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HAPPY SUMMER CAMP!㉘

 最初にご挨拶をさせて下さい。今日でとうとう8月も終わりですね。つまりサマーキャンプも、本来ならば今日で終わりの予定だったのですが、いつものように脱線しまくり終わりませんでした。  なので……最後の〆として、今日から4日間かけて、それぞれのサマー・ナイトをじっくり書かせていただきますね。以下の予定で本編から脱線が長くなり、読者さまもお疲れかもしれませんが、やはり夜の様子だけは外せないので、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。    ~メインキャラ~(予定) 8/31  潤と菫 流と翠と薙 9/1  丈と洋 菅野とこもりん 9/2 宗吾と瑞樹と芽生&いっくん 9/3  スペシャルナイト **** 「いっくん、本当にパパとママがいなくても大丈夫なの?」 「うん。めーくんとおててつないでねんねするもん」 「そっか」 「菫さん、何か困った時はすぐに連絡するので、安心して下さい」 「そうですよね。樹のことよろしくお願いします。オネショしないといいけど」 「そういうもの含めて、僕……慣れていますので」  菫さんはいっくんと離れて眠るのが初めてのようで、心配そうだった。  オレの方が、心配なのと、ドキドキなので半々なのが申し訳ない。  兄さんが続けてオレに話し掛けてきた。 「じゅーん、ゆっくり過ごすんだよ。二人きりの夜を存分に楽しんで」  兄さん、そんなに嬉しそうな顔しちゃって。   「兄さんさぁ、なんだか変わったよな」 「そうかな? 潤にとっては新婚旅行なんだ。だから、その……二人で甘い夜を過ごしたらいいなって」  あぁ、兄さんそれ以上話すな。  なんだか墓穴を掘り出しそうで冷や冷やするよ。  そこに流さんがやってくる。 「瑞樹くん、何話しているんだ?」 「あ、その新婚さんにエールを」 「そうだよな、いつもは小さい子がいるから……声出せなかったり、気を遣っているだろう」  誘導尋問だ!  兄さんはコクンと恥ずかしそうに頷いて……   「まぁ、うちも同じですから」 「へー 突然起きてきたことってあるのか」 「あります。誤魔化すのに大変で……くすっ、でもなんとか凌ぎましたよ」  わわわ、もう聞いていられないよ。  兄さんは少し酔っているのか、いつもより饒舌に詳細を語り出した。  そこに翠さんの容赦ない一言が飛ぶ。 「流、こっちにおいで。いつまでも瑞樹くんを揶揄ってはいけないよ。言うことを聞かないとテントに入れてあげないよ」 「え? 兄さん~それは勘弁」 「薙、行こう!」 「兄さん~」  ふぅ行った行った。  今日の兄さんは墓穴を掘ったことも気付かず、ニコニコしている。 「兄さんはやっぱり変わったよ」 「どんな風に?」 「スケベになったな」 「……す、す、スケベ?」  やっと正気に戻ったか。  しっかりいっくんのこと頼むよ。 「ふぅ、潤がヘンなこと言うから目が覚めたよ」 **** 「潤くんと二人きりの夜、初めてだね」 「あぁ、今日は俺だけの菫さんだ。そう思ってもいいか」 「うん……潤くんだけの私になるの初めてで、ドキドキしちゃう」    二人きりのコテージには、日中、リビングで付けっぱなしにしていたラジオのBGMが静かに流れていた。 「いいムードだな」 「一緒にお風呂に入る?」 「い、いいのか!」  前のめりになりそうで、必死にセーブした。 「恥ずかしいけど……今日なら」 「ありがとう」  コテージには、今は俺たちだけだ。  浴室の天窓からは、夜空に瞬く星が見えていた。  菫さんが窓をパタンと閉めてしまった。 「どうして?」 「潤くんだけの私だから……もう」  そのまま水音を立てて抱きついてくれたので、オレは細い身体に手を回した。 「いっくんに、妹か弟が欲しいな」 「二人が願えば、きっと……」    夢は叶うだろう。 **** 「翠と薙はシャワーを浴びて来いよ」 「あのさぁ、このテント、オレたち三人は厳しくない?」 「そんなことないよ。父さん、薙と一緒にキャンプしてみたかったんだよ」 「しょうがないな。駄々っ子父さんに付き合ってやるか」  薙は変わった。  