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【5】

 スラックスの前を寛げたセリオは血管を浮き立たせて充血したペニスを引き出すと、それを大智の双丘の間に挟み込んだ。  淫魔であったあの男に刺激され、媚薬によって高まった身体は、それを欲して腰が揺れる。  セリオのペニスから溢れる蜜が蕾と陰嚢の間を濡らし、ヌチヌチという卑猥な音を立てる。俗にいう『蟻の門渡り』部分は神経が集中し、茎にも後孔にも快感をもたらすスペシャルなスポットだ。その場所を焦らすようにセリオの長大なペニスで激しく擦りあげられれば、敏感になっている大智はたまったものではない。 「や……やぁぁ! セリ……オ! そこ……やらぁ!」 「クソ淫魔の指を美味そうに咥えていた……な。そんなに……あの指が良かったか?」 「ちが……っ。や……に、決まって……ん、だろ」 「あんな指よりも……もっと、美味いもの……を、たっぷり食わせて……やるから。も……離れ、られなくなる……くらいに」  セリオは煩わしそうにキチンと締められていたネクタイを乱暴に解き、ベストのボタンを全て外すと、ピンストライプのワイシャツを胸まではだけた格好で目を血走らせている。  筋肉で覆われた厚い胸板を喘がせて、鼻息荒く大智の腰を掴み寄せた彼は自身の長い指をヒクヒクと収縮を繰り返している大智の蕾に突き込んだ。 「ひゃぁぁぁぁ……っ!」  陸に打ち上げられた魚のように大きく体を跳ねさせた大智はドア扉に大量の精液を放った。シルバーのパネルに飛び散った白濁が自重によってゆっくりと流れ落ちていく。 「――何度目だ?」 「ふぁ?」 「何度、イッた? その愛らしい顔を、あの男に何度見せたかと聞いているんだ?」 「へ……? ふ、あぁぁぁ……」 「指を挿れただけでイク、淫乱奴隷だったとは……。俺の前では、その本性を隠していたのか?」 「ひ……が、う……。いん……ら、じゃ……ないっ」  全身の力が抜け、声を張り上げる事も出来ないほど、大智は快楽の渦に呑まれていた。あの男の指とはまるで違う、長くしなやかなセリオの指が大智の中を掻き回す。その度に蕾は激しく収縮し、直腸内部が大きくうねる。  大智は、自分が何度絶頂を迎えたかなんて覚えてはいなかった。大小さまざまな波が訪れ、中には射精を伴わない絶頂も味わっている。  トロトロに蕩けた蕾に二本目の指を押し込みながら、セリオは大智の背中に自身の体を密着させると、荒い息を繰り返しながら耳元で囁いた。 「焼き……切れそうだ。この体を……俺以外の……男が触ったなんて。怒りが……おさまらないっ」 「セリオ……あぁ……っ! キツイ……お尻……ん、気持ち……イイッ」 「こんなにも精を無駄に出して……許される……ことではないぞ! あぁ……あのクソ淫魔、忌々しい! 首を刎ねる前に……手足を一本一本――いや、苦しみはより長い方がいい。指を……へし折って……潰して……。あぁ……それでもおさまらない! この……狂おしいまでの嫉妬……っ」  黒髪を乱し、汗を滴らせながら牙をガチガチと鳴らすセリオの低い呻き声は、周囲に渦巻いている黒い霧を揺るがした。その霧が大智の露わになった肌を撫でるたびにゾクゾクと粟立ち、吐息が零れる。 「ん……はぁ。セリ……オ……」 「形式だけの花嫁などいらんっ! お前が……いればいい。大智……大智……っ」  セリオは上体を起すと、いつ暴発してもおかしくないほどに力を蓄えたペニスに手を添えると、二本の指を広げて歪んだ淡い蕾に先端を押し当てた。 「む、ふ……っ」 「これだけ解れていれば傷つけることはないだろう……。すまん……大智。