4 / 29

第3話 高橋先輩は親衛隊員顔だ

趣旨替えなんかしたら、会長の親衛隊からの報復が怖くて、いまさら、龍ヶ崎の親衛隊には入れない。 自分の読み違いに後悔したけどねー。 同級生にそんなすごい人達がいて。 他にもいるけど、まぁ僕とは関わらないから、紹介はいらないよね? 僕は容姿も家柄も平凡で学園では埋もれてる。 その他大勢のモブの一人にすぎない。 な~のに、なんで、告白されて、抱き潰されてんの? 「せ、先輩。放して下さい」 「好き。好きだ。大好きだ。好きなんだよっ! すっごく好きで、どうしても好きなんだあっ!!」 あ~あ、もう十分に気持ちは伝わってますから。 大声で好きを連呼されて、ムードもなにもない。 そんなものは求めてないけど、興ざめするわー。 僕は首を目一杯ひねって、先輩を見た。 親衛隊員だけあって、かわいい係の顔立ちの高橋先輩。 茶色のふわりとした癖っ毛。 アーモンド形の大きな茶色の目。 白い肌に、興奮したからか紅潮した頬、赤みをおびた薄い唇。 ちょいと身長はあるけど、タチに好かれそうな容姿だ。 「先輩の気持ちは嬉しいです。だから、水道、止めましょうよ、ね?」 「間宮あああっ!」 先輩は叫んで、キスをしてきた。 べちゃ、っとした粘膜の感触。 すぐに離れていった唇。 早急だなぁ。 これで気が済んでくれれば、お安くついたもんだ。 キスくらい、いくらでもくれてやるよ。 物心がついた頃から、キス魔の両親や周りの大人達にされまくってきたキスだ。 彼らには『虫歯をうつす』なんて常識は持ち合わせてなかったから、幼児の頃から歯医者通いだ。 ファーストキスに夢を抱くこともなく今に至ってます、僕。 「……お、怒んないの?」 と、おずおずと聞いてきた先輩。 「別にいいです」 「え? マジで? いいの?」 「えぇ」 先輩の腕の力が弱まったから、体を反転させた。 蛇口に手を伸ばしたら、その手をつかまれ、もう一方の先輩の手で顎をつかまれた。 「先輩?」 「……間宮、かわいい」 すぐに眼科にいった方がいいですよ。 「僕はかわいくないですよ」 「特にむきになった時の顔が、かわいいよ」 「……悪趣味」 「拗ねた顔もかわいいね」 と、クスリと笑った先輩。 「水、止めなくちゃ」 「止めたら、またキスしてもいい?」 「いいですよ」 「……キス、好きなの?」 「慣れです」 「慣れ…………。顔に似合わず淫乱なんだ」 顎をつかんでいた手が外され、肩をつかまれて、ドンっと、壁に押し付けられた。 「痛っ!」 体を壁に縫い付けられた格好だ。 あんなに必死に告白してきたのに、今は真顔でにらまれた。

ともだちにシェアしよう!