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降り積もるのは愛 7
「んっ……」
俺の下で、瑞樹が苦しそうに眉根を寄せる。
彼の下半身を手で辿ると、控えめな屹立が存在感を増していた。
布越しの愛撫に、感じてくれているのだな。
瑞樹も俺と同じ男なんだよな。
彼の屹立を撫でながら、しみじみと愛おしく思う瞬間だ。
「あ……っ、そんなに触れないでください」
ファスナーに手をかけ、少しずつ裸に剥いていく。
着ぐるみを中途半端に脱がすと、瑞樹が困惑した様子で俺を見上げた。
「あ、あの……なんで?」
「いや、可愛い半獣だなって」
「な、何を言って……もう! 宗吾さんは目がらんらんと輝き過ぎです」
「はは、着ぐるみはいいなぁ」
「変なクセ、つけないで下さいよ。それに今日は一度だけですよ」
「明日は休みなのに?」
「芽生くんと遊ぶ約束をしているんです」
「分かった! 善処する」
「もう……仕方の無い人ですね」
こんな掛け合いをしながら君を抱くのもいい。
心に余裕ができたな、お互いに。
今日は心ゆくまで君を堪能させてもらおう。
剥き出しの肩にキスを落とし、そのまま平らな胸を大きく揉んでやる。
尖った粒を指先で擦ってやると、瑞樹はもう少しもじっとしていられないようだ。
「あっ……あっ……」
「いいか。ここ、感じやすくなったな」
「うっ……」
「最初はこんなに感じてくれなかったろう? だから俺が育てているんだ」
「……は……い、そうです」
瑞樹が目元を染めて、うっとりとした様子で俺を見上げる。
何故か……ふと瑞樹の前の彼氏の顔を思い出した。
アイツは九州男児らしく真っ直ぐな人柄だった。彼が瑞樹の身体を乱暴に踏み荒らさず、どこまでも大切に扱ってくれたことには感謝しないとな。未開発な場所の多い瑞樹の身体を知り……密かに嬉しくなったことは内緒だ。
付き合った年数を思えば、俺と瑞樹の時間は短い。
だが大切なのは時間ではない、思いの深さだ。
俺は瑞樹を全方位から愛している。
過去も今も未来も、すべて。
「ん……っ、あぁっ」
胸の飾りを甘噛みしてやると尖った嬌声があがり、瑞樹がふるふると震えた。
「今日は感じやすいな」
「この……トラの衣装のせいです。なんだか変な気持ちになります」
瑞樹がムクリと起き上がり、上半身は裸で下半身はまだトラの皮を着た状態で、俺に覆い被さってきた。
「お、おい?」
「今日は……僕からも責めたいんです。僕だって男だから、なんだかヘンな気分です」
俺の乳首をペロリとなめて、瑞樹が甘く微笑むのだから参ったな。
「よ、よせ……そこは擽ったい」
「……そうなんですか。じゃあ……ここは?」
瑞樹が俺のトラの皮を剥く。
「宗吾さんは全部脱いで下さい」
「えぇ!」
「脱がしますよ」
瑞樹が悪戯な笑顔を浮かべて、俺を剥いでいく。(おーい、いつもと逆だぞ)
「わ、……恥ずかしいな」
「くすっ、いつも僕を全裸にするのに?」
「それは……参ったな。君がシテくれるのなら頼む」
観念して身を委ねると、とても丁寧に俺の屹立を舐めてくれた。筋にそって舌を丁寧に這わし先端から溢れる蜜をジュッと吸ってくれたので、嬉しくなった。
「瑞樹……いいのか」
「したいんです」
そのまま吸引され、下半身が震えるほど気持ちよかった。
「うっ、もうよせって」
「ダメです。今日は先に一度イッテください」
「参ったな。新年を迎えたら瑞樹が積極的になった」
「え……その……これは、別に」
急に恥ずかしそうに狼狽える瑞樹が初々しい。
「続けて……」
「は、はい」
瑞樹が俺の下腹部に顔を埋めて熱心に吸ってくれるのが愛おしくて、こんな可愛い恋人と迎えられる新年に感謝した。
瑞樹より先にイクなんて……だが、君の気持ちを有り難く受け止めて一度精を放った。
