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しあわせ図鑑 57

 朝のログハウスには、澄んだ光があふれていた。  カーテン越しに差し込む日射しが、木の床に柔らかな木漏れ日をつくっている。 「お兄ちゃん、起きた?」 「あ、芽生くん、もう起きたの?」 「うん、昨日、ぼく、どこで寝ちゃったの? 気付いたらベッドにワープしてた」 「おじいちゃんが運んでくれたんだよ」 「わぁ、すごい。ボクのおじいちゃんは力持ちだからすごいよね」 「そうだね」  朝からほっこりする会話だな。  芽生くんは本当にはつらつとしていて可愛いよ。 「あれ? パパはどこ?」 「そういえばどこだろう?」    急に不安になると、芽生くんが手を引いてくれた。 「大丈夫。探しにいこう!」  階段を降りると、キッチンから、楽しげな声と炊きたてのご飯の匂いが漂ってきた。 「宗吾くんのおにぎりは、ずいぶん大きいな」 「育ち盛りがいるもので」 「なるほど、じゃあ俺ももっと大きく握ろう。もうちょっと太ってもいい子がいるからな」  宗吾さんとくまさんが並んで、ジーンズの生地で出来たエプロン姿でおにぎりを握っている。白い湯気の立つご飯を、大きな手のひらでぎゅっ、ぎゅっと包み込む二人の姿は、なんだか微笑ましい。  その様子を、芽生くんと一緒に少し離れたところから見守った。 「お兄ちゃん、あれボクのかな?」 「うん、絶対に芽生くん用だね」 「やったぁ! 二個食べたい」 「二個も?」  朝から頼もしい食欲だと、思わず笑うと、宗吾さんがこちらを振り返った。  視線が合うと、宗吾さんはフッと甘い笑みを浮かべてくれた。  その距離が心地好くて、胸の奥が温かくなる。 「できたぞー」  その声と同時に、お母さんが庭の方から顔を出した。 「よかったら私の家庭菜園で野菜を収穫してくれない?」  誘われるまま、みんなで外へ出ると、大沼の朝の空気はひんやりとして、森の香りがした。  深く息を吸うと、心が落ち着いた。  真っ赤に実ったミニトマトを、お母さんがもいで手渡してくれた。 「さぁ、どうぞ。あなたの生まれ故郷の空気と太陽を浴びて育ったトマトよ。エネルギーになるわよ」 「いただきます」  頬張ると、瑞々しい甘さが広がった。 「うわ、甘い! 本当に、美味しいです」  自然と微笑みがこぼれる。 「おかわりしたい!」 「まぁ、こっちで自分でもぎでみる?」 「うん! おばあちゃんのトマト甘くてすごく元気でるね」  芽生くんの明るい声に、みんなが微笑んだ。  再び室内に戻り、朝食が始まる。  大きなおにぎり、焼き魚、もぎたてのミニトマト。  彩り豊かで、心が華やぐ。  ふと箸を持つ手を止め、壁を見る。  そこに飾られているのは、昨日お父さんに渡した、僕が撮った写真。  あれ?  昨日と同じ写真なのに、感じ方が違うな。    そうか……  置いてもらったではなく、ここに在るんだね。  すっかりこの家の一部として、しっくり馴染んでいる。  根を下ろしたような感覚が広がる。  隣から、宗吾さんが小さく囁いた。 「今日もいい顔してるな」  視線を向けると、宗吾さんがニカッといつものように明るく笑っていた。    この笑顔が好きだ。  僕を幸せにしてくれる。    すると芽生くんが、大きなおにぎりを両手で持ち上げる。 「いただきます!」  生命力に満ちた大きな声に、また新しい一日が始まったことを実感する。  ただ一緒に朝ご飯を食べる。  それだけで、こんなにも心満たされる。    見渡すと、写真も、笑顔も、ぬくもりもある。  ここは、僕の故郷。  そう、はっきりと思う朝。

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