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幸せが集う場所 34

「むにゃむにゃ……おにいちゃん……どこぉ?」 「……いっくん、ここだよ」 「めーくん、しゅき……むにゃむにゃ」  いっくんってば、おててをバンザイして赤ちゃんみたい。  そっとにぎってあげると、キュッとにぎり返してくれたよ。  ボクもこんなにちいさかったのかな?  いっくん、あのね、あのね、きいて!  ボク、ずっとずっといっくんのお兄ちゃんでいていいんだって。  よかったぁ。  本当はね、ちょっとだけシンパイだったんだよ。  いっくんがお兄ちゃんになるんだから、ボクはもういらなくなるのかなって。  でもちがうんだね。  いっくんとボクは、このままでいんだって!  ほんとうによかった! 「芽生坊、いい顔になったな。よーし、そろそろ眠るか」 「うん! ほっとしたらねむくなったよ」 「分かるよ。心配ごとがあると眠れないもんだ」 「うん、そうなの」 「よしよし」  ジュンくんが頭を撫でてくれたよ。 「……芽生坊だけじゃない。オレだって不安になることもあるよ」 「ジュンくんも?」 「大人も同じだよ。ちゃんといっくんのパパでいられるかなって不安になる。でも悲しい顔や困った顔をいっくんに見せるのではなく、こうしていたいよ」  ジュンくんが両手の人差し指で、自分のほっぺたをツンと上におしあげたよ。 「?」 「こうやって口角を上げてニコニコしていようぜ。笑うのってすごいパワーがあって、それだけで前向きになれるし明るくなれるんだってさ……兄さんがこの前、教えてくれた」 「こう?」 「そうだ!」  うん、そうだね。  ボクもニコニコが大好きだよ! 「おやすみ、芽生坊」 「おやすみ、ジュンくん、いっくん」  いっくんの横でねると、ごろんとねがえりを打って、くっついてきたよ。  えへへ、あったかいなぁ。  パパやお兄ちゃんとは、ちょっとちがう感じでくすぐったい。 「むにゃむにゃ……おにいちゃん……しゅき」 「はは、いっくんは眠っていても、やっぱり芽生坊が大好きなんだな。よっ、モテモテ兄ちゃん!」 「それは僕のお兄ちゃんのことだよ」 「瑞樹兄さんのことか、確かにな」 「えへへ、パパとジュンくんとボクって、お兄ちゃんのことが好き好き同盟だよね」 「ははっ、そうだな、よろしくな!」 「パパがタイチョウだよ」 「だろうな~ そこは譲らないだろう」 **** 「くしゅん!」 「寒いのか」 「いえ、急にムズムズして」 「はは、誰かが噂しているのかもな。君は人気者だし」 「そんな……違いますよ。あの……やっぱり寒いです。温めて下さい」  目立ったり褒められるのに恥ずかしさを感じる瑞樹は、そう言いながら俺の首元に手を回してきた。  布団に招き入れた瑞樹は、いつになく積極的な様子だった。  君が意識すれば、俺も意識するよ。  唾を飲み込むと、ゴクリと大きな音が立ってしまった。 「そ、宗吾さんってば」 「瑞樹、今日は久しぶりに二人きりだな」 「……はい」  瑞樹が目元を染めて、俺を見上げる。  恥じらう君も大好物なので、俄然ヤル気に満ちてくる。 「なんだか照れますね。和室でなんて……珍しいですし」 「あぁ、それに作務衣姿の瑞樹も新鮮だ」 「宗吾さん……そんなに見ないで下さい」  目元を泳がす君の襟元に手をかけ、一気に両肩を露わにしてやった。 「あっ」  すこし性急過ぎたか。  だが瑞樹も満更ではないようで、身体をすぐに赤くして応じてくれた。 「可愛いなぁ」  まずはキスから。  瑞樹も目を閉じて応じてくれる。  手も繋ぎたくて、そっと耳元で両手を固定してやった。 「あっ……」  体重を掛けすぎないように覆い被さり、キスの嵐。  その度に過敏に跳ねる身体。  甘い吐息。  全部感じたくて。  キスの合間に、瑞樹が何か言いたそうにしたので、促してやった。 「どうした? 何でも話してくれ」 「あの……もう身体は辛くないですか」 「ん? あぁ、日中は心配をかけたな」 「実は……宗吾さんが具合悪くなることはあまりなかったので、すごく、すごく心配しました……怖かったです」  瑞樹が切なげに訴える。  我慢せずに、心の内を素直に教えてくれる。  その様子に、胸がギュッと切なくなる。  耳元で固定してた手を離してやると、すぐに幼子のようにしがみついてきた。 「宗吾さんっ、良かったです」  瑞樹は目尻に涙を浮かべていた。 「よしよし、心配かけてごめんな」 「どこにも……いかないで……下さいね」 「あぁ、大丈夫だ! 君のお陰で無理してぶっ倒れる前に休めたので、すぐに回復できたよ。俺、タフだろ?」  おどけたように言うと、やっと笑ってくれた。 「くすっ、はい、いつもの宗吾さんです」  瑞樹が大好きな家族を一度に失った過去は、永遠に消えない。どんなに幸せで覆い尽くしても、こんなタイミングで君を不安にさせてしまう。  だから俺はその都度何度でも囁くよ。  何度でも伝えるよ。 「というわけで、そろそろ通常運転してもいいか」  浮かんでいた涙はチュッと吸い取ってやった。  笑顔を見せて欲しくて。 「はい」  雨後の虹のような瑞々しい笑顔を浮かべてくれたので、安堵した。 「やっぱり、瑞樹は笑顔が可愛いな」  剥き出しになっていた瑞樹の胸元に手を這わせ、平らな胸を大きく揉んでやる。トクトクと高鳴っていく鼓動を感じ、その胸元にもキスをした。  小さな尖りを指の腹で撫でたり摘まんだりしてやると、瑞樹は気持ち良さそうに「あっ……あっ」と小さな声を上げだした。そして慌てて自分の手で口を塞いだ。 「今日は……声を我慢しなくていい」 「ですが」 「ここは一番奥の部屋だ。潤たちの部屋とは離れている。洋くんが気を利かせてくれたのさ」 「……はい」  マンションだと芽生がいるので、自然と声を抑えてしまう瑞樹。  今日は沢山聞かせて欲しい。  俺の愛撫に震える声を。 「だから、大いに愛し合おう!」 「……はい」  一方的ではない営みがいい。  君からも俺をしっかり求めてくれ。  俺も君をたっぷり求めるから。  求める場所が同じなら、深い深い場所までいける。  今日は……そうしてもいいだろう?  

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