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再会 02
この場を設けてくれたシモも彼と対面するのは初めてらしい。
たった今彼らが本能的に惹かれ合っている可能性もあるのだと考えると胸がざわついた。
「エイノ」
握手を終えたシモが背中をポンポンと叩いて挨拶を促す。
とうとう自分の番が回ってきた。
心臓が痛いくらいに脈打っている。
「は、はじめまして。エイノです」
気の利いた挨拶などできるはずもなく、なんとか名前を名乗って手を差し出した。
面識があるといっても、彼にとってエイノはたった一度言葉を交わしただけのレストラン店員――いわば背景みたいなものだ。
確認するまでもなく『初めて見る顔』だろう。
銀の瞳がエイノを窺うようにじっと見つめていたが、わずかな沈黙の後に握手を返された。
「レオニードだ」
一瞬性別を偽っていることがバレたのではないかとヒヤヒヤしたが、握られたてのひらの感触が驚くほど優しい。
まるで大切なものを扱うように触れられたのははじめてだ。
(オメガってアルファの人にこんなに大切にされてるんだ……)
胸の奥で羨望と憧憬が瞬いた。
同時に会いたくてたまらなかった人に会えた感動で心が震える。
胸がいっぱいでなかなか二の句が告げられないでいると、隣でフォードルがシモの腰に手を回し、強引に引き寄せた。
「じゃ、挨拶もひと通り終わったし、こいつ借りてくぞ。その子のこと頼む」
レオニードとエイノの顔を交互に見ながらフォードルがニヤリと笑う。
シモはぎょっとして手足をばたつかせながら抗議した。
「ちょっと! 僕はまだエイノのそばに……っ」
「だめだ。約束だっただろ。今日こそ逃がさないからな」
「はあ!? ちょっ、まっ……エイノ!」
引きずってでも連れて行こうとするフォードルに抗い、シモがエイノの服の袖をひっしと掴んだ。諦観を滲ませながらも耳元で囁く。
『ごめん。彼を紹介してもらう代わりにフォードルに付き合うって約束してたんだ。ひとりにしちゃうけど頑張るんだよ。番にはなれなくても、彼の恋人の座を射止めるつもりでね!』
『う……うん。ありがとう。シモも楽しんで』
そう答えると、シモはフォードルに見えないように舌を出した。
死角になっていたはずだが、邪魔するように灰色狼が妖精の身体を拘束し、二人は人ごみの向こうへと消えていく。
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