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遥と革細工
るんたった、るんたったと自宅へ向かう途中、駅の自由通路でクラフトショウが開催されているのに気づいた。
手工芸品なら何でもいいらしく、毛糸で編んだ帽子やフェルト人形、カットグラス、焼き物の花瓶、木製のトレイ、着物をリメイクしたワンピース、ドールハウスで使うミニチュアの小物などがずらりと並んでいる。
「あらーん! どれもこれも素敵なのん! こんなグラスやプレートでご飯を食べたらきっと素敵なんだわ。稜而は遥ちゃんのことを料理上手だと思って、ますます大好きになっちゃうのん」
出展者に話しかけられるたびに、おーいえー、ごきげんようと挨拶して会場の一番端まで行ったら、革細工を扱うおじさんがいた。鼻歌を歌いながら革のハギレにアルファベットを刻印をしている。
染めた革を縫い合わせてパスケースや財布を作ったり、革に複雑な彫刻を施してスマホケースに仕立てたり、革紐を編んでアクセサリーを作ったりしていた。
「サイズ調整しますよ。簡単なものなら、今、作りますよ」
木槌を手に刻印を続けながら、おじさんは声だけを遥に向けた。
「ライブで作ってくださるってことですのん?」
遥が首を傾げると、おじさんは頷いた。
「こういったブローチやペンダント、キーホルダーくらいなら、お作りできますよ」
遥はボードに飾られたサンプルへ顔を近づけてじろじろ見て、突然顔を輝かせた。
「おーいえー! ひらめきましたのーん!」
遥は財布の中からピカピカに光る500円玉を取り出した。
「この500円玉をペンダントにしてくださいませませ!」
おじさんは一瞬目を丸くしたが、すぐに笑った。
「面白いですね、作りましょう」
遥が何も染めていないヌメ革を選ぶと、500円よりも小さい丸窓をあけたドーナツ型の革を2枚、ハサミとナイフで切り出した。
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