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幸せが集う場所 35

 今、僕は……月影寺の奥まった和室で、宗吾さんに熱心に抱かれている。  今日は芽生くんは潤といっくんと眠っているので、ここからかなり離れた場所にいる。だから声を潜める必要はないのに、つい習慣で自分の口を塞いでしまう。  どうやら乱れてもいいと意識し過ぎて、身体がいつになく過敏になっているようだ。  宗吾さんがそんな僕を見下ろし、優しく口元の手を引き剥がした。 「おいおい、今日は堪える必要はないだろう」 「ですが……既にドキドキし過ぎて、どうにかなりそうなんです」  正直に告げると、宗吾さんが破顔した。 「嬉しいことを。よし! 今日はたっぷりしような」  宗吾さんの指が、巧みに僕の身体を弄り出す。  頬を撫でられ耳の裏をくすぐられ、そのまま顎のラインから鎖骨へ滑り降りて、胸の尖りを一気に攻められる。 「あっ、そこは」 「尖って、コリコリになってきたぞ」 「言わないで下さい」  宗吾さんに抱かれるようになってから、僕はそこがすっかり弱くなってしまった。  唇で丹念に揉みしだかれ舌先でキャンディのように転がされ、指先で摘ままれ捏ね回され、どうにかなってしまいそうな程感じていた。 「宗吾さん……あ、ああっ」 「そうだ、その声をもっと聞かせてくれ」 「あぁっ」  いつもは子供部屋で芽生くんが眠っていると思うと、声を出すのは躊躇われ必死に堪えていた。  だから、つい癖で、何度も呑み込んでしまった。  その度に宗吾さんが愛撫を深めてくる。  濃厚な口づけに頭がぼんやりして、声を押し殺すのを次第に忘れていく。 「ああぁ……ああっ」  仕上げに首筋をベロッと舐められると、身体がビクビクと跳ねた。 「そ、そこは……」 「瑞樹、どこもかしこも、感じやすくなったな」 「それは……宗吾さんが沢山触れるからです」 「ははっ、うん、もっと触れたい。中に入りたい。いいか」 「……はい」 「ちょっと待ってろ」  宗吾さんが潤滑剤を鞄から取り出して、明るく笑う。 「準備万端だろ」 「……えぇ」 「君を傷つけたくないからな」 「ありがとうございます」    本来は湿るはずもない乾いた部分を、宗吾さんと繋がるためにと……潤滑剤でたっぷり濡らされ念入りに解されて準備してもらう過程は、何度身体を重ねても恥ずかしくてたまらない。  すぐに太腿を掴まれ左右に大きく開かれ、くちゅりと音を立てて秘部に指を挿入されると、最初は抵抗感と圧迫感を感じるが、宗吾さんの一部だと思うと身体の力が自然と抜けていく。  それでも羞恥に染まる顔は、そっと隠したくなる。 「耳朶まで染めて……いつまでたっても君は初々しいな」  身体の奥を丹念に濡らされて、湿った蕾を宗吾さんが確かめ、一呼吸。 「そろそろ大丈夫そうだな。挿れるぞ」 「……はい」  両足を今一度抱え直されて、挿入しやすいように腰を浮かされる。  僕は宗吾さんを見上げ、息を呑んだ。  相変わらず凜々しい身体だ。  欲情した男の色気を一身に浴びてゾクゾクした。  僕も男だ、宗吾さんに欲情しているんだ。  宗吾さん……本当にカッコいい人。  明るくて頼もしくて、僕を全力で愛してくれる人。  大好きだ。  大好きな人に抱かれる喜びを、ひしひしと感じていた。  同時に人に見せるはずもない大切な部分を曝け出していることに猛烈な羞恥を感じ、更にそこを宗吾さんに熱心に見つめられることに気付き、ますます頬が火照る。 「そんなに見つめないで下さい」 「瑞樹はどこもかしこも綺麗だ。ここも綺麗な色をしているよ」 「そんな……恥ずかしいです」  宗吾さんの昂ぶったものの先端は先走りでしっとり濡れていた。  こんなにガチガチに硬くなって大きくなって……  それを秘部に押し当てられた。 「あぁ……っ」  深い衝撃に、堪えきれない艶めいた声を上げてしまった。 「そうだ、もっと啼いてくれよ」 「あ……っ、ふっ……う、うっ」  貫かれた身体は、宗吾さんの揺れに合わせて上下に揺れていた。  更に奥まで一気に貫かれ、身体の中にみっちりと宗吾さんを感じて悶えた。 「あぁ……だめ、だめです。