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恋の嵐 04

「すみません。僕の不注意で水に浸かってしまいました。新しいものに買い換えてお返ししますので、どちらで購入されたかおしえてください」  申し訳なく思う気持ちと、それとは別の種類の緊張で体中を強ばらせているエイノを見て、ハイブリッドの獣人が少しだけ困った声音で返した。 「弁償は不要だ。店を利用したわけでもないのに気をつかわせて申しわけない。大事なユニホームと、君を水浸しにしてしまった」 「え……」  思いがけない言葉にエイノがほうけていると、獣人は内ポケットからハンカチを取り出し、そっとエイノの頬にあてがった。 「こんなものじゃ追いつかないな。着替えはあるか? もしよかったら表の通りで服を用意しよう」 「そ、そそそそんな! そんなことしていただくわけにはいきません! 俺の方がご迷惑をおかけしてるのに!」  さきほどから予想外のことばかりで、エイノは軽いパニックに陥る。 口調を取りつくろうこともできず、ぶんぶんと勢いよく首を横に振って辞退すると、意外にも彼は引き下がらなかった。 「どうして君が迷惑をかけたことになる? わざわざ客でもない私に忘れ物を走って届けたり、子供をよけて噴水に飛び込んだり、それは迷惑ではなく優しさだろう」  さすがに「はい」と答える勇気はない。 でもまさかそんな言葉をもらえるなんて思ってもいなかった。

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