翠相手に軽口を叩けるようになった。  明るくなった。  翠も薙とそんな調子で話すのが嬉しいようで、始終可愛く笑っていた。  あぁ、今日は狭いテントで男3人眠るのか。  それも悪くない。  さっき宗吾と冷水を滝行のように浴びたから、耐えてみせる。打ち勝って見せる!  わが煩悩との戦いに。  薙も流石に1日中小さな子供の相手で疲れたのか、大あくびをしている。 「流さん、オレ寝るわ。眠い」 「じゃあ一番奥で眠れ」 「うん、父さん、流さんおやすみ」 「薙、シャワーは?」 「どうせ寝ていても汗かくんだ、朝でいいよ」  そう言いながら薙はスヤスヤと眠ってしまった。 「僕は身体がベトベトだからシャワーを浴びたいな」 「翠のために用意したんだ。来いよ」  翠の細い手首をつかんで引っ張った。 「どこへ、あのシャワーは冷たそうだよ」 「翠は特別だから、昼間の太陽で温めた水を使ったシャワーなんだ」 「そうなの? ありがとう」  宗吾の指摘通り、シャワーブースの前には目隠しの布を吊したので、隣のログハウスからは見えないはずだ。  あそこには女性がウヨウヨしていたから、翠のことを見初めたヤツがいるかもしれん。なんか嫌な予感がするんだよな~  俺はギロッと周囲に目を光らせた。 「流、もう使っても」 「あぁ、ここで見張っているから、行ってこい」 「ふふっ、一体何から守ってくれるの?」 「……めあり……だからな」 「え?」 「あぁ、何でも無い」  ―― 壁に耳あり障子に目あり ――  だから、気をつけろ!  翠に背を向けて、座禅を組んで念仏のように唱えた。  すると、シャワーカーテンの向こうから、翠の頼りない声がする。 「流……あのね……」 「翠、どうした?」 「ここ、暗くて……」 「あぁ、悪かった」  翠は暗闇が怖いんだった。  ランタンの灯を渡すと、翠が睡蓮の花のように綺麗に微笑んだ。  あぁこの笑顔を見られるのなら、なんだってするさ。 「ありがとう。じゃあシャワーをお借りするよ」 「あぁ」  何気なく後ろを振り返って仰天した。  着ていた物を脱ぐ姿が、シルエットのように映っているじゃないか。  ゴクン――  ヤバイ……喉が鳴る。  やがて裸になった翠の細身の身体が浮かび上がる。  しなやかに艶めいて、腕や脚が動く度に艶めかしい空気になっていく。  シャワーの水音と翠のシルエットが混ざり合うと、俺の下半身はぐぐっと嵩を増して暴れ出した。 「やべぇ、こんなになって」 翠を守るどことか、俺が一番危ない男になっていた。  し、静まれ! 俺の煩悩っ  ちらちらと盗み見する翠のシルエットと戦い続ける羽目になった。 「あぁ、さっぱりした」 「あぁ……疲れた」  爽快な翠と悶々とする俺。  あぁ我慢我慢の一夜になりそうだ。 「お水残っているよ。流も浴びれば?」 「そうか旅は道連れ、世は情けだよな!」  翠がキョトンとする。 「うん、旅は道連れのあるのが心頼もしいよね。世の中を渡るには互いに思いやりをもつのが大切なんだ。僕の相手は流だよ」 「サンキュ! よーく見張っているよ」 「うん?」  俺が豪快に衣類を脱ぎ捨て、シルエットを浮かび上がらせた。  雄々しい身体を存分に、翠の目に焼き付けてやる。 「りゅ、流……」 「どうした? 翠、ちゃんと守ってくれているのか」 「……う、うん……でも」 「どうした?」 「どうしよう。僕……」  チラッとカーテンの端から覗くと、翠が股間を押さえて辛そうな表情になっていた。  俺はランタンの明かりを消して翠を呼ぶ。 「翠、ここは宗吾の指示通り、四方八方を塞いだ空間だ。明かりをつけなければ誰からも見えないよ。翠が静かにしていれば誰にも気付かれない」  翠の衣類をもう一度脱がせて抱きしめた。  深く深く下半身がぶつかりあう程に。 「互いに擦りあって、一緒に出そう。そうしたらよく眠れるさ」 「そんなことしちゃ……」  冷静になりそうな翠の口を塞いで、愛を贈る。  愛でいっぱにしてやれば、翠も震えながら精を放ってくれた。  俺と翠の愛は……あたたかい水で流してやった。 「愛はどこへいくのかな」 「流れ始める場所も流れ着く場所も、ここだ」       

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