1245 / 1651

ハートフルクリスマスⅡ・3

「瑞樹、出先で芽生のリクエストに合う物を探してみるよ」 「じゃあ僕は昼休みに、駅前のスモールカメラを覗いてみますね」 「あぁ、頼む」  そんな言葉で宗吾さんと別れると、背後から菅野に肩を叩かれた。 「瑞樹ちゃん、おはよ! なぁ今の聞こえちゃったけど、昼休みに何か買いに行くのか」 「あ、うん、芽生くんへのクリスマスプレゼントを探しに行こうかと」 「あーそっか、週末はクリスマスだもんな。で、スモールカメラってことは、とうとうテレビゲームデビュー? それともアニメのおもちゃ?」 「菅野は子供事情に詳しいね。あ、そうか、お姉さんの所にお子さんがいるからなのか」 「まぁな、毎年あれこれリクエストされて大変だぜ。すぐにお年玉もいるしな」 「くすっ、菅野は本当にいい叔父さんだね」 「おっと! まだ『おじさん』とは呼ばせないぜ」 「ふふっ、僕もまだ抵抗あるよ」 「瑞樹ちゃんは永遠の高校生だよ」  真顔で言われても……と苦笑してしまう。 「それは犯罪だよ。流石に10歳も誤魔化せないよ」 「そうかぁ、じゃあ大学生。お肌すべすべじゃん」 「……菅野、気をつけないと、宗吾さん化してるよ」 「え! それはまずい。風太に怒られる」 「くすっ」    そんな会話を交わしたこともあり、僕は昼休みに菅野と有楽町駅前のスモールカメラにやってきた。ここはクリスマスグッズも多く取り扱っているので、ピンとくる物があるかも。  クリスマスのデコレーションコーナーをキョロキョロ眺めていると、菅野に小突かれた。 「瑞樹ちゃん、で、芽生坊は何が欲しいんだ? 早く教えてくれよ」 「それがね……」  可愛い文字で書かれた手紙を見せると、菅野は少し驚いていた。 「すごいな! 芽生坊のリクエストって夢いっぱいだな」 「うん、可愛いお願いだから是非叶えてあげたいんだ。でも、これでは宴会の余興みたいにペラペラで……」 「あぁ安っぽいし、嘘っぽいよな」 「やっぱり……そうだよね」  芽生くんが書いたサンタさんへのお願いは…… 『サンタさん、こんにちは! たきざわめいです。ことしはボクもサンタさんのお手伝いをしたいです。パパとお兄ちゃんといっしょに、ボクをいつもたいせつにしてくれる人に、しあわせをおくる人になりたいんです。だから24日にサンタさんのゆにふぉーむをとどけてください。ぼくひとりだとプレゼントをもちきれないから、たきざわチームのぶんをおねがいします』 「待てよ。ってことは、瑞樹ちゃんもサンタになるのか」 「……ここに書いてあるからね」 「宗吾さんも?」 「うん、3人でサンタのコスチュームを着るという解釈で落ち着いたんだけど、どう思う?」 「その通りだと思うぜ! 3人でサンタになるなんて、芽生坊が小さな頃しか出来ないぜ。実現させてやりたいよな」 「うん、僕もそう思うんだけど……どうもこの売り場はしっくり来なくてね」 「そうだな。いっそテーラーにオーダーしちゃうとか」 「えぇ?」  それは考えていなかったので驚いたが、一理あるかも。  もしかして、あそこのお店なら案件を受けてくれるのでは? 「あてがあるのか」 「あたってみようかな」 「おぉ! 瑞樹ちゃんがんばれ!」 「うん!」  宗吾さんに早速電話すると、すぐに『テーラー桐生』に連絡を取ってくれた。  大河さんからは快い返事が返ってきた。ただし時間がないので速攻打ち合わせに来て欲しいとのこと。  だから芽生くんのお迎えをお母さんにお願いして、会社帰りに急遽東銀座のお店に行くことになった。 「菅野、じゃあ行ってくるよ!」 「ちょっと待ってくれ。瑞樹ちゃん、もしもオーダーが可能なら、ひとつお願いがあって」 「ん?」 「風太の分も頼む!」 「あぁそうか。小森くんにも似合いそうだね。うん、聞いて見るよ」 「やった!」    僕は師走の街に駆け出した。  吐く息は白いが、ワクワクしていた。  小さい頃に願ったことを思い出していた。 「ママ……ボクね、大きくなったら大切な人の夢を叶える人になりたいな」 「まぁ素敵ね。じゃあみーくんがサンタさんになるのね」 「うん!」  そんな僕の夢が叶う!  僕も芽生くんと一緒にサンタになりたい!  四丁目の交差点で信号待ちをしていると、スマホが鳴った。  潤からだ。  

ともだちにシェアしよう!