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恋の嵐 01

 * * *  空が高く青々と晴れ渡っている日だった。  中央美術館の一角にあるレストランカフェに勤務していたエイノは、いつものように来店客を笑顔で出迎えていた。 場所がら落ち着いた雰囲気の客が多く、接客も自然と丁寧になる。  しかし、その日は館長の元へ来客があったらしく、朝から館内がざわついていた。 「誰か有名な人でも来たのかなぁ」 「今度の展示のことで下見でもあったんじゃないか」  ぽつんとひとりごとをこぼしたエイノに先輩のアンソロが答える。 昼食の時間帯を過ぎ、店内は静けさを取り戻しつつあったため、アンソロに尻を叩かれたエイノはガラス窓の吹き掃除をはじめた。  入り口のあたりを外から丁寧に布巾でぬぐい、テラス席へと移動したときだ。  優雅な赤いパラソルの影に、上等なオーダーメイドのスーツを身に着けた男がゆったりと足を組んで座っていた。 片手に電話を持ち、近づいてくるエイノのほうへちらりと視線だけをよこす。  その瞬間おおげさでなく、エイノの息が止まった。  アルビノの獣人だ。  王者のようにきりりと整った形貌と立派な体躯から、ひと目で彼がアルファなのだとわかる。 雪のように真っ白なたてがみのえり首部分を後ろでひとくくりにしてテーブルに肘をつく姿が映画のワンシーンのようだった。 (ライオン……? でも、額に……)  くっきりと浮かんだ黒い縞模様は、普通の獅子にはない。それはまるで……。 (虎だ。ライオンと虎のハイブリッド種……!)

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