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日々 うらら 6

「そうくん……そうくん」  瑞樹が、俺を呼ぶ。  まだ完全に蕩け出す前から呼んでくれるなんて、珍しいな。    愛おしすぎて、苦しい程だよ。  たった10日、いや10日も離れていたからこそ募る想い、その熱量は同等だった。  ベッドに招き入れた君と肌をぴたりと重ねれば、それが伝わってくる。  戯れのようなキスを繰り返していると、瑞樹の瞳がじわりと潤んできた。 「瑞樹、寂しかったのか」 「……そんなことは……ないです」  瑞樹は強がって首を横に振ったが、目の端には透明の雫が滲んでいた。 「俺は寂しかったぞ。正直に言ってくれ」 「あ……僕も……僕も……寂しかったです」  正直、瑞樹の切ない表情を見るのは辛い。だが俺の仕事柄、海外出張はこれからもあるだろう。その都度こんな顔をさせてしまうのか。せめて安心させてやりたい。離れた分、深く愛し合いたい。 「瑞樹……俺は絶対に帰ってくる。君をひとりにはさせない。だから信じてくれ」 「……はい」  瑞樹が俺の背中に手を回し、くっついてくる。  その仕草があどけなくも可愛くて、庇護欲に駆られてしまう。  花を扱う君はいつも凜として男らしいのに、俺が抱く君は、どこまでもいじらしいから、そのギャップに萌えるんだ。  燃えたぎる熱情に駆られて、少し大胆に瑞樹の足を開かせた。 「あ……っ」  下肢に手を這わせ太股の付け根まで一気に撫で上げて、その奥に指を潜り込ませた。 「んっ、あ、あの……」  瑞樹が頬を染めて、俺を困惑した表情で見上げてきた。 「なんだ?」 「そうくんの……もう……すごく大きい……ので」    成程……自分の下半身を見つめれば、なかなか立派になっていた。 「悪い……10日分だ」 「と、とおか……」 「君はひとりで弄ったか」 「い……いえ……僕も我慢しました」  一人で瑞樹を想いながら抜いてもよかったが……敢えて耐えたんだ。  日本に戻って生身の身体に触れたい。そればかり思っていたのさ!  瑞樹のモノも指で辿ると既に半勃ちの状態だったので、優しく包み込んでやった。 「あ……駄目。今は……触らないで下さい」 「なんで? 君も気持ち良くなって欲しい」 「ん……そ、そうくん。そうくん。いや……っ」  最初はゆっくりと次第にリズミカルに扱いてやると、熱い息が胸にかかった。 「ん……っ、ん……、あぁ……っ」 「その声、くるよ」  艶めいた喘ぎ声に煽られ、俺のモノもますます嵩を増していく。  瑞樹の控えめに勃起した先端を指先で刺激してやると、とろりと蜜が漏れてきた。 「かなり濡れてるな。良い感じだ」 「言わないで……」  そのまま扱く速度を増し、先に一度極めさせてやった。 「はぁ……ふぅ……はぁ……」  全速力で走りきった直後のように瑞樹は胸を上下させて、ぼうっとしている。  君のこんな無防備な表情を見ていいのは、もう俺だけだ。  庇護欲の次に湧いてくるのは、独占欲なのか。俺、もう君にメロメロだ。  瑞樹は達したばかりの惚けた表情で息を吸ったり吐いたりして、必死に呼吸を整えていた。  彼の慎ましく閉じてしまった足をもう一度大きく開かせて、柔らかくなってしまった瑞樹のものをもう一度揉んでやると、また徐々に芯を持ち始めた。 「可愛いな。また出来そうだな」 「そんな……宗吾さん、もう……もう挿れて欲しいです」  焦らしてしまうのは、この時間を長引かせたいから。  本心では朝まで触れ合っていたい。足腰が立たなくなるまで激しく抱き潰してしまいたいのは、男のロマンだ。 「そろそろ挿れる準備をするぞ」  慎ましく閉じている蕾の周囲を羽のようにじれったく撫でてやる。 「ん……っ、ん……意地悪です……ね」 「可愛い顔をしているな」 「もう……焦らさないで……苦しいです」 「分かった」  ローションをたっぷり垂らし、くちゅりと音を立て、指を一気に差し込んだ。 「あぁっ」  瑞樹は大きく胸を反らし、困惑した表情で俺を見つめてきた。 「凄く感じているのか」 「すごく……どうしよう?」 「嬉しいよ」  瑞樹の上半身を空いている方の手で撫で回すと、胸の突起がツンと立ち上がり、花が咲くように素肌が色づいていった。  どこもかしこも美味しそうで、溜まらないな。  そのまま時間をかけて愛撫してやると、瑞樹はもうトロトロに蕩けていた。  二人だけの時間は、甘いトキメキで埋め尽くされている。  指を二本に増やし奥まで進めると、瑞樹はもどかしそうに首を左右に振って頬を紅潮させていた。 「痛くないか。久しぶりだから、しっかり広げてからだ」 「ん……っ、そうくん、そうくん」  瑞樹が涙目で訴えてくるので、大きく頷いて、彼の望む物を入り口にあてがった。 「いくぞ」 「はい……」  一気に最奥を突き上げる。 「あぁっ」  瑞樹の乱れ方は、いつもより激しかった。  芽生がぐっすり眠っているせいか、艶やかな声をあげて乱れてくれる様子が愛おしくて、俺も腰を大きく使って何度も突き上げてしまった。足を折り曲げさせて密着度を深め、グツ、グッと一つになった状態を堪能した。  彼の弱い箇所を目がけて腰を進めると、瑞樹の可憐な顔は綺麗な桜色に染まり、彼特有の花の匂いが一層濃くなった瞬間、最奥に精を放った。 「ああぁ……!」 「くっ」   ほぼ同時に放ったのだろう。淫靡な水音が寝室に広がった。 「はぁ……はぁ……」 「まだだ、まだ出来るか」 「そんな……明日があるので……もう……無理です」 「明日は起きなくてもいい。芽生のことは俺に任せてくれ。君は少し睡眠不足だ。10日間、一人で奮闘してくれたんだから」 「そうくん……でも……」 「抱かせてくれ、まだ足りない。俺、瑞樹不足なんだ」 「僕も……僕も……です」  瑞樹の細腰に手を回し、少し痩せてしまった華奢な身体をキュッと抱きしめてやると、瑞樹の中は素直に……俺を包み込むように迎えてくれた。 「一緒にしよう」 「はい……」  今度は彼も積極的に腰を揺らして、応じてくれた。 「うっ、良すぎる……っ」 「ぼ……僕も」  下腹部を擦り合わせて、共に揺れて……  インターバルを置いて、また揺れて……  江ノ島の海で、ぷかぷかと浮かんでいるような心地になり、疲れ果てるまで、二人は触れ合い続けた。  たった10日間合わなかっただけなのに、俺たちにとっては長い10日間だった。 「夏休みの宿題の最後はこれだったんだな」 「もう……こんな宿題は出ませんよ」 「じゃあ、みーくんのお留守番、100点満点の大人のご褒美にしよう」 「くすっ、今日の僕は……出張お疲れさまのご褒美ですよ」  瑞樹は幸せそうに目を閉じ、そのままぐっすりと眠りについた。  彼の幸せなそうな寝顔を守りながら、俺もそっと目を閉じた。  守るべき家族がいて、愛し合う恋人がいる。  それが今の俺だ。  なんて、なんと、幸せなのか――  

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