いでくれた。  あぁ……温かい。  宗吾さんと、手と手で繋がっている。  そのことに、とても安心する。  新幹線がゆっくりと音もなく動き出し、僕たちは、いよいよ軽井沢に向かう。  いよいよ出発だ――  あの仄暗い過去を決別する旅に出る。  この先は楽しもう!  心から大切な人に囲まれて過ごしながら、自然に払拭していきたい。   あとがき……(不要な方はスルーしてくださいね) **** 今日はがっつりラブシーン書きました。最近は朝ちゅん程度に省いていましたが、今日のシーンは軽井沢に行くために二人に大切で必要なことだったので、しっかり書かせていただきました。私的には悔いなしです♡ いよいよ軽井沢旅行に出発ですね。ほっこりと楽しい内容にしてあげたいです♡ 引き続き、よろしくお願いします。

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