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2025年お正月特別SS 幸せな年明け①

前置き あけましておめでとうございます。 志生帆 海です。 いつも『幸せな存在』を読んで下さってありがとうございます。 昨年はリアルが多忙すぎて、更新が滞ってしまいました。特にクリスマス以降は全く書けず……今年もまだ父が入院中で、仕事もますます忙しくなりそうですが、細く長く創作を続けていきたいです。 以前のように毎日は更新できないですが、宗吾さんと瑞樹の日常、芽生の成長、いっくんの成長を、一緒に見守っていただけたら嬉しいです。 執筆は私にとって、自分だけの時間です。最近の『幸せな存在』は起伏に富んだ波瀾万丈な話ではなく、なんでもない毎日をテーマにしています。私が大好きな優しい世界を、大切にして下さってありがとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願いします。 今年最初の書き初めなので、芽生の二分の一成人式の話は少し置いて、お正月番外編SSを書かせて下さい。 滝沢ファミリーのお正月風景をどうぞ。 **** 『幸せな年明け』 冬の日差しが差し込む元旦の朝、大きな伸びをしながら布団から起き上がると、隣では瑞樹が俺に寄り添うようにまだ眠っていた。  三十を過ぎた男とは思えないな。  透明感のあるきめ細やかな肌。  長い睫、可憐な顔立ち。  明るい髪色が、日に透けて綺麗だ。  ふっくらとした頬を手の平で包んで、甘い口づけを繰り返すと、瑞樹がパチッと目を覚ました。  王子さまのお目覚めだ。 「え? そ、宗吾さん……今、何を」 「おはようのキスだよ。瑞樹、あけましておめでとう」 「お、おめでとうございます。あ……芽生くんは」 「夜更かしたから、まだ眠っているよ」 「昨日は一緒に年越しできましたね」 「あぁ、だいぶ眠たそうだったが、頑張ったな」 「はい、芽生くんの成長を感じますね」  瑞樹と一緒に、芽生の寝顔を覗き込む。  すやすやと寝息を立てる様子は、まだまだあどけなかった。 「芽生くん、微笑んでいますね」 「幸せな夢を見ているのだろう。俺もまだ夢の世界にいたいよ」 「じゃあ……もう少しだけ横になっていますか」 「いいのか」 「お正月なので特別ですよ」  瑞樹があんまりにも甘く微笑むので、ブルッと武者震いしてしまった。 「大人しくしている自信がない。もっとしたくなる」 「え? 何を考えて……あ、もう」  瑞樹が慌ててパジャマの襟元を手で押さえた。   「そこで合ってる」 「も、もう――」  昨日つけたキスマークを手で隠して、頬を染める様子が可愛かった。 「大丈夫、シャツで隠れるよ」 「も、もう、起きます。おせちの準備をしないと」 「じゃあ、俺は洗濯を干しておくよ」  瑞樹と暮らし始めてから、家事を分担するようになった。  お互い得手不得手があるので、その方が効率がいい。  ちなみに俺は掃除は苦手だが、洗濯干しは大好きだ。 (瑞樹のパンツにも堂々と触れられるしな~)  なんて下心がバレたら大変だ。  そこに強い視線を感じる。  ヤバい、芽生が起きてきた! 「お父さん……またニヤニヤして……もう今年こそお兄ちゃんに嫌われちゃうよ」 「え? いや、その……」  下心は封印せねば。  瑞樹に嫌われるのはいやだからな。  1/2成人式を終えてから、芽生は俺を『パパ』から『お父さん』と呼ぶようになった。  お父さんと呼ばれると、気が引き締まるもんだな。  対等に物を言うようになってきたしな。 「ボクも手伝うよ」 「じゃあ、タオルを頼む」 「うん!」  リビングに戻ると、キッチンで瑞樹が手際よくお重におせち料理を詰めていた。  母さんから差し入れてもらった黒豆と伊達巻は、手作りで美味しそうだ。  紅白なますは、昨日三人で協力して作ったものだ。  紅鮭の昆布巻きは大沼の実家から、紅白かまぼこは函館の広樹から、ハムセットは軽井沢の潤からの贈り物だ。  そして鎌倉の豪華なローストビーフは兄さんから。  我が家のおせちは、幸せの寄せ集めだな。 「出来ました」  重箱をテーブルに並べる瑞樹の姿を、俺と芽生は目を細めて見つめた。 「お父さん、ボクたちは幸せだね」 「あぁ、あのまま俺たちだけだったら、こんな気持ちにならなかったよな」 「うん」  最近の俺と芽生の関係は、親子というより同志のようだ。  瑞樹が好き同盟を結んでいるのさ! 「どうでしょうか」 「瑞樹は手先が器用だから、綺麗に詰めるよな」 「あ、あの……仕事で……花をこのように四角いボックスに生けることがあるので、それが役立ったのかもしれません」  謙虚な瑞樹にまた口元が緩む。  芽生は椅子に座りながら、うんうんと大きく頷いていた。 「ボク、これ大好き! 食べるのもったいないくらいキレイだよ。お兄ちゃんみたいに」 「あぁ、端正なところが瑞樹みたいにキレイだ」 「ふ、二人とも……」  ウインクしながら囁くと、瑞樹は目元を染めていた。  今年も溺愛街道まっしぐらだ。  こんなにも好きな人を好きになれるなんて、奇跡だよな。  瑞樹と出会えて、本当に良かった! 「食事を終えたら、皆で初詣に行こう」 「いいですね」  のどかな、のどかな正月を迎えよう。  愛しい人と過ごせることに感謝しながら――

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