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芽生の誕生日スペシャル『星屑キャンプ』8

「瑞樹……」  ラグの上に仰向けに倒され、着たばかりのパジャマのボタンに手をかけられた。  優しい手つきに僕は静かに頷いて、受け入れる。  首元に優しくキスをされ胸元まで辿られると、堪えきれない声が漏れてしまった。 「んっ……」  そのまま平らな胸を大きな手で揉まれると、ぞくぞくとした感覚が一気に駆け上がってくる。 「あっ……」 「相変わらず瑞々しいな」 「あの……僕は……もう30を過ぎて……」 「年齢なんて関係ないよ。瑞樹の内面から湧き出るものが瑞々しいんだ」 「んっ」  気がつくと、すっぽりと宗吾さんに抱きしめられていた。  ところが、ロフトに続く階段が視界に入ると、急に不安になってしまった。  芽生くん、ぐっすり眠っていたけれども、万が一起きてしまったら……  一抹の不安を感じると、宗吾さんに手を引かれた。 「行こう! 向こうに特別な部屋があるんだ」  奥の部屋は、恋人達のための部屋だったのか。  窓際にダブルベッドが置かれていた。    ここで宗吾さんに抱かれる。  そう思うと、胸が高鳴ってしまう。  僕の誕生日の夜に抱かれたばかりなのに、もう宗吾さんが欲しくなってしまったようだ。  僕も宗吾さんと同じだ。  強く欲情している。   そのままダブルベッドに押し倒され、脱げかけていたパジャマを全て剥ぎ取られ裸にされると、宗吾さんもすぐにパジャマを脱ぎ捨て覆い被さってきた。 「ありがとう、芽生の誕生日を素晴らしいものにしてくれて」 「僕は何もしていません。ただ傍にいただけです」 「それが一番なんだ。芽生に必要なのは、芽生を一番に大切にしてくれる愛情だから」 「僕は芽生くんが大好きです。芽生くんは僕の星です」 『マイ、リトル、スター』    僕は君を密かにそう呼んでいる。 「瑞樹がいてくれるおかげで、芽生は優しい子に育っているよ。俺の恋人で、芽生の良き理解者でいてくれる君が愛おしい」  宗吾さんとしっとりと重ねて啄み合った。  宗吾さんの愛をダイレクトに感じられるキスが好きだ。  身体の隅々まで愛撫されて、うっとりとした心地になってくる。 「ん……」  見つめられる度に、求められる度に、深まっていく恋をしている。  身体の奥が疼き、愛撫の度に跳ねてしまう。 「あっ……あっ」    舌を絡め合う深いキスを交わすと、宗吾さんがため息交じりに呟く。 「ふぅ、参ったな。相変わらず色っぽいな。清純な君が乱れていく様子は絶対に誰にも見せたくない!」  毎回僕を抱く度に真顔で呟かれるので、僕はありったけの心をこめて言葉で伝えるようにしている。 「宗吾さんだけです。こんな姿を見せるのは宗吾さんしかいません」  太股に手をかけられたので、僕も協力して足を開いた。  こんな風になれるのも、宗吾さんだけだ。    続いて狭間に手が伸びてきたと思ったら、前も後ろも同時に愛撫されてしまい、困惑した。 「あ、やっ……そんな……両方なんて……無理です」 「そんなに悶えて……可愛いな」 「宗吾さんっ」  両手を広げて背中に腕を回して抱きついた。  一緒にいたい、ひとつになりたい。    そんな欲望で、僕の方も満ちてくる。  淫らになってしまうよ。    そのタイミングで宗吾さんは一度身を起こし、深呼吸した。 「ふぅー 久しぶりに短い間隔で君を抱けるから興奮しているんだ。落ち着け、俺!」 「くすっ」 「笑ったな」  宗吾さんの言葉はいつもストレートで、心地よい。  潔い人だ。 「君をまるごど愛してるよ」 「僕も大好きです。宗吾さんを愛しています」  こんな風に、言葉でしっかり伝え合える関係もいい。  