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覚悟の夜 03
気安い振る舞いさえ、シモは妖精のように可憐で魅力的だ。
そして大抵のオメガは彼に負けず劣らず美しい。
「……俺不安になってきた。ベータお断りのパーティに潜りこむなんて。レオニードさんに気づかれて軽蔑されたらどうしよう……」
エイノの性別は世の中の大多数を占めるベータだ。
今夜のパーティは本来ならエイノに参加資格はない。
アルファとオメガが番を探す目的で月に一度開かれており、気が合う相手が見つかればそのままホテルへと移動する流れができあがっている。
特に優秀な血を残したいと考えている上流階級の獣人が大勢参加するため、繁殖力の高いオメガが相手でなければ意味がないのだ。
か細い声で弱音を吐くエイノに驚き、シモは先ほど叩いた背中を優しくなでた。
「大丈夫。僕がそばについているし、ホテルまで持ち込めたらこっちのものだよ! 何よりエイノは美しいもの。きっとうまくいく」
妖精のようなシモに褒められても複雑な気分になるが、彼は会うたびにそんな言葉をかけてくれる。
正直なところどこにでもいるブラウンの髪とくすんだ碧眼では、彼と並ぶことさえはばかられた。
しかしここで諦めて逃げ帰ったら、わざわざエイノの恋路を応援してこんなところに招いてくれたシモの好意も、自分自身の決死の覚悟も無駄になる。
エイノは勇気を振り絞ってシモの後に続き、パーティ会場へと足を踏み入れたのだった。
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