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第2話
「政宗……俺のこと避けてる?」
だから……
ある日、亜季から言われた一言に思い当たる節があった。
触れたくても触れられないこの状況を、俺は亜季を避けることで無意識に維持していた。
「避けてるわけないだろ」
そう言ったところで、亜季は納得してないような曇った表情を見せる。
「……でも」
「ごめんな……不安にさせて」
そんなつもりなんてないと、そう言う意味で謝罪したつもりだった言葉は亜季には伝わっていなかったらしい。
それから数日後、『しばらく一人になりたい』という書き置きを残して亜季がいなくなってしまった。
*
「政宗、顔真っ青だぞ、亜季くんと喧嘩でもしたのか?」
「いや……亜季が……いなくなった……」
「は?いなくなった?!」
「俺が悪いんです……」
もう二度と同じ間違いはしないと誓ったはずだった……なのに……
「とりあえず、店はいいから心当たりがあるなら探してこい」
「いや、大丈夫です」
「痩せ我慢するな、そんな顔で酒作って美味いのが出来るわけないだろ!」
その通りだ。
だけど、探すにしても心当たりなんてないし、だったら無心で仕事をしていた方がいい。
「オーナーが心配してくれるのはありがたいです。でも、俺も一人になって頭冷やします……」
このまま、亜季の記憶が戻らないのは仕方ない。
それはわかりきっていることだ。
じゃあ、俺はどうしたい。
『ゆっくりもう一度好きになって欲しい』
そう伝えたのは俺自身だ。
なのに、焦ってどうする。
開店準備をしながら自問自答を繰り返し、気付くと時間ばかりを気にしていた。
*
「政宗、そろそろ上がっていいぞ」
「え、まだ片付けが……」
「もういいだろ、それに……これ、飲めよ」
差し出されたマグカップから香るそれに無意識に手を伸ばす。
「これ……」
「カモミールティーだ」
「カモミール……」
「まぁ、気休め程度にしかならないけど、落ち着くからそれでも飲め」
温かいマグカップを両手で持ち、そのまま一口飲むと独特な香りが鼻に抜けていく。
はぁ……と息を吐き出すと、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
「ありがとうございます。オーナーが酒以外も詳しいなんてちょっとびっくりしました」
「詳しいって程じゃないけど、俺だって一通りはできるんだよ」
そういえば、今のBARを開く前は実家の喫茶店を手伝ってたことがあるってオーナー言ってたな。
「さっさと飲んでうち帰れ。もしかしたら亜季くん帰ってきてるかもしれないし」
「は、はい……色々すいません」
その後、帰宅途中に念の為うちの付近を探したけど見つかるわけもなく、オーナーが言うようにうちに帰ってるかもしれないと、淡い期待を込めながら玄関の鍵を開けると中に入った。
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