狭い場所を指で解され、二本の指を根元まで埋め込まれ、くちゅくちゅと掻き混ぜられた。  潤滑剤の水音に、また恥ずかしさが増す。  僕の身体……順応しすぎでは? 「この前したばかりだから、解れるのが早いな」 「あ……そんな……」  腰を抱えられると、とんでもない恰好になる。  卑猥な姿勢に羞恥心が満ちて、顔を手で覆ってしまう。  何度も何度もしているのに、僕は恥じらいを捨てきれない。 「おーい、何故顔を隠す?」 「恥ずかしいんです」 「そんな所も好きだよ。そろそろいいか」 「はい」  指1本でも圧迫感のある場所に、宗吾さんの大きなものを受け入れるのは毎回苦痛も伴うが、それ以上の幸せを感じる行為だ。    チュッとおでこにキスをされた後、一気に腰を沈められた。 「うっ……」  そこからは宗吾さんの動きに、揺さぶられていく。シーツが擦れる音と二人の熱い息遣いで、色めいた空気がログハウス内に満ちていく。 「あっ……あ、あ……」 「柔らかいな……くっ……気持ちいい。君の中は最高だ」  僕の内部は柔らかく湿っているのだろうか。  彼に安住の地を提供できているのなら嬉しい。 「もう少し奥へ行ってもいいか」 「あっ……うっ」    宗吾さんが深い挿入を繰り返すと、僕の感じ方も強くなっていく。 「あっ、ああっ」 「くっ」  散々揺さぶられた後に、熱いものが最奥に届くのを感じると、僕も後ろだけで達してしまい、身体がギュッと弛緩した。  そのまま呆然と、顎を逸らして天井を見上げた。  あ……あそこに天窓があったのか。  月明かりが下りてきていたので、存在に気付けた。  目を凝らすと……  天窓から見える夜空には、幾千もの星が瞬いていた。 「あ……星が」 「うん?」 「雲が流れたようで、天窓から星が沢山見えます」 「お? 本当だ」  宗吾さんも仰向けになって、満天の星を見つめた。 「芽生にも見せたかったな」 「また来ましょう。チャンスを作って」  僕の口から出たとは思えない前向きな言葉に、自分でも驚いてしまった。 「そうだな! 瑞樹は明るくなったな」 「そうでしょうか」  そう言われると恥ずかしいが、自分でもそう思う。    星が見えなくても見えても……  僕には愛する人がいる。  僕には守りたい人がいる。  そのことが自信に繋がっている。 「君の言う通り、芽生はまだ10歳だ。まだまだ一緒に過ごせるし、成長して大人になっても、芽生の心はずっと傍にいてくれるだろう。だから沢山のチャンスを作っていこうぜ」 「はい」  星屑を散りばめた夜空に誓いたい。  僕はこの地上に根を張って、生きていくと。  星になった家族に伝えたいことが浮かんでくる。  僕は幸せに暮らしています。  お父さん、お母さん、夏樹――  ずっと大好きです。                          ****    朝、目が覚めたら、お兄ちゃんとパパがボクの両隣に眠っていたよ。  ボクを守るように、二人が寄り添ってくれていたよ。    そっか、人って……  ひとりで生きているんじゃないんだね。  いろんな人に支えてもらっているんだね。  ボクはもう10歳だけど、まだ10歳。  急いで大人にならなくてもいいんだね。  パパやお兄ちゃんみたいな大人になりたいから、いろいろ教えてね。  それで……まだ……甘えてもいいんだね。  本当のボクは、ちょっとさみしがり屋。  でもね、お兄ちゃんとパパがいるから、毎日明るく元気でいられるんだよ。  ありがとう! だいすき!  だから今日も元気いっぱい朝のあいさつをするよ。 「パパ、お兄ちゃん、おはよう! 今日もいいお天気だよ」               芽生の誕生日スペシャル『星屑キャンプ』 了  

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