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マイ・リトル・スター 23

「いっくん、一緒にパンを買いに行こう!」 「あい! パパ」  きょうはね、いっくん、ほいくえんにいかないよ。  あしたまで、ずっとパパとママとまきくんといっちょ。  それからね、もうすぐ、めーくんたちがあそびにきてくれるんだよ。  ほいくえんのおともだちが「おやすみがたのしみ」っていってたの、いまならよーくわかるよ。  ほいくんえんもだいすきだけど、おうちもだいすき。  おともだちもだいすきだけど、かぞくもだいすき。 「家の隣がパン屋さんでよかったな。ほら、焼きたてだぞ」 「わぁ、ほかほかだねぇ」 「おっと車が通るから、いっくんはこっちを歩くんだよ」 「うん」  パパとおててつないであるくの、うれちい。    どこまでも、どこまでも、パパといっちょがいいなぁ。 「……いっくんのパパぁ」 「どうした?」 「えへへ、よんだだけだよ」 「ありがとう、いっくんに呼ばれるのは、いつも嬉しいよ」  でもね、おうちにもどっても、なかなかめーくんがこないの。  いっくん、いいこでまっているけど、そわそわしちゃう。 「パパぁ、まだぁ? まだかなぁ……」 「あー 渋滞にはまったって」 「じゅうたい?」 「道が混んでいて遅くなるそうだ」 「しょっかぁ」 「あー 待ち遠しいな」 「パパも?」 「いっくんと同じ気持ちだよ」 「おなじ? よかったぁ」  パパのきもちとおそろい、うれちいな。  いっくん、どうしてこんなにパパがしゅきなんだろう。  ずっとずっと、さがしていたからかな?  まだゆめみたい。  おめめとじて、パッとあけたら……  ドキドキ……  あ! パパがニコニコしていたよ。 「いっくん、どうした?」 「よかった、パパいる。これ、ゆめじゃないんだね」 「当たり前だ。ここはいっくんの家で、オレはいっくんのパパだ」 「うん!」  そのあと、パパがおうちのまえでまとうって、いってくれたよ。  いっくんとパパ、ワクワクしながらたっていたの。 「めーくんは、どんなおくるまでくるの?」 「水色だってさ」 「おそらいろ? きれいなおいろだねぇ」 「だな、憲吾さんはきっと兄さんが運転するのを想定して、兄さんが大好きな水色にしたに違いない」 「みーくんのこと、みんなだいしゅきだもんね。おそらのいろ、いっくんもだいしゅき」 「お空の色か……いっくんのお空のパパの色と同じだな」 「おそらのパパぁ、いっくん、きょうもしあわせだよぅ。パパとめーくんをまってるの。おそらからも、みえる?」  おそらのいろは、おそらのパパのいろ。  パパのいろは、はっぱいろだよ。  どっちもだいじ。 「あ、あの車かも」 「わぁ、ほんとうにおそらいろだ。めーくん、めーくん、めーくん‼」  おおきなこえでさけんだよ。  だって……  うれちくてうれちくて、うれちいんだもん! ****  車を止めると、いっくんが待ちきれない様子でパタパタと近づいてきた。  頬を薔薇色に染めて、弾ける笑顔を浮かべている。  そんないっくんの手を、潤がしっかりと握っていた。  すっかり父親の顔だ。  凜々しいね。  カッコいいよ。 「パパ、ボクも早く降りたいよ」 「ちょっと待て」  芽生くんも興奮して、足をバタバタさせている。  その年相応の、子供らしい仕草に何故かほっとする。  こんなに楽しみにしてくれていたのだね。  さぁ、再会だ!  芽生くんがいっくんを抱っこするようなカタチで、ギュッと抱き合った。 「いっくん、元気だった?」 「めーくん、あいたかった。あいたかったよう」  いっくんは子犬のように、ワシャワシャとじゃれてくる。 「あはは! くすぐったいよぅ!」 「めーくん、だいしゅきー いっくんのおにーちゃーんだもん」 「いっくん、いっぱいあそぼう!」 「あい!」  全身で喜びを表現する二人に、宗吾さんと僕の頬は自然と緩んでいた。 「瑞樹、やっぱり来て良かったな」 「はい」 「なんとか休みが取れてよかったよ。それにしても子供の笑顔って最高だな」 「本当にそうですね」 「さぁ、俺たちも一緒に楽しもう!」  潤が興奮する子供達をひとまず先に部屋に入れ、それから僕たちの所にやってきた。 「宗吾さん、兄さん、ようこそ! その節は大変お世話になりました。その……コホン……オレの新居に遊びに来てくれて、ありがとうございます」  潤が畏まって挨拶をした。 「よかったな。潤、一晩世話になるよ」 「じゅーん、マイホーム、おめでとう。すっかり一家の大黒柱だね」 「て、照れるよ」 「マイホームは、僕も続きたいよ」 「お! そうなのか。そうか、いよいよ本腰を入れるのか。ぜひ宗吾さんと兄さんと芽生坊の三人の家を目指してくれ。応援しているよ」 「ありがとう。僕たちは潤に良い刺激をもらって……前に進むことにしたんだ」  道中、宗吾さんと話したばかりの、僕たちの家を建てること、潤に勢いで伝えてしまった。  マイホームを手に入れた弟の輝かしい笑顔を目の当たりにして、どうやら強い刺激をもらったようだ。 「やったな! 前向きな兄さんって新鮮で、最高だ。かっこいいよ」  手放しで褒められて恥ずかしい。  同時に、潤と宗吾さんと同じ夢を見て、それを叶えていく覚悟があることを、潤に知ってもらえて良かった。  潤は大切な弟で、頼りになる弟だから。  伝えたくなった――

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