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湘南ハーモニー 30

「かんのくん、ボールとってくれてありがとう! でも、どうしたの?」  ナギおやぶんと遊んでいたら、お兄ちゃんのだいじなお友だちのかんのくんがもどってきたよ。  どうしたのかな? でもまた会えてうれしいよ。  あれ? となりのお兄ちゃんは、だれかな?  なんだか、ふたりともうれしそうだな。 「おーまた会えてうれしいよ。芽生坊も応援してくれ」 「えーっと、なんだかわからないけど、きっとうまく行くよ! だって二人ともニコニコだもん!」 「菅野くん、こちらの可愛い坊やは、菅野くんの知り合いですか。僕たちニコニコに見えますか。良いことをありがとう。まさに笑う角には福来たるですね!」 「えっとぉ、お兄ちゃんはだあれ?」 「このお寺の小坊主の小森風太ですよ」 「こも……ふう……?」 「覚えにくいですか。では『こもりん』とお呼びください」  かわいい〜 うん、それなら大丈夫そうだよ! 「こもりん! じゃあボクはメイリンかな?」 「なんだかパンダみたいですね」 「パンダ?」  そんな話をしているとお兄ちゃんとパパがお部屋から出てきたよ。 「芽生くーん、そろそろ中に入らないと」 「ハーイ」 「あれ? 菅野、どうしたの? もしかして、僕、何か家に忘れ物をしちゃった?」 「いや、違くて。その……報告に来たんだ」 「報告? そう言えば、なんでスーツ?」 「コホン、それには深い事情があって」 「大丈夫か。それより隣の人は?」  お兄ちゃんが、菅野くんのおとなりさんをチラッと見たので、ボクが教えてあげよう! 「あのね、こもりんだよ」 「こ、もりん?」 「は、はじめまして、僕は寺の小坊主です。今日はこんな姿なので、小坊主には見えないと思いますが、怪しいものではありません」 「うんうん、あやしくなんてないよ。しあわせそうだもん!」  お兄ちゃんは、ますます不思議そうに首をかたむけていた。 「あのさ、話の途中悪いが、とにかく小森さんは、流さんのところに早く言った方がいいよ」 「薙くん、そうですよね!ありがとうございます。まずは報告あるのみです!」  こもりんと菅野くんの後を、お兄ちゃんとパパもついていったよ。  さーてと、何が起こるのかな?  きっとワクワクなことだよね!   *** 「流、ニヤニヤ笑って、どうしたの?」 「翠、もしかしたら小森の奴……」 「ん? よくわからないが、何か話がありそうだよ。迎えに行って、ここに呼んでくれないか」  翠は不安そうな顔だったが、俺はワクワクが止まらまん。  15歳でこの寺にやってきた純朴な少年を、耳年増にしたのはこの俺だぜ!  彼は素直で純粋だから、なんでも信じきって可愛いんだよなぁ〜    そんな彼も、気づけば二十歳だ。   あんなに薔薇色に頬を染め上げて、意味深なスーツ姿の男性と用もないなのに戻ってきた。  ってことは、まさか、アレか。  あのことを鵜呑みに?  くくくっ、可愛いな〜!  どれ、聞いてやるか。 「どうした? 今日はもう帰っていいと言ったのに?」 「それが、流さんに報告があって戻りました」  正面玄関で出迎えると、案の定だ! 「おぅ、聞くぜ! 急がないと日が暮れちまう」 「はい! そうなんです。だから急いで戻ってきました!」  

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