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クリスマスのひみつ 2

 クリスマスの朝。  僕がキッチンでお湯を沸かしていると、子供部屋から芽生くんが、クリスマスプレゼントを大事そうに抱えて起きてきた。  僕を見つけると、ニコッと笑って、手にしたプレゼントを見せてくれる。 「お兄ちゃん、おはよう。サンタさん……ちゃんと来てくれたよ!」  ――あれ?  でも……その笑顔の影に、ほんの少しだけ戸惑ったような様子が見え隠れしている。 「……芽生くん、どうしたの?」  そっとかがんで話しかけると、芽生くんは、やっぱり少し困った表情になった。何か言いにくそうな、そんな戸惑い。  もしかして……。 「……なにかあったのかな?」 「えっと……その……お兄ちゃん、あのね。ボク、サンタさんの本当の姿、見ちゃったんだ」  ――そうか。  ついに、その日が来てしまったのか。  でも、だからこそ。  今、芽生くんが感じていること、伝えたいことを、きちんと受け止めたい。 「そうだったんだね。芽生くんは、それで、どう思った?」 「……えっとね。最初は正直に言うと……サンタさんは本当にいるんだって思ってたのに、やっぱり、みんなが言う通り、そうじゃなかったんだなぁって……」  芽生くんの声には、ほんの少し、寂しそうな響きがあった。 「そうか、それで……少しがっかりしちゃったのかな?」 「うん、ちょっとね。でもね、それだけじゃなくて……うまく言えないんだけど……お父さんが、ボクのためにがんばってサンタさんになってくれてたのが、うれしかったんだ」 「そうか……いいことに気づけたね。誰かが誰かのサンタクロースになるのが、クリスマスなんだ」  芽生くんに伝わるかな? この気持ち。 「じゃあ、僕も誰かのサンタさんになってるの?」 「もちろんだよ」 「誰の?」 「それは、僕たちのだよ。芽生くんの笑顔は、宗吾さんと僕を幸せにしてくれるんだ」  すると芽生くんは、ほっとしたような、安心した笑顔を見せてくれた。 「そうなんだ。よかった! 早速、プレゼント、開けてみるね」 「うん。僕は洗濯物を干してくるね」  洗面所へ向かうために部屋を出ると、宗吾さんが立っていた。  どうやら、僕たちの会話を、そっと見守ってくれていたようだ。 「あー……やっぱり芽生にばれちゃったか。子供部屋で、でかいくしゃみしちゃったからなぁ。すまん、夢……壊しちゃったな」 「大丈夫ですよ。芽生くんは、真実を知っても、優しい子です。宗吾さんに、感謝していました」 「そ、そうか……そうなのか」  時が経ち、大人になった今でも、僕は幼い頃のクリスマスの夜を思い出す。  朝になると、いつも枕元にプレゼントが置いてあって、弟の夏樹と一緒に包みを開け、子供部屋で夢中になって遊んだこと。  すべて――まるで、おとぎ話のような時間だった。  サンタさんがお父さんだったことを、僕は知らないまま大人になってしまった。  けれど。  あの夜の温もりは、今も胸の奥に残っている。  それもまた、贈り物なんだ。  永遠の思い出という、贈り物。 (続きは明日25日に)

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