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この先もずっと 10
お詫び
この先もずっと8を飛ばして掲載してしまいました。
本日追加しております。https://fujossy.jp/books/11954/stories/633482
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ボクの二分の一成人式は、無事に終わったよ。
――大人になったら弁護士さんになりたい――
大きな夢を語るのは、とても勇気がいったよ。
もしかしたら突然すぎて、パパとお兄ちゃんをびっくりさせちゃったかもしれない。
ボク……
夏休みにおばあちゃん家にお泊まりした時、憲吾おじさんからお仕事の内容を教えてもらって、困った人を守るお手伝いが出来、ボクの大切な家族も守れる手段に、法律というものがあるのを知ったんだ。
力で相手を無理矢理ねじ伏せるのではなく、容赦ない言葉で言い含めるのではなく、法律を使って理路整然と跳ね飛ばすのって、かっこいい。
今日の宣言は、ボクが夢に向かって走り出すために必要だったんだ。
かけっこで、よーいドンの合図のように。
「芽生、いい式だったぞ」
「芽生くん、感動したよ」
ランドセルを背負って廊下に出ると、パパとお兄ちゃんが笑顔で待っていてくれた。
周りを見渡すと、みんな家族と一緒に帰るようで、お父さんやお母さんに囲まれて笑顔を浮かべていた。
ボクも笑顔になったよ。
「パパ、お兄ちゃん、来てくれてありがとう!」
だって大好きな家族が、待っていてくれたから。
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二分の一成人式を終えた芽生くんは、式の緊張から解放されたようで、清々しい笑顔を浮かべていた。
皆の前で夢を語る姿は最高にカッコ良かった。同時に宗吾さんと僕に寛いだ笑顔を見せてくれるのが嬉しい。
いつだって僕たちは、君が寛げる場所でありたい。
「あのね……お兄ちゃん、さっきみんなの前で将来の夢を言うの、ちょっと緊張したよ。でも頑張って言えてよかった!」
「うんうん、とても立派だったよ。弁護士になりたいって言った時、みんな拍手してくれたね。憲吾さんも嬉しそうだったよ」
「あ、憲吾おじさんは?」
「今日は仕事があるから、体育館の式典の後、帰られたよ」
「そっか、今度会って話したいな」
「今度このアルバムを持って遊びに行こうね」
「うん!」
芽生くんはそのまま宗吾さんを見上げながら、口を開いた。
「お父さん、いつ行く?」
お父さん?
宗吾さんは驚いて足を止めてしまった。
「えっと……パパじゃなく、お父さん?」
芽生くんは真剣な顔で頷いた。
「うん。パパは僕にとって特別な存在だから、今日からは『お父さん』って呼ぼうと思うんだ。もう二分の一成人式も終えたしね」
宗吾さんは意外な申し出に、暫く黙っていた。
少しだけ寂しそうだ。
子供の成長は突然だ。
芽生くんは10歳の僕が越えられなかった壁を、こうやってどんどん越えてくれる。
しかし……宗吾さんが『パパ』から『お父さん』と呼ばれるようになるのなら、僕はどうなるのかな?
『お兄ちゃん』から、どうなるのかな。
少し不安でドキドキしてしまった。
願わくば――
お兄ちゃんのままで……
宗吾さんは、気持ちを切り替えたようでニカッと白い歯を見せた。
「よし! 芽生がそう呼びたいなら、お父さんと呼んでくれ」
「うん、お父さん!」
「ふむ、悪くないな」
僕は隣りでそのやりとりを静かに見守った。
すると芽生くんが僕を振り返って……
「でも『お兄ちゃん』は、これからも『お兄ちゃん』って呼ぶね!」と付け加えてくれた。
「えっ……僕はいいの? そのままで?」
「だって、お兄ちゃんは僕のお兄ちゃんだもん」
「ありがとう」
僕は芽生くんのお兄ちゃん。
そのポジションにいさせてもらえることが嬉しいよ。
宗吾さんが「なんだ、俺だけ呼び方が変わるのか?」とおどけると、芽生くんは「お父さんってかっこいい! スペシャルかっこいい」と無邪気に答えた。
その素直な言葉に、宗吾さんは珍しく顔を赤くして、照れていた。
「そ、そうか、スペシャルなのか」
芽生くんって、宗吾さんそっくりだ。
人をやる気にさせる天才だ。
三人で並んで歩く帰り道。
夜空には一番星が瞬いていた。
芽生くんはその星を指さし、声を弾ませた。
「あの星は、僕の夢だよ」
「芽生くんの夢、心から応援するよ」
「お父さんもしっかりサポートするからな」
二分の一成人式を通して、芽生くんは将来の夢を明確に抱き、僕たちはそれを応援したいと思った。
今日は、三人の絆がさらに深まった1日だった。
僕は、君の夢を応援する人でありたい。
一番星に、僕はそっとお願いする。
この先もずっと――
二人の傍にいさせて下さい。
「瑞樹、ずっと一緒だ」
「え? どうして?」
「以心伝心だ。俺たちは歩み寄る恋をしているから」
僕も宗吾さんに歩み寄っていこう。
声に出して、気持ちを伝えてみよう。
「はい……この先もずっと……一緒にいましょう」
「あぁ! もちろんだ」
この先もずっと 了
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