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HAPPY SUMMER CAMP!㊳
ヤベッ、油断すると鼻血を吹きそうだぜ!
皆に教えてやりたい。
翠の尻がぷりんぷりんなのは、俺がマメに手入れをしているからなのさ!
夜な夜なマッサージオイルを臀部に垂らして、手で念入りに。
翠がまどろむまで、優しく丁寧に繰り返す。
おっと!
子供のピュアな言葉に、俺は一体何を想像してんだ?
翠も潤くんも菫さんも、俺と同様に真っ赤になっていた。
「りゅ……流、困ったな。あとは頼む」
翠が俺を頼る。
よし、来た! この先は俺の出番だな。
助け船だ、助け船。
「よーしっ! いっくん、お腹が空いただろう。朝飯を食べるか」
「うん! いっくん ぽんぽんしゅいたでしゅよ」
そこにタイムリーに芽生坊の声が響く。
「いっくん、あーそーぼ!」
「めーくん!」
二人の天使が手を取り合って、駆けていく。
その横には、瑞樹くんと潤くんがしっかり並んでいる。
朝の清らかな光に包まれて。
守られている。
大きな愛に、皆、守られている。
****
「瑞樹くん、手伝ってくれるか」
「はい、あっ……豆から挽くんですか」
「あぁ挽き立てのコーヒーは格別だからな」
ウッドテーブルの上に、流さんが珈琲道具を並べたのを見て、ふと懐かしくなった。
キャンプの時、お父さんもこんな風に机の上に並べていたから。
……
「瑞樹、ぐるぐるしてみるか」
「うん!」
「おにいちゃん、ぼくもしたいよ~」
「あ、じゃあ、なっくんが先にしてごらん」
「ううん、おにいちゃんがさきだよ。じゅんばんまもれるよ」
夏樹……可愛かったな。
なんでも僕のやることを、じーっと見つめて。
僕はお父さんの大きな手に支えられてミルを回した。最初はゴリゴリしていたけれども、だんだんスムーズになっていくのが面白かった。
「瑞樹、上手だな。これは美味しい珈琲が出来るぞ」
「そうなの?」
「そうだよ。手をかけたものは、愛情たっぷりになるんだよ」
「手をかける?」
すると今度はお母さんが教えてくれた。
「瑞樹、お母さんはね、昔、看護のお仕事をしていたのよ。看護という漢字を知っているかしら?」
「かんご?」
「そっか、まだ習っていないのね。こう書くのよ」
お母さんが小枝で、土に『看』という文字を大きく書いてくれた。
「あ……手と目だ」
「そうよ。よく気付いたわね。看護の『看』は、手と目という文字から出来ているのよ」
お母さんがしゃがんで両手で僕の頬を優しく包み、優しい眼差しで見つめてくれた。
(みーくん、だいすきよ)
あれ? お母さんの口は動いていないのに、優しくて大好きな言葉が伝わってきた。
それだけでお母さんの愛情がじわっと伝わり、しあわせになった。
……
手をかけるって、いいな。
この手から、愛情が生まれることなんだ。
だから……僕は人だけでなく物にもを心を込めたい。
手を当てた、愛情を注がれた物が増えると、家の中が心地良い気で満たされていくのでは?
僕は……この手に触れるもの全てに愛情を込めて、生きていきたい。
生きていることへの感謝を伝えたい。
「宗吾さん、これ……僕の家にも導入しませんか」
今はもう……『僕の家』と戸惑い無く言えるのも幸せ。
宗吾さんと芽生くんから愛情をもらったから言えること。
「そうだな。芽生も大きくなったし、そろそろ少し時間をかけて珈琲を淹れるのもいいな。帰ったら早速買い揃えよう」
「はい!」
流さんが芽生くんを見つめ、声を掛けてくれた。
「芽生坊、ぐるぐるしてみるか」
「うん!」
「いっくんもしたいなぁ」
「あっ、じゃあ、いっくんが先でいいよ」
あぁ……あの日の僕がここにいる。
「ううん、めーくんがしゃきでしゅよ。いっくんね、じゅんばんまもれるよ」
あぁ……駄目だ。
涙腺が緩む……
あの日の夏樹が見えるようで。
「瑞樹? どうした?」
「うっ……うう……」
突然泣き出してしまった僕の肩を、宗吾さんが抱きしめてくれた。
それはとても自然な仕草で。
「ふたりが愛おしくて……泣けてしまうんです」
「あぁ、そうだな。瑞樹となっくんもこんな感じだったんだろうなと……俺も見ていたよ」
「宗吾さん……」
僕は宗吾さんのこういう所が好きだ。
大好きだ!
こんなにも僕の心の奥に寄り添ってくれる人だから。
「瑞樹……俺は瑞樹の手が大好きだ」
それから、僕の手を優しく包んでくれた。
「この手から、美しい花や美しい心……優しい愛情が生まれるんだな。瑞樹の手は愛情で溢れているよ」
流さんに支えられてミルを回す芽生くん。
一生懸命な顔に笑みが漏れる。
お父さんのくれた思い出が、リフレインしていく。
思い切ってキャンプに来て良かった。
普段では体験出来ないことばかりだ。
こんな風に芽生くんの様子をゆったりと宗吾さんと並んで見るのは、普段、出来ない。
「宗吾さん、芽生くん、頑張っていますね」
「あぁ、芽生の手には君から受け継いだ愛情が詰まっているから、さぞかし美味しい珈琲になるだろうな」
「……ありがとうございます」
その日の朝食は、トーストと珈琲という簡単なものだったが、青空の下、皆で仲良く並んで食べると格別だった。
しあわせって目に見えないものだが、いろんな所から体感できるんだね。
「あ……美味しい」
「だから言っただろう。愛情が詰まっているって」
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