余裕がない……っ」  蕾の入口の薄い襞に引っ掛けていた指を引き抜くと、入れ違いに大きな先端を一気に押し込んだ。 「ん……っふ、あぁぁぁぁっ!」  メリメリと皮膚が裂けるような感覚と、あり得ない大きさにまで広げられた自身の後孔の痛みに、大智は叫び声を上げた。しかし、その声はすぐに甘いものへと変わり、鼻にかかった喘ぎが強烈な圧迫感から逃げるように断続的に漏れ始めた。  内臓を押し上げられるような存在感と、今までに経験したことのない異物感。  背後では、余裕なく少しずつ腰をグッと押しこむセリオの息遣いが聞こえ、大智はじわじわと体を支配する新たな快感に身を震わせた。 「セ……リオの……大き……ぃ! ハァ……ハァ……」 「あ、たり……まえ、だ! 淫魔の……粗チンと……一緒にする、なっ」  淫魔とセリオのペニスの大きさは同じくらい――と認識していた大智は罪悪感に襲われていた。  尻に当てられた感覚でしかなかったが、セリオの方がはるかに大きくて太く、そして硬い。それが大智の中に入った瞬間、発火するかのように強烈な熱を発し、内部を爛れさせる。その熱さと痛みも甘い痺れとなって全身を駆け巡る。  大智の細い腰に爪を食いこませ、ガッツリと掴んだセリオの手にさらに力が加えられると、直腸の最奥を突き破らん勢いで彼が腰を突き込んだ。 「ひゃ……きゃぁぁぁぁっ! っぐ、ふ……っ」  胃の内容物が逆流するかと思うほど、大智の身体の奥深くまで沈められた楔。尻たぶにセリオの下生えを感じ、根元まで咥えこんだことを知る。 「どうだ……。希望とあらば、もっと太く長く出来るぞ?」 「いや……け、っこ……です。んふ……っ」 「俺のペニスを全部咥えたのはお前が初めてだ……。これほど体の相性がいい奴隷というのは……」 「あぁ……ん! うご……く、なっ! 中……ゴリッって……っふ、ふぅ……ふぅ……っ」 「動かなければ……お前を……俺のモノに……出来ない、だろっ。――っふ」  セリオも敏感になっているペニスに与えられる強い締め付けに、わずかに目を潤ませる。  大智の中が馴染んだ頃を見計らって、ユルユルと腰を動かすと、絶え絶えの喘ぎが大智から発せられた。 「っふ、ふ……あ、あぁ……ハァ、ハァ……。奥、くぱぁ……って広がって、りゅ!」 「広げなければ……お前を満たせない……だろ。俺の……精液……で、この体を……支配、する」  ゾクリ――。  大智の目が大きく見開かれる。セリオの低く甘い声が紡ぐ支配力に全身が粟立ち震える。 (これが奴隷……。魔王の力……)  中の粘膜を激しく擦り、大きく張り出したカリが大智のイイ場所を掠っていく。  その度にセリオと繋がっている悦びを感じ、大智は何度も絶頂した。ドライオーガズムが続けば、体は常に絶頂状態になる。大智は止まらない喘ぎに口を閉ざすことも出来ず、涎を垂らしながら腰を突き出し振った。  大智の動きに合わせるように、セリオもまた入口ギリギリまでペニスを引き、抜けそうになり締め付けたタイミングで一気に奥まで突き込んだ。 「ぐ……あぁ……あぁ~ん!」 「――っく。持って行かれる……。キツイ……締めるなっ」 「きもち……いい……。セリオ……の、おチン〇……気持ちいい。お尻……こ、壊れ、ちゃうっ」  大智の快感はもう、薬のせいだけではなかった。密かに恋心を抱いていた相手に嫉妬され、荒れ狂った野獣のように公共の場所で犯されている悦び……。  その相手であるセリオも、余裕と冷静な判断力を失ってはいるものの大智を決して傷つけてはいない。  ただの性処理のために抱くのであれば、流血するほどの強引さがあってもおかしくない。しかも、それが主従の関係であれば尚更だ。奴隷に手加減する主がどこにいるというのか。 