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覚悟の夜 04
会場内はそれはもう見たこともないほどの華やかさだった。
シモは国内でも有名な大企業の子息だ。ごくごく一般的な家庭で育ったエイノにとっては、彼が出入りする場所など別世界に等しい。
一年ほど前、たまたま街道で突発的なヒートに見舞われた彼を保護したおかげで親しくなったが、そんなことでもなければ接点のない人種だ。
完全に気後れしてしまい、声をかけてくるアルファたちにまともな返答もできないでいると、見かねたシモが「彼はシャイなんだ」と何度もフォローしてくれた。
それからはほとんど壁の花状態で参加者の出入りを見守っていたが、一向にお目当ての人は現れない。
(せっかく手に入れたけど、ハルの出番は永遠にめぐってこないかも……)
落胆した瞬間、入り口付近が急に騒がしくなった。
視線をそちらに向けたエイノは目を見開いて硬直する。
赤いカーペットが敷かれた豪華な両階段から、ひと際存在感を放つ獣人がふたり並んで降りてくる。トクトクと心臓が走り出した。
「あ、フォードル……と、あれは……っ」
シモが手をふろうとしてハッとする。
おそらくフォードルであろうクラシカルなメガネをかけた灰色オオカミの隣に、色素の抜け落ちた真っ白な長身の獣人が立っている。
額から頬にかけて黒いタトゥーのような縞模様が入っているのは、彼が獅子と虎を掛け合わせたハイブリッド種のライガーである証だ。
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