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第3話 高橋先輩は親衛隊員顔だ
趣旨替えなんかしたら、会長の親衛隊からの報復が怖くて、いまさら、龍ヶ崎の親衛隊には入れない。
自分の読み違いに後悔したけどねー。
同級生にそんなすごい人達がいて。
他にもいるけど、まぁ僕とは関わらないから、紹介はいらないよね?
僕は容姿も家柄も平凡で学園では埋もれてる。
その他大勢のモブの一人にすぎない。
な~のに、なんで、告白されて、抱き潰されてんの?
「せ、先輩。放して下さい」
「好き。好きだ。大好きだ。好きなんだよっ! すっごく好きで、どうしても好きなんだあっ!!」
あ~あ、もう十分に気持ちは伝わってますから。
大声で好きを連呼されて、ムードもなにもない。
そんなものは求めてないけど、興ざめするわー。
僕は首を目一杯ひねって、先輩を見た。
親衛隊員だけあって、かわいい係の顔立ちの高橋先輩。
茶色のふわりとした癖っ毛。
アーモンド形の大きな茶色の目。
白い肌に、興奮したからか紅潮した頬、赤みをおびた薄い唇。
ちょいと身長はあるけど、タチに好かれそうな容姿だ。
「先輩の気持ちは嬉しいです。だから、水道、止めましょうよ、ね?」
「間宮あああっ!」
先輩は叫んで、キスをしてきた。
べちゃ、っとした粘膜の感触。
すぐに離れていった唇。
早急だなぁ。
これで気が済んでくれれば、お安くついたもんだ。
キスくらい、いくらでもくれてやるよ。
物心がついた頃から、キス魔の両親や周りの大人達にされまくってきたキスだ。
彼らには『虫歯をうつす』なんて常識は持ち合わせてなかったから、幼児の頃から歯医者通いだ。
ファーストキスに夢を抱くこともなく今に至ってます、僕。
「……お、怒んないの?」
と、おずおずと聞いてきた先輩。
「別にいいです」
「え? マジで? いいの?」
「えぇ」
先輩の腕の力が弱まったから、体を反転させた。
蛇口に手を伸ばしたら、その手をつかまれ、もう一方の先輩の手で顎をつかまれた。
「先輩?」
「……間宮、かわいい」
すぐに眼科にいった方がいいですよ。
「僕はかわいくないですよ」
「特にむきになった時の顔が、かわいいよ」
「……悪趣味」
「拗ねた顔もかわいいね」
と、クスリと笑った先輩。
「水、止めなくちゃ」
「止めたら、またキスしてもいい?」
「いいですよ」
「……キス、好きなの?」
「慣れです」
「慣れ…………。顔に似合わず淫乱なんだ」
顎をつかんでいた手が外され、肩をつかまれて、ドンっと、壁に押し付けられた。
「痛っ!」
体を壁に縫い付けられた格好だ。
あんなに必死に告白してきたのに、今は真顔でにらまれた。
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