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番外編・季節のSS「お月見」

前置き(不要な方はスクロールして、飛ばして下さい) こんにちは。志生帆海です。 昨日は1日がかりで秋庭同人誌の梱包作業をしました。 秋庭新刊をご予約下さり感謝しています。本当にありがとうございます。梱包に5時間以上かかったため、通常の更新分の執筆が出来ませんでした。ごめんなさい。 というわけで、番外編として季節のSSを書きました。 昨日はお月見、今日は満月ですので、お月見にちなんだ軽井沢の様子です。 尚、9月23日の秋庭では完売していた『幸せな存在』5周年記念本の再版も致します。詳しくはXにて(@seahope10)BOOTHも同日OPENします。 長々と前置き失礼しました。 では、どうぞ! **** 「ママぁ、おつきさま、まんまるだね」  ほいくえんのかえりに、おそらをみたら、おつきさまが、まんまるだったよ。 「今日は中秋の名月で、明日は満月なのよ。あ、そうだ! いっくん、お月見団子を作ってみない?」 「え! いいの? いっくん、ずーっと、つくってみたかったの」 「もちろんよ。ママもしてみたかったの」  うれちいな、うれちいな。  おつきみには、おつきみだんごをたべるんだって、せんせいがいっていたよ。  まあるいおだんご、ころころするの、じょうずだよ。  いっくんね、たべられるおだんごもつくってみたかったの。  しろくて、もちもちしてるの、おいしそうだなって。 「じゃあスーパーに寄ろうね。休中は時間にゆとりがあって、いろんなことができるわ」 「いっくん、ママがいつもいてくれて、うれちいよ」 「ありがとう。ママもうれしい」  ママ、にこにこして、いつも、たのしそう。  うれちそう。  ママといっしょにおだいどころで、おだんごづくり、できるんだね。  たのしいね。  なかよちだね。  しあわせだね。  いっくんのだいすきなことばが、ぐるぐる! ****  小さなエプロンをつけて、お月見団子作りに夢中ないっくん。    その可愛らしい顔に、私は幸せを噛みしめた。  いっくん、ずっと微笑んでいる。  潤くんと出会うまでは、いつも私の顔色を伺って寂しそうな顔をしていたのに、今はいつも微笑んでくれるのね。  親子で苦しそうな顔をしていた時は、皆との距離が遠く感じたけれども、今はとても近い。  笑顔でいるって、つきを呼ぶ魔法なのかしら? 「すみれ、ただいま」  玄関に迎えに行くと、潤くんは、沢山のすすきを抱えていた。 「潤くん、わぁ、すごい量ね」 「今日はお月見だろ? 職場の人が持っていけって」 「嬉しいわ。ちょうどお団子を作って飾った所なの」 「へぇ、じゃあタイムリーだったな!」 「潤くん、ありがとう」  潤くんの笑顔に、私も笑顔になる。 「いや、オレこそ、ありがとう。季節の行事っていいな。すみれと出会うまでは気にしたこともなかったが、今は一つ一つの日本の伝統行事を大切にしたいと思ってる」 「私も同じ気持ちよ」  潤くんと私は、価値観が似ている。    出会うまでお互いに不器用な生き方をしていた分、今はお互いの心を揃えて、毎日を丁寧に大切に過ごしている。  私たち、歯を食いしばるのは、もうおしまい。  今はナチュラルに自然体に―― 「あっ! まきちゃん、駄目よ」  いっくんと私で作ったお月見団子、ピラミッド型に綺麗に積み上げていたのに、目を離したらまきちゃんがコロコロ転がしてしまったの。  せっかく作ったのに……  私はちょっとため息。  でも、いっくんは微笑んでいた。  どうして? 「いっくんは怒らないの?」 「きっと、まきくんも、さんかしたかったんだね。じょうずにおててをのばせたね」 「……でも、せっかく作ったものを壊されてしまって、がっかりしないの?」  気を遣ってばかりの子だから、思い切ってストレートに聞いてみたの。 「いっくんね、どんなかたちでもいいんだ。だってママとつくったおもいでがもう、ここにあるから」 「いっくん……」  健気で切ないわ。  もっと我が儘を言っていいのよ。  でも、これが素のままの、いっくんなのかもしれない。  ピュアでピュアで……  純真すぎる程きれいな心を持っているのが、いっくんだわ。    4人で屋上で月を見上げた。 「おそらのパパは、おつきさまのちかくにいるんだね」 「そうね、今頃、美樹くんもお月見をしているのかも……」  潤くんがいっくんを抱きかかえてくれる。 「きっとしているさ。いっくんのお手製のお団子、コロコロ転がって、美樹さんの元へ行ったのかもな」 「うん、きっとそう!」  いっくんは空に向かって、手を伸ばした。  そして嬉しそうに手を振った。 「おそらのパパぁ、おつきさまきれいでしゅか。いっくんのつくったおだんご、とどきましたか。おいちかったでしゅかー」  私たちのお月見は、どこまでもどこまでもハートフル。  いつも優しい夜を過ごしている。  潤くんと出会ってから、毎日が楽しい。  家族なかよしで、嬉しい。  お月様、ありがとうございます。  家族で見上げた月は、とても幸せそうに満ちていた。    

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