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甘美な企み 01

 エイノはポケットに忍ばせていたハルにこっそり手を伸ばした。 彼に思い人がいるなら、やはり強制的にこちらを向いてもらうしかない。 (ごめんなさい。レオニードさん……)  彼が向こうを向いている間に小さな錠剤を素早くグラスに放り、一気に飲み干した。 覚悟ならできている。  こくりとハルを嚥下して空になったグラスをテーブルに置くと、エイノはレオニードに体を向けた。 「ねえ、俺みたいなのはどう? あなたのタイプに当てはまるかわからないけど、俺はもっとレオニードさんのこと知りたいと思ってる」  大胆さを装って彼の首にするりと両手をまわし、てっとり早く誘うように甘い声で囁いた。 「お試しでいいから、今夜甲斐性を見せる相手には、俺を選んでよ」  キスができるほど近い距離で瞳を潤ませるエイノに、レオニードが目を見張る。 そしてまた先ほどのように色香のにじむ笑みをこぼし、華奢な腕を引き寄せた。 「わっ」 「レオでいい。……急にフェロモンなんか出して悪い(メス)だな」  ぽふんと彼のたくましい胸元に押しつけられ、体温が急上昇する。 もうハルの効き目が出ているらしい。 ベータのエイノにはもちろん匂いなんてわからないし、フェロモン誘発剤を飲んだところで欲情するわけでもない。 ここからは完全に素面の状態で発情している演技をしなければならないのだ。

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