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幸せな復讐 24
さぁ、今のうちに着替えないと!
宗吾さんと芽生くんが露天風呂に行った後、僕は慌てて飛び起きた。
「ふぅ……危なかった。また芽生くんに怪我したと思われるのは、居たたまれないよ」
洗面所で少しはだけた浴衣の首筋を確認すると、赤い痕が胸元にかけて転々とついていた。
これを、つけてもらったのは、僕だ。
僕が強請った。ここにつけてと――
触れた場所から、また新たな熱が生まれるようで、照れ臭くなった。
もう、早く封印しないと……今日は流石に浴衣は無理だな。朝食会場には浴衣で行こうと思ったが断念し、急いで洋服を着た。
ボタンをしっかり首元までしっかり止めて、首を左右に振って鏡に映る姿を、しっかり確認した。
「よい、大丈夫そうだ」
良かった。宗吾さん……シャツでギリギリ隠れる場所につけてくれていたのですね。彼も僕も……昨夜はお互いに熱く求め合って、理性が飛んでしまったのに、ギリギリのところで、僕を気遣ってくれた。
宗吾さんは、とても大らかで広い心を持っている。
もしも僕が逆の立場だったら、じっと黙っていられるだろうか。
宗吾さんは、何も言わず見守ってくれている。僕の『幸せな復讐』を、傍らで――
宗吾さんは、一緒に過ごせば過ごす程、好きになる人。
大好き人だ。
そのまま顔を洗って寝癖をさっと整えた。昨日、最後にふたりで温泉に入ってそのまま眠ってしまったので、髪が跳ねているな。
洗面所から部屋に戻ると、宗吾さんたちはまだ戻って来ていなかった。すぐに帰って来ると思ったのに、よほど露天風呂が気に入ったのかな?
僕だけ……ぽつんと手持ち無沙汰になってしまったよ。
テレビをつけても、ちっとも頭に入ってこなし、部屋を見渡すと急に寂しくなってしまった。
「そうだ! 迎えに行こう」
僕はもう以前のように、寂しさを我慢して、じっとしていなくてもいい。
寂しいのなら会いに、会いたいのなら、僕からも歩み寄っていいことを知っている。
それに若木旅館の名物『樹木の湯』という露天風呂の様子も見たいな。
館内の案内図を確認してから、思い切って外に出た。露天風呂までは1本道なので、行き違いにはならないはずだ。
まだ朝の7時前――
空気が澄んで少し肌寒い。でも、とても気持ちいい。
宗吾さんによって散々高められた身体を、程よく冷やしてくれる。
露天風呂は丘の上にあるので、景色が良いだろう。
それにしても改めて見渡すと、本当に驚くべき広大な敷地だと実感するよ。この立派な旅館は、一馬の代まで先祖代々受け継がれてきたのだ。
僕には計り知れない、とても重たい歴史なのかもしれない。
あいつが背負ったものは――
しかし今の一馬には、すぐ横で明るく太陽のように照らし、支えてくれる人がいる。昨日部屋に来てくれた若女将の溌剌とした様子を想い出し、思わず目を細めてしまった。
本当に良かった。
彼女なら……お前を明るく笑わせてくれる。背中を押してもらえるし、背中を預けることもできる。
僕にもいるよ。
今の僕にもそんな人がいるんだ。
早く宗吾さんに会いたいと前を見据えて坂道を上りだした時、逆光の中に突然、黒っぽい人影が浮かんだ。
旅館スタッフが制服として着ている濃紺の作務衣姿の男性。
あれ? このシルエットには見覚えが――
あとがき(不要な方はスルー)
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えっと……誰でしょうね?(..;)
他サイトの話ですが、本日、クロスオーバーを3000文字ほど書いていたので、こちらは短い更新で申し訳ありません。
クロスオーバー作品集 『甘雨のあとの、幸せな存在』https://estar.jp/novels/25642826
芽生視点の可愛いお話です。母の日にどうぞ (母の日の話ではありませんが、優しい気持ちになれる話を目指しました)
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