そんなに深く! あぁ……うっ、うっ」  くぐもった声をひっきりなしに絞り出しては、僕は快楽に溺れていく。 「こんなに乱れた君を見るのは久しぶりだ」 「あああ……」  声を一度解放すると、感じることに貪欲になってしまった。 「よしっ!」  宗吾さんもいつになく荒々しく猛々しく僕を穿つ。  出口まで引き抜かれたものを、またズンっと奥まで一気に突かれる。 「ああ、あぁあぁ!」    仰向けからのまま衝撃を受け止め、顎をカクンと逸らして喘ぎ続けてしまう。  具合いが悪かったのはいつのことか。  宗吾さんは元気一杯、激しく動いている。  やっぱりタフな人だな。  そして僕は宗吾さんのそんな強靱な生命力が好きなんだ。  続いて痛いほど乳首を吸われ、目の前がチカチカしてきた。  宗吾さんも僕も、お互いの身体に溺れていた。  激しい抽挿に、和室の布団から身体がずり落ち、いつの間にか畳の上にはみ出していた。 「おっと、ちゃんとシーツの上でしないとな」 「あ、……はい」  こんな時少しだけ冷静になる宗吾さんも愛おしい。  気が付くと、僕は四つん這いになり背後から突き上げられ、宗吾さんの大きな手で前を熱心に扱かれていた。 「瑞樹も溜ってんな。一緒に出そう」 「あ……あ、あ」  握り込まれたものを上下に扱かれて、男としての欲情が溢れ出す。 「一緒にいこう」  腰を掴まれ揺さぶられ、僕は四つん這いになっていられず枕に顔を埋めるカタチになってしまった。  そのまま腰だけを掲げられ抽挿を繰り返された。  中を穿たれながら前を弄られ、僕は感じ過ぎて涙を散らしながら宗吾さんの手に精を放ってしまった。 「あぁ……っ」 「ふぅ、瑞樹、俺も達したよ」    そのままうつ伏せになると、宗吾さんに優しく包まれた。  素肌をぴたりと重ねられると、まるで宗吾さんの一部になったような満ち足りた心地になった。  ふと横を見ると、雪見窓から静かな月光が差し込んでいた。  ここは、すごい。  こんなにも……心と身体を素直に解放出来るなんて――  一瞬我を忘れそうになった。  それほど宗吾さんの身体に溺れてしまった。 「気持ち良かったな」 「……はい」 「声、よく出ていたぞ」 「は……恥ずかしいです」 「この寺は精気が漲っているようだ。なぁ、もう1回しないか」 「え? もう?」 「なぁ駄目か」 「ううう、その言葉は……どこかで聞いたことが……」  僕は仰向けになり、宗吾さんを見上げて、手を回して抱き寄せた。 「宗吾さんの……元気で良かったです」 「瑞樹ぃ~ その言葉は俺を煽ることになるぞ」 「え? そんなつもりでは……くすっ、でもいいですよ。僕も……もっとしたいです」  たまには、はしたなく強請っても? 「瑞樹ぃ~ 今日はなんのご褒美だ?」 「別に……ご褒美ではなく……通常運転ですよ」 「おぉ! そうかいつもこんなことしていいのか」 「え? ちょっと待って下さい」 「待てない」 「あぁ!」  その後は僕が何を言っても、宗吾さんが喜ぶだけだった。  こんなに楽しく明るく抱かれるなんて、予期してなかった。  僕たちは夜更けすぎまでじゃれ合って、乱れたシーツに包まって寝落ちた。    早朝、流さんにたたき起こされた。 「起きろー!」  え! いつの間に? 「悪いなー お取り込み中。あのさ、エンジェルズがそろそろ起きそうだから、ほら、風呂に行け、行け。作務衣の着替えも置いておくぞ。あーあ、しかしまぁ、派手にやったな、はははっ」  僕と宗吾さんは真っ赤になり、大慌てで風呂に飛び込み、作務衣を着込んだ。  そこにキャッキャッと天使の声が聞こえてきた。  ふぅ、どうやらギリギリ間に合ったようだ。  襖が、遠慮なくスパッと横に開く。 「おはよう! パパ! おはよう、お兄ちゃん!」 「おはよう、そーくん! おはよう、みーくん!」  天使たちの笑顔は、今日も健在だ。  月影寺は心を癒やし、身体を素直に解放してくれるお寺だ。  だからここに集う人は、皆、笑顔でいられる。  ここは幸せが集う場所だ。   縁あって辿り着いた場所には、深い意味がある。                            

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