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HAPPY HOLIDAYS 33
「ヒロくん、嬉しい。嬉しいわ!」
「みっちゃん、今年もよろしくな」
「うん!」
俺とみっちゃん、付き合いは長いが、まだまだ新婚さんだ。
たまにはこんな風に、甘い雰囲気に。
大沼に向かう道中……優美が眠ったので、みっちゃんとゆっくり語らう機会に恵まれた。
「さっきの……実はさ……昔、父さんが母さんに毎年新年に花束を贈っていたのを思い出して真似したんだ」
「まぁ、素敵なお父さんだったのね」
「あぁ、俺の父さんは二人とも最高だ。二人とも母さんを心から愛してくれているしな」
胸を張って言えることだ。
亡くなった父さんも、大沼の父さんも、俺の母さんを愛してくれている。
深く、広く、果てしなく。
「ヒロくん……かっこいい。二人のお父さんの愛はヒロくんも注がれているのよ。たっぷりとね……私にとってヒロくんは北の大地のように暖かいわ。どんな寒さにも耐え、草花を芽吹かせる大地よ」
「みっちゃんは太陽だ。いつも俺のこと見守って、支えてくれる」
幸せだ。
父は早くに失って……激動の10代20代だったが……今はこんなにも落ち着いている。
「ヒロくん、ここまでお疲れ様」
「ここまで頑張れたのは、みっちゃんが見守ってくれたからだ」
言葉に出して、何度でも、その都度伝えていきたい。
感謝の言葉、愛の言葉は惜しまない。
「もうすぐ着くよ」
「あら、赤いわ」
「ん?」
木立の間から、赤い物が見え隠れしている。
まるで……雪に埋もれそうな白い道の道標のようだ。
近づいていくと、それは瑞樹が被ったニット帽の色だった。
大きく、大きく左右に手を振って、明るい笑顔を振りまく弟の姿に、視界が滲んだ。
瑞樹、瑞樹、瑞樹……
そんなに明るく笑えるようになったのか。
正月休みを満喫出来たようで、頬を薔薇色に染めて満ち足りた表情を浮かべていた。
「お兄ちゃん!」
俺が車から降りると、子犬みたいに飛びついてくれたので嬉しかった。
宗吾もみっちゃんも、俺たちが相当なブラコンなのを知っているので、微笑ましく見守ってくれている。
「よしよし、疲れは取れたか」
「うん、すっかり良くなったよ」
「あの後すぐに熱を出したと聞いて心配したぞ」
「そうなんだ」
「もう元気そうだな」
「うん」
俺は持ってきたブーケを、母さんと瑞樹に渡した。
母さんにはピンクのスイートピーの花束、瑞樹には白いフリージアを束ねて……
母にはいつまでも若々しくいて欲しい。
お父さんの可愛い奥さんとして、ゆっくり過ごして欲しい。
幸せな生活のエッセンスになれば。
瑞樹に送ったフリージアの花は、明るい花姿で爽やかな香りから純真無垢なイメージがあり、「あどけなさ」「純潔」「親愛」という花言葉を持っている。
瑞樹には白を選んだ。
白の花言葉は「あどけなさ」だ。
いつまでも俺の可愛い弟でいてくれと願いを込めて――
「まぁ広樹ってば……やだ……覚えていたの?」
「ん……幸せを受け継いだんだ」
「お兄ちゃん、僕にもありがとう」
「二人の幸せに花を添えたくてな」
「うん」
赤い帽子が、瑞樹が置いてきた無邪気な少年時代を蘇らせるようで、よく似合っていた。
「これ、暖かそうだな」
「お母さんが編んでくれたんだ。目印にと」
「あぁ、そうだな。来る時に木立の間に見え隠れして目立っていたから、きっと雲からもよく見えるだろうな」
「お兄ちゃん……ありがとう」
「あのさ……ちょっと俺にも貸してもらえるか」
「うん、もちろんだよ」
俺は瑞樹の赤い帽子を被って、思いっきり空を仰いだ。
抜けるような冬の青空には、白い雲がぷかぷかと浮かんでいた。
こんな風にゆったり空を見上げる暇なんてなかった。
やっとだ、やっと……報告出来る。
父さん、見えますか。
俺たちが見えますか。
元気にやっています。
幸せにやっています。
だからどうか……どうか、安心して下さい。
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