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2025年お正月特別SS 幸せな年明け④
前置き
お正月早々一家でインフルになってしまいました。
そのため更新が途中で滞り、お待たせして申し訳なかったです。
ようやくお正月特別SSの最終話を書けました。
(病み上がりのウォーミングアップなので短いです)
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「あー 楽しかった!」
芽生は凧を胸元に抱えて、満足そうな顔を浮かべていた。
上気した頬、溌剌とした表情。
いきいきとした笑顔!
「お兄ちゃん、この凧はなっくんに会えたよね?」
「うん、夏樹は凧揚げが好きだったから喜んでいたと思うよ」
「やっぱり、なっくんは凧揚げが好きだよね? やっぱりそうだったね」
「えっ、どうして知っているの?」
「だって、ボク、なっくんと友達だもん」
そう言い切る芽生は、最高にかっこ良かった。
芽生はどこまでも晴れ渡る青空のような、爽やな少年に成長した。
瑞樹もそんな芽生にメロメロで、とろけるように甘い笑顔を浮かべていた。
「ありがとう。芽生くんの言葉は光のように輝いているよ。新年から嬉しいよ」
「えへへ」
「さぁ、そろそろ家に帰ろう」
「うん!」
「はい!」
例年なら俺の実家に新年の挨拶に行くところだが、今年は兄さん一家が、母さんとちゃたを連れて、箱根旅行に行っているので誰もいない。
きっと今頃、箱根でゆったりと新年を迎えているだろう。
ちゃたも広いドッグランで自由に走り回っているだろう。
俺たちも一緒に行こうと兄さんから誘われたが、お互い年末激務で疲れ気味だったので、今年は自宅でゆっくり過ごすことにした。
その代わりに上等なローストビーフや母さんの黒豆を差し入れてもらったのさ。
「ボク、おうち大好き」
「僕もだよ」
「だって大好きばかりだもん」
「うんうん」
芽生と瑞樹の仲良しな会話に耳を傾けながら、帰路に就いた。
日が暮れる前にお風呂に入り、パジャマやスウェットというラフな恰好で、こたつに入った。
無理矢理ソファを隅っこに追いやって設置したこたつは、とっておきの場所になっている。
お重を並べ、ローストビーフをサラダの上に大盛りにして、チーズやナッツなどのおつまみを並べる。
特別な料理はせず、切って並べただけの食卓だが、最高に豪華だった。
時折、瑞樹とは炬燵の中で手を握った。
その度に瑞樹が初々しく頬を染めるので、芽生に「お兄ちゃん、もう酔っ払っちゃったの? まだ起きていてね」と言われ苦笑した。
愛媛から箱で購入したみかんを山盛りにして、剥いた。
炬燵にみかんとかベタすぎるが、これぞ日本のお正月といった風情で良いもんだ。
「宗吾さん、こんなお正月もいいですね」
「あぁ、まさに家族水入らずだよな」
母さんの漬けた梅酒にほろ酔いの瑞樹が、コトッと肩にもたれてくる。
瑞樹の膝には、遊び付かれた芽生が寝転んで、うとうとしていた。
瑞樹の優しい手は、芽生の頭を静かにそっと撫でている。
愛情が満ちている。
そんな優しい光景に、俺もフッと目を細める。
「来年もまた、こんな新年を迎えたいですね」
瑞樹がぽつりと呟くので、俺は断言した。
「あぁ、これからも迎えよう」
「むにゃむにゃ……パパぁ……おにいちゃん……ボクもまぜてぇ……」
寝ぼけた芽生の甘えた声。
もう聞けないと思っていた「パパ」という台詞にグッとくる。
「幸せだな」
「はい、幸せです。とても――」
家族の幸せなひとときが、穏やかな夜に溶け込んでいく。
新しい年は、ささやかな幸せに感謝することから始まった。
2025年お正月特別SS 幸せな年明け 了
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