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幸せが集う場所 36
「めーくん、めーくん」
ユサユサされて目をさましたら、いっくんと目が合ったよ。
「ん……いっくん? どうしたの?」
「あのね、いっくんね、おめめ、さめちゃった」
「そうなんだね。ボクもさめちゃった」
「えへへ、めーくんとあさからいっしょ、うれちいね」
「うん、うれしい!」
「しゃむいね。はいっていい?」
「おいで!」
いっくんがゴソゴソとボクのおふとんにはいってきたよ。
わぁ! ちっちゃくて、あたたかくて、かわいいなぁ。
それにとっても朝からごきげんなんだね。
「いっくん、みーくんとそーくんのところでも、あそびたいな」
「そうだね」
でもお部屋から急にボクたちがいなくなったら、きっとまたびっくりしちゃうよ。
「ジュンくんに言ってからね」
「うん、でもパパぁ、きもちよさそうにねむってるよぅ。こういうときはなかなかおっきしないよ」
「そうだねぇ」
どうしようかな~ だれかいないかな?
よーし、お部屋から出ちゃだめなら、また知っている大人の人をさがしてみよう!
そっとショウジをあけて、お外を見たよ。
「めーくん、なにしてるの?」
「だれかいないかなって」
「あー、あしょこ!」
「ん?」
「はっぱしゃんのおとがするよぅ」
「葉っぱ?」
耳を澄ますと、リュウくんが大きなほうきで落ち葉をはいていたよ。
手をふるとびっくりしたお顔をして、ビューンとボクたちの部屋の前まで来てくれたよ。
「ど、どうした? エンジェルズよ、もう起きちまったのか」
「うん! あのね、お部屋のお外に出てもいいですか。いっくんがボクのパパとお兄ちゃんのお部屋に遊びに行きたいって」
「うーむ、うーむ、そうだなぁ、まだ二人はぐっすり眠っているだろうなぁ。よしっ、あの時計が7時になったらいいぞ」
「わかった! いっくん、それまでいっしょにこのお部屋であそぼう」
「あい!」
「いいか、絶対に7時だぞ!」
「はーい!」
リュウくんはまたビューンと走って行ったよ。
忙しそうだな。
「にんじんさんみたいでしゅね」
「ニンジン? もしかしてニンジャかな?」
「うん! おほしさまなげるひと!」
「やっぱり! じゃあシュリケンを作ってあげるよ」
「わーい」
お約束の時間まで、おりがみであそぼうっと!
ジュンくんは、やっぱりまだグーグー眠ってるよ。
なんだかパパみたい。
お兄ちゃんはちょっとの物音でも起きちゃうけど、パパはいつもグーグー眠っているよ。それが……ママがいなくなってから、さいしょはさみしかったんだ。
朝、パパはなかなか起きてくれなくて、おなかすいてもガマンしたよ。でもお兄ちゃんといっしょにくらすようになってから、そういうさみしさはなくなったんだ。だってお兄ちゃんは、ボクが小さな声で呼んだだけでも、すぐに気付いてくれるから。
病気で入院した時も、そうだったよ。
夜中にすごく苦しくて「お兄ちゃん」って呼んだら、すぐに来てくれた。
「いっくん、あのね」
「うん?」
「もしもパパやママに言えない困ったことがあったら、ボクを呼ぶんだよ」
「うん?」
「ボクはいっくんのお兄ちゃんだから、助けてあげたいんだ」
「わぁ……いいの? めーくん、いっくんのおにいちゃんになってくれてありがとう。だいしゅき!」
いっくんがボクのおひざにちょこんと座って、はずかしそうに笑ってくれた。
「えへへ。いっくんね、ここ、しゅきなの」
「ボクもだよ」
そうだ! ボクがお兄ちゃんにしてもらってうれしかったことを、いっくんにしてあげたいな。
「あ、いっくん、7時だよ。遊びにいけるよ」
「じゃあ、パパにおてがみかかなきゃ」
『ジュンくんへ。7じになったので、パパたちのおへやにいってきます』って書いたら、いっくんに感動されちゃった。
「しゅごい。おてがみかけるのしゅごい。あ、あのね、いっくんもおべんきょうするね。おてがみ、めーくんにいっぱいだしたいから」
ほっぺを赤くして、いっしょうけんめい話してくれるの、うれしい。
いっくんといると、ボクはボクが好きになるよ。
もっとやさしくしてあげたいし、たよってもらいたくなる。
ボクはいっくんがいると、カッコいいお兄ちゃんになれるんだ!
「ゆっくりでいいんだよ。いっくんの絵も好きだから」
「えへへ」
ボクたちは手をつないで、長いろうかテクテク歩いたよ。
「ひろいねぇ。みーくんとそーくんのおへやどこかな?」
するとろうかのずーっと先で、リュウくんが「おいで、おいで」ってしていたよ。
「あそこだって!」
「わぁい」
ボクは急に待ちきれなくて走り出した。
いっくんを見ていたら、ボクも甘えたくなったみたい。だからお兄ちゃんの胸にピョンと飛び込んじゃった!
「わ! 芽生くん、おはよう。よく眠れたかな?」
お兄ちゃんがボクを抱っこして、やさしく背中をなでてくれた。いい子、いい子ってね。だからお兄ちゃんだけに聞こえるように、そっと伝えたよ。
「あのね、すこーしだけお兄ちゃんに会いたくなって、さみしかったんだ」
「そうなの? そうか、そうなんだね。うん、そうか」
とってもうれしそうにわらってくれたから、ボクもうれしくなっちゃった。
あれ? お兄ちゃんからせっけんのいい匂いがするよ。
朝からもうお風呂入ったのかな?
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
「芽生ー パパにもして欲しいことがあるんじゃないか」
「えっと……あ! お馬さん!」
「おー、いいぞ」
「宗吾さん、腰はまだ大丈夫ですか」
「なぁに、まだまだ現役さ! へへ!」
「あっ……僕っ、また何を言って……」
お兄ちゃん突然真っ赤になって、自分のほっぺをペシって叩いたよ。
大人って不思議だな。
それにしても、パパにお馬さんしてもらうの久しぶり。
あれれ? 前より高く感じないのは、ボクの背が伸びたからかな?
ぐるっとお部屋をまわって、いっくんとお兄ちゃんに手をふったよ。
「めーくんのパパ、かっこいいでしゅね♡」
そこにバタバタやって来たのは、ジュンくんだった。
「いっくん! ごめんな。パパ、起きられなくて」
「ううん、だいじょーぶだよ。パパぁ、おはよう!」
「おはよう! それより今なんて言った? パパもお馬さんなら、まだまだ出来るぞ」
「いいの?」
「当たり前だ」
「わぁい」
ジュンくんってば。
そこにリュウくんもやってきた。
「ははは、ここは馬だらけだな。どうだ? 俺も馬だぞ。ヒヒーン!」
「わぁ! カッコいい! 乗ってみたい」
「いっくんもー!」
いっくんとボクは、リュウくんの背中によじのぼった。
すごい! 二人で乗ってもビクともしない。
「リュウくん、かっこいい♡」
「い、いっくん~ パパは?」
「パパはだーいしゅき♡」
「そ、そうか!」
「くすっ、じゅーん、デレすぎだよ」
「ははっ」
みんな、朝からとっても楽しそう!
さみしかった朝とは、もうバイバイだね。
ボク、元気になれてよかった。
みんながいてくれてよかった。
ワイワイ過ごせて、うれしいよ!
「みんな、ありがとう!」
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