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この先もずっと 9

前置き ようやく本編の続きに、戻ります。 二分の一成人式で芽生が将来の夢は「弁護士さん」と答えた所からスタートです。 **** 「滝沢芽生です。ボクの将来の夢は……弁護士さんになることです。弁護士さんになるには勉強を沢山しなきゃいけないし、大変なこともいっぱいあると思います。でもあきらめないで頑張ります。そして困っている人が笑顔になれるような弁護士さんになりたいです」  驚いたな。  まさか芽生の夢が「弁護士」だったなんて!  それは私の職業だ。  甥っ子が、まさか私の背中を追いかけてくれるとは、夢にも思わなかった。  瑞樹の立ち位置が心配で、盾になるつもりで駆けつけた二分の一成人式。  そこで、まさかこんな嬉しい宣言を聞けるとは。  今まで味わったことのない不思議な気持ちだ。  胸の奥からじわりと湧き上がる高揚感。  心の底から応援したい気持ちを伝えたくて――  私は誰よりも早く、誰よりも大きな拍手で、芽生の夢を歓迎した。  何度も深く頷きながら。  芽生、よく宣言したな。  流石、私の甥っ子だ。  険しい道だが、心から応援するぞ。  芽生がこれから学ぶことは、この先必ず芽生を取り巻く世界で活かされる。  芽生が大切にするものを、芽生の手で守れる最良の手段になる!  だから頑張れ!  頑張れ、芽生!  それにしても一体いつの間に、決意をしたのか。  もしかして……あの時か。  お盆休みに我が家に泊まった芽生と、弁護士の職業について話す機会があった。 ……  夏休み中に書斎を少し片付けようと、書類の整理していると、芽生が可愛い顔を覗かせた。 「芽生、どうした?」  芽生は不思議そうに、デスクの書類の山を見つめていた。 「ここ、入ってもいいの?」 「もちろんだ。おいで」 「おじさん、何をしているの?」 「人を助けるための準備をしていたんだ。法廷で戦うためには徹底的に事実を調べて、誰にも反論できない程の証拠を集めないといけないから」 「この分厚い本は?」 「これは全部法律の本だ。人をしっかりと守るためには、法律を熟知していないといけないからな。だからおじさんは日々勉強だ」 「わぁ、すごく大変そうなのに、おじさんはどうして弁護士さんになったの?」  子供らしい素朴な疑問だ。 「昔、父親に言われたんだ。『正義を貫くのは簡単ではないが、誰かがその役割を引き受けないと、世の中は変わっていかない』と。それが心に響いて、困っている人の力になるために法律を学び、法律を使って人を守ろうと決心したのだ」  芽生は私の言葉に静かに耳を傾けていた。 「法律……」  聡い子だから、きっと頭の中で、情報を整理しているのだろう。  暫しの沈黙の後、黒目がちな目をパッと見開いて…… 「おじさん! ボクもずっと考えていたよ。暴力は嫌いだし、言葉の暴力もいやなんだ。でも大切な人が攻撃されたり傷ついたりしちゃった時……どうしたらいいのかなって……それ以外の方法で立ち向かう方法はないかなって。ボク……叔父さんみたいになりたい。法律を勉強して、大切な人を守れるようになりたい」 「……そうか、素晴らしい目標を抱いたな。弁護士は正義感があるだけじゃ務まらない。難しい勉強を沢山しないといけないし、何より人の気持ちに寄り添うことが大切なんだ。宗吾と瑞樹に育てられている芽生なら、その両方を乗り越えていけるだろう」 「本当に?」  芽生は少し不安そうに問いかけた。 「もちろんだ。もしも迷うことがあったら、いつでも私に相談しなさい」 ****  式典が終わると、それぞれの教室に別れて、用意したアルバムお披露目会が開かれた。  芽生くんのアルバムは周りの人とは明らかに違うスタイルだったが、芽生くんの成長が一目で分かり、芽生くんがどんなに周囲の人から愛され、芽生くん自身が、どんなに周りの人を大切にしているかが、一目で伝わってくる内容で、好評だった。 「芽生、こんなにいっぱい写真撮ってもらって幸せだな」 「うん!」 「芽生、いろんな表情があっていい。生きてるって感じがするな」 「えへへ。泣いているボクも、怒ってるボクも、ぜんぶボクだよ」 「そうだな。いい時ばかりじゃないもんな」 「芽生って、なんか……かっこいい」  お友達に囲まれて嬉しそうな様子に、僕と宗吾さんは目を細めた。  愛されているんだね。  僕の天使は、学校でキラキラ明るく輝いている。  それが嬉しくて、心から嬉しくて。

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