数日後、大学からのんびりと帰っていると、「トモくん！」と後ろから呼び止められた。 　……この声は、比呂だ。 　無視して帰ろうかと思ったけど、それはあんまりだから仕方かなく立ち止まって振り返った。 「なんだよ」 「はあ……はあ……。は、話したいこと、が、あるの……」 　比呂は息を切らしながらも俺を逃がさないように腕を力強く握ってくる。 　わざわざ立ち止まったんだから逃げるわけないのに。どっかの誰かさんと違ってな。 　なんか五年前の出来事を思い出してしまって、イライラしてくる。ついでに涙まで出てくる。 「……逃げたのは、お前なのに。今更なに」 「ごめん、なさい。もう逃げないから、俺にもう一度告白させてください」 　お願いします、と縋ってくる比呂を俺は力いっぱい突き飛ばし、しゃがみこんで耳を塞ぐ。 「黙れ。俺は聞きたくない！！」 　近所迷惑になるような声で叫んでしまったけど、そんなの気にしていられない。だって比呂の告白を聞いてしまったら“フツウ”じゃいられなくなる。また悩まないといけなくなる。そんなのはもう辛すぎる。 　比呂の告白を聞かなかったら、自分の心にも嘘をついてになるけど普通に生きていられる。結婚して、子供も生まれて、みんなが想像する幸せな生活が出来る。 「トモくん、聞いて」 「い、や……。戻れなくなる」 「じゃあ告白しないから、俺がいなくなった言い訳だけ聞いて欲しい」 それだけはお願い、と縋るように言う比呂が悲しそうで仕方なく頷いた。 「それならいい。……聞いた後に一発殴らせてくれるならな」 「ははっ。いいよ。好きなだけ殴ってよ」 近くに公園があったからそこで話そうとしたけど、雨が降り始めてきてしまって、結局比呂の家に行くことになってしまった。