「ば、馬鹿……飲むな」
「宗吾さんはいつも飲むのに?」
「あぁ、もう」
これ以上……じっとしているのは性に合わない。
瑞樹の肩を掴み、クルッと反転させシーツに押しつけてキスをした。
「あ……」
口腔内をキレイにしてやり、キスを続ける。
清楚な瑞樹が自らあんなことをしてくれるなんて、感激で胸が一杯になるよ。
「ん……ふっ……」
「瑞樹、瑞樹、瑞樹……」
「どうしたんですか」
「俺、幸せ過ぎて、怖くなるよ」
急に胸に溢れてきた見知らぬ気持ちに、戸惑った。
俺、こんなに幸せでいいのか。この手に掴んだ幸せが消えたら、どんなに恐ろしいか。そのことを考えると心が震えるよ。
「宗吾さん、大丈夫ですよ。そう感じるのは悪いことじゃないです。むしろ幸せを身近に感じられる大切な要素なのかも」
「え?」
「僕もずっと幸せが怖かったんです。でも……幸せ過ぎるのが不安に思う気持ちは悪いことではないんですね。幸せを当たり前には思わない……その気持ちがなかったら幸せを感じられないのかも……」
深いことを言うのだな。
「そうか。俺の幸せは俺が掴み取ったんじゃなくて、与えられてもらっているんだな」
「あ……はい……僕も同じことを考えていました。だから今の幸せにありがとうと感謝してみると……ぐっと不安や怖さが薄れたんです」
瑞樹……君はいつの間に、そんな境地に。
過去に怯え、幸せに怯えて生きてきた君が、そんな風に考えられるようになったのが、嬉しいよ。
「あっ、もうそんなに、さっき出したばかりなのに」
「さっきのはカウントしなくていい」
「も、もう……」
瑞樹のほっそりと艶めかしい太股を撫で上げて、その奥の窄まりをジェルで濡らして、指で慣らしてやった。
「宗吾さん……宗吾さん……今日は楽しかったですね。僕……自分でも驚く程ふざけてしまいました」
「いい笑顔だった。まだまだ俺の知らない瑞樹がいるんだな。今年はもっともっと見せてくれよ」
「はい。心を解放していくって、空を飛ぶ鳥のようで心地良いですね」
「そうだな。大空を自由に飛べよ。だが戻ってくるのはここだぞ」
「はい! あ……もうっ……もう……」
「なんだ?」
「……欲しいです。宗吾さんの……いれて」
「いいのか」
「はい……一緒になりたい」
今年最初の逢瀬は、どこまでも心を重ねて。
幸せが怖いという気持ちを教えてくれた瑞樹に感謝しながら、ひとつになった。
****
翌朝。
やはり一度じゃ済まなくて、瑞樹を抱き潰してしまったな。
最後は疲れ果ててお互い裸のまま、寝入ってしまったようだ。
瑞樹の裸の肩を抱き寄せて、まだすやすやと眠る君の髪を手で梳いて余韻に浸っていると、パタパタと小さな足音が聞こえた。
ま、まずい!
俺は超早業で転がっていたトラの着ぐるみを着て、ドアを開けた
ドンっとぶつかる黄色い物体は、芽生だ。
「ガォォー!」
「わぁ! トラさんだぁ~」
「トラの子よ! おはよ!」
「パパトラさーん、おはよう」
流石俺の子だ! 朝からトラの着ぐるみで登場とはな。
思いっきり高く抱っこしてやると無邪気な笑顔が弾ける。
「パパ~ 今日もおやすみ? 一緒にあそべる?」
「もちろんだ」
「お兄ちゃんは?」
「寝坊すると思うから、パパと何か先に食べよう」
「あ……じゃあトラのパンケーキがいい!」
「お正月なのに?」
「おせちばっかり、あきちゃうよ」
「ははっ、よし、キッチンにいこう」
布団の中の瑞樹は、まだ裸だ。
ゆっくり休んでくれ、こちらは大丈夫だ。
君の安眠は、俺が守る。
あぁそうか、こういうことも『幸せ』なんだな。
幸せを贈る相手がいることに感謝する、優しくて穏やかな新年の朝だった。
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