「もっと……もっと、擦って」 「ここか? 大智はここがイイのか?」 「あんっ。そこ……! そこを……擦って、突いてっ」  女性の腕ほどの太さの肉棒が薄い粘膜を捲り上げるように出入りする様は酷く卑猥で、グチュグチュと漏れる水音もまた二人の劣情をさらに煽る。  額に張り付いた黒髪を煩そうにかきあげ、腰を振りながら乱れたベストとワイシャツを脱ぎ捨てたセリオは、見惚れるほどの肉体美を露わにし、背中で揺れる大きな翼から羽を撒き散らした。  頭に大きな巻き角を持つ闇を統べる王がか弱い人間を犯す様は、何よりも恐ろしく、それでいて何物にも代えがたい甘さと艶を含んでいた。  大智は瞼の奥で何度も点滅を繰り返す眩い光に意識を失いかけた。膝が折れ、その度にセリオに持ち上げられる。  体の芯を貫いた楔は萎えることがない。太さも硬さも維持したまま、大智の中を抉り、擦った。 「ふ……。また、イ……イクッ」  ぶるりと身を震わせた大智の手錠がカチャカチャと音を立てる。  手首には無数の擦り傷が残っていたが、その痛みよりもセリオに与えられる快感がはるかに凌駕していた。  硬く尖った乳首を両手の指先できつく摘ままれ、大智は天井を仰いでビクビクと腰を震わす。 「何度でもイケ……。お前のその可愛い声を……永久(とわ)に聞いていたい……」 「あぁ……っ。セリオ……、俺……俺、変になり、そ……」 「変になる前に、誓え……っ。俺と……永遠を共に……すると」 「っふ……。す……す、る……っ。魔王、さ……ま、と……一緒……に。あぁ……またイッちゃう!」  後ろから大智の上着とワイシャツを脱がし肩を露出させたセリオは、汗ばんだ白い首筋に唇を押し当てて言った。 「――もう、(たが)うことは出来ないぞ。俺との誓いは……」  上気した肌にやんわりと牙を当てたセリオは不敵に笑うと、大智の下腹に刻んだ奴隷の証を掌で押えこんだ。 「――出すぞ、大智っ」 「ん……ふっ。だ……出して。セリオの……精液、ちょ……だい」 「イクぞ……。楽にしてやる。――大智、愛している」 「――え」  理性が擦り切れ体も限界に近づき、途切れそうになっていた大智の意識が一瞬だけ戻った。 (今――なんて、言った?)  その瞬間、野獣のような咆哮と共に大智の最奥に灼熱のマグマが迸り、その熱さと勢いで無数の襞が激しく蠢動した。 「――っぐ、うおぉぉぉぉぉぉっ!」 「ひぃ……ひゃぁぁぁぁぁっ! 熱い……熱い……よぉ! イク……イッちゃう……イクぅ――っ!」  背中を弓なりに反らせた大智はセリオが放った大量の精液を注がれ、目の前が真っ暗になった。 (このまま、死ぬのかな……俺)  そう予感させるほど、大智の内部は灼熱に焼かれていた。セリオの手で押さえられた下腹にある奴隷の証に皮膚を焦がすかのような強烈な熱を感じ、大智は激しく身を捩った。  中と外を同時に焼かれ、大智はふっと体が軽くなるのを感じた。踏ん張っていた爪先が床から離れ、まるで風船のように浮き上がったような気がしたのだ。  咄嗟に縋っていたドアに爪を立ててみるが、その身体はふわふわとするばかりで力が入らない。 「セリオ……。セリオ……」  大智は何度もその名を呼んでいた。しかし、自身の腰を掴んでいたはずの彼の手が見つからない。  後孔を目一杯押し広げていたものが抜け、冷たい外気が入り込むと共に大智の腹の中を満たしていたセリオの白濁が溢れるように流れ出た。  糸を引きながら足元に落ちるそれを開いたままの股の間からぼんやりと見つめていた大智は、そのまま静かに瞼を閉じた――甘い香りと漆黒の羽毛に包まれて。

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