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冬から春へ 2
ようやく宗吾さんと、ゆっくり身体を繋げられる。
期待で満ちて、ドキドキと心臓が高鳴っていく。
丁寧に入り口を解され身体中を手と舌で入念に愛撫されると、どんどん息が上がっていく。少しの刺激にも、僕の身体はピクピクと過敏に反応していた。
リラックスしているから感じるんだ。
「んっ……もう、大丈夫です」
「いや、久しぶりだから、もう少し解さないと」
「んっ……ん……」
彼の指で入り口を丹念に広げられるのは、いつまで経っても慣れない。
恥ずかしさで顔を染め、彼の肩にしがみついた。
宗吾さんの逞しい背中に手を回すと、落ち着く。
僕はどうしてこんなに宗吾さんが好きなのかな?
「俺はどうして、こんなに君が好きなんだろうな」
宗吾さんも、今、僕と同じことを考えてくれていたのですね。
「それは僕が宗吾さんのことが大好きだからでは?」
「なるほど! お互いに好きっていいな。自分のことを好きでいてくれる人を愛せるのは、とても幸せなことだな」
「はい、毎日……僕は更新しています」
「何を?」
「宗吾さんと芽生くんと過ごせる幸せを」
「俺も君への愛を更新中だ。よし、そろそろいいか。挿れるぞ」
「はい……あっ……ああっ」
ぐいっと腰を進められ、一気に僕の蕾が開いた。
彼のものを、つぷりと呑み込んでいく。
息が詰まるほどの圧迫感だが、宗吾さんとひとつになれるのが嬉しい。
「あっ……気持ちいいです」
「俺もすごくいい。君の中、熱を帯びて絡みついてくるよ。ありがとうな」
「僕の方こそ……お待たせしてすみません」
「正直……我慢の限界だった」
「くすっ、僕もです」
「瑞樹、今日は余裕があるな」
「えっ」
「もっと動かすぞ」
「あっ……うっ……うっ……」
宗吾さんが何度も何度も、強弱をつけて腰を深く打ち付けてくる。
僕は足を大きく広げたまま、彼の熱を浴び続けた。
12月は仕事が忙しくて、こんな風に抱いてもらえなかった。
お正月は僕が熱を出して、心配を掛けてしまった。
「うっ……」
「くっ……いいか」
「はい、とても」
「俺もだ」
宗吾さんに深く抱きしめられたまま余韻に浸っていると、顔をじっと覗き込まれた。
「いつもなら、すぐに眠ってしまうのにまだ余裕がありそうだな。もう一度するか」
胸元を舌で辿られ小さな尖りに口に含まれると、腰がビクッと跳ねた。
「だっ、駄目ですよ。明日から会社なので」
「だよなぁ、君の細い腰を痛めるわけにはいかない」
そっと労るように、今度は宗吾さんの手が腰に伸びてくる。
宗吾さんは一方的に僕を抱かない。
いつも僕の身体を労ってくれる。
男同士、正直受け入れる方が負担の多い行為だ。
それを理解して、大切にしてもらっているのを感じて、また嬉しくなる。
「宗吾さんこそ、今日はいつもより激しかったですが大丈夫ですか」
「ははっ、俺の腰の心配まで、ありがとうな」
「くすっ、このまま一緒に眠りましょう」
「あぁ、いい夢を見られそうか」
「はい、とても満ち足りた気分です。あの……お正月に大沼に連れて行って下さってありがとうございます」
「行って良かったな、俺も楽しかったよ」
「はい、良かったです」
目を閉じればすぐに浮かんでくる、僕の弟の笑顔。
夏樹――
もう君を思い出すことに、戸惑いはない。
僕の記憶は、大沼の雪原で元気に飛び回る君の笑顔で埋め尽くされているよ。
いつも雲の上の世界から見守ってくれていたんだね。
だからいち早く赤い帽子に気づいて、降りてきてくれたんだね。
ありがとう。
あ……でも、こんな風に僕が宗吾さんに抱かれている姿を見られるのは恥ずかしいな。
隠れなくては……
もぞもぞと布団の中に潜ると、宗吾さんに笑われた。
「瑞樹は子犬みたいだな。布団で丸まって、ぬくぬくと気持ちよさそうだな」
「子犬って……ちゃたじゃあるまいし……僕はもう30歳ですよ。でも……ここは、とてもあたたかくて……僕は少し……眠いです」
「今日は、このまま眠ろう」
「肌と肌って……いいですね」
生まれたままの姿で、宗吾さんともう一度抱き合った。
素肌がくっつく度に、小さな幸せを噛みしめる。
生きているって、素敵だ!
ただ翌朝、何も身に着けず眠ってしまったことを後悔した。
「パパ、おはよー お兄ちゃん おはよー! もう朝だよ」
リビングから聞こえる元気な声に、宗吾さんは焦ってベッドから落ち、僕は布団の中でミノムシみたいに丸まって、出るに出られなかった。
「大丈夫だ! 瑞樹はゆっくり来い」
こんな時の宗吾さんはフットワークが軽く、あっという間にスウェットの上下を着込んで居間に向かった。
僕は苦笑しつつ、宗吾さんに愛された身体を起こした。
「僕のパジャマはどこかな?」
床に脱ぎ捨てられたいたのを発見したので拾おうとすると、埃までくっついてきた。
「あっ、まただ。12月は仕事が忙しくて油断していたな」
ベッドの下は埃まみれ。
「今度の週末は年末に出来なかった大掃除をしよう!」
伸びをして起き上がると、朝日が眩しかった。
仕事始めだ。
気合いをいれよう。
シャワーを浴びると、目が覚め、気が引き締まった。
ネクタイを締めていると、入れ違いシャワーを浴びた宗吾さんが入ってきて、目を細めて僕を見つめてくる。
「瑞樹、スーツ決まっているな」
「はい、今日は新年に挨拶回りがあるので」
「かっこいいよ。まるで花の国の王子さまのようだ」
「そんな……」
「改めて、おはよう!」
「おはようございます」
キスを交わそう。
今年も数え切れないほどのキスを――
吐く息は白く凍えそうだけれども、僕の心は満たされている。
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