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マイ・リトル・スター 29

 前置き  (宣伝を含みますので、不要な方は下へスクロールして下さいね)  久しぶりに更新になります。Halloweenは他サイト(エブリスタ)の方でSSリレーをしていました。10月31日の1日で全6話 1万字も書き下ろしましたので、昨日はお疲れ休みを頂きました。 『幸せな存在』の5周年記念同人誌はBOOTHで再販中です。  連載では読めないエロ可愛い瑞樹や成長した芽生の姿をお楽しみいただける豪華本です。また年表もあるので、指南書としても便利です。 ****  潤が案内してくれたのは、幼い子供に丁度よい大きさの原っぱだった。  思いっきり身体を動かせて、広すぎず安全な場所は、きっと潤が近所を吟味して選んだ場所なのだろう。  ここでなら、いっくんも芽生くんものびのび遊べるね。  憲吾さんからのプレゼントのサッカーボールが、早速大活躍だ。 「めーくん、それっ」 「いっくん、そうだよ。わぁ、じょうずになったな」 「えへへ」  いっくんの恥ずかしそうな笑顔と芽生くんの溌剌とした笑顔が合わさると、向日葵のような明るい笑顔が生まれた。 「兄さんたちは休憩してくれ。まずはオレが見守るから」 「サンキュ! 瑞樹、ちょっと座ろうぜ」 「あ、はい」  潤はいっくんの背後に回り、サポートを始めた。  なるほど……  ボールが遠くに行きすぎないように、さり気なく守っているんだね。  その様子は、頼もしい父親そのものだった。  槙くんが生まれてから潤は更に成長した。あの小さかった弟が、こんなに立派になって……  潤といる時の僕はお兄ちゃんモードなので、ゆっくりと瞬きをして、弟の確かな成長への喜びを噛みしめた。 「瑞樹、絵になる光景だな」 「はい」  僕の隣りでは、宗吾さんがサッカーボールで遊ぶ子供達の様子にスマホを向けていた。 「あ……撮影していたのですね」 「あぁ、いい光景だから、兄さんに見せてやりたくてな。兄さん、本当に変わったよな。昔は子供なんて興味なくて、芽生とろくに口を聞かなかったのに、今はいっくんにも幸せを届けてくれる人になった。俺、今の兄さんが好きだ」  宗吾さんの言微に、僕の頬も緩む。  それは……  憲吾さんが今とても満ち足りているからだ。    相手と同じ量くらい自分も幸せにしているから、生まれる愛だ。  僕は……ずっと愛を勘違いしていた。  宗吾さんと出逢うまでの僕は……自己犠牲の愛に固執していた。  自分さえ我慢すれば上手くいく。  自分は不幸になってもいいから、相手は幸せになって欲しい。  一馬との付き合いは、そんな偏った愛が充満していた。 「……僕は浅はかでした」 「ん? どうした? 顔色が悪いな」 「あ……いえ、少し昔のことを」 「みーずき、また難しい顔をしているぞ。ここを解せ、可愛い顔が台無しだ」  宗吾さんは僕の眉間を指さし、そこに軽くキスを落とした。 「えっ」 「へへ、早業だ」 「も、もう――」 「お! 頬に赤みが出てきたぞ」  強ばりそうになった心はいつの間にか弾んでいた。   「あの……こんな時は……こんな風に宗吾さんのペースに巻き込んで下さい」 「そうだな。恋人同士は歩み寄るのが一番大事だとは思うが、時には巻き込まれちまうのもいいぞ。こんな風に~」 「わっ!」  突然、原っぱに仰向けに押し倒されたので驚いた。 「あー 気持ちいいいな!」  宗吾さんも、ごろんと僕の横に仰向けになった。  あ……懐かしい。  あの日のようだ。  宗吾さんの家に引っ越してきた日、日中、公園でこんな風に寝そべった。 「あの日の約束を覚えているか」 「はい」 「あれはずっと生きているよ。どんな天気でも俺たちは寄り添って、いい時も悪い時も、互いが互いの傘になり過ごしていこう!」    あの日のように繰り返されるのは、幸せな呪文。  僕を一人ぼっちにしない魔法の言葉だ。 「はい、宗吾さんの傍にいます。宗吾さんと家を建てます」 「そうだ。俺たちの家を一から考えていこう」 「はい!」 「瑞樹、ありがとう」 「僕の方こそ」  嬉しくて嬉しくて視界が滲むと、芽生くんの笑顔が降ってきた。 「パパ、お兄ちゃん、ちょっときゅうけいさせて」 「おぉ! 芽生、ここへ来い」 「わぁ、空が広いね」  芽生くんはあれから成長して、随分大きくなった。  でもまだ僕と宗吾さんの間に飛び込んできてくれる。  それが嬉しくて、それが幸せで――  僕と宗吾さんの関係には、芽生くんが不可欠だと実感する。 「久しぶりに三人で寝っ転がったな」 「パパ、明日は寝袋でごろんだね」 「そうだな、今日も明日も楽しみだ」 「僕も楽しみです」  その後は僕も思いっきり身体を動かした。  五月の風は、僕の味方だ。  風に乗って走ろう。  僕には未来がある!  

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