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第5話 先輩が気持ち悪い

僕は、告白されて、キスされて、乳首をいじられ、抱きしめられていた。 高級レストランで食事がすんだあとや、夜景の見えるホテルの部屋での告白などのベタなものは、高校生には不向きだけど。 せめて、夕暮れ時のきれいな時間や、ムードのある二人きりの部屋とか。 もうちょいと、場所と時を考えて欲しかった。 はっきりいって暑いのだ。 それに、抱きつかれてるから汗がわき出てくる。 この状況で、 『暑いから離れて』 って言ったら、やっと落ち着いたような先輩を逆撫でするかもしれない。 先輩の僕を抱きしめた腕がゆるんだ。 抜け出そうとしたけど、顎をつかまれ、キスされた。 下唇を吸われて、舐められる。 こういうキスは経験ありだ。 べちゃべちゃと舐めまわされて、口の周りが先輩の唾液でぐちゃぐちゃになって気持ち悪い。 こんな汚いキスはされたことがない。 僕にとってあたえられるキスは、挨拶のひとつみたいなもので好き嫌いの関連がないものだったけど。 コレはないわ。 汚くて気持ち悪いキス。 そして臭い。 唾のにおいに耐えられない。 先輩の顔がやっと離れて、 「……口開けて」 と、言われた。 僕が首を横にふったら、 「間宮、開けて」 もっと大きく首を横にふって拒絶した。 「開けろよっ!」 と、大声を出された。 驚いて先輩を見たら、 「あぁ間宮は怒鳴られたのとなんかないんだね。ごめんね、ビックリしたよね? キスしたい。ねぇ、間宮と恋人のキスがしたい」 「恋人じゃないからそんなのしません」 「何言っての? 僕たちは両想いで恋人なんだから、キスもセックスもいっぱいしなきゃ」 怖ぇ、この人。 告白はきっぱり断った。 あ、キスを肯定したのがいけなかったのか? 習慣化したキスのせいだ。 「高橋先輩の気持ちは嬉しいんですが、僕は三浦様が好きなんです。他の誰もこの気持ちは変えられません。だからお付き合いは出来ません」 これで先輩の誤解も解けて、あきらめてくれるはずだ。 「それでもいいよ」 と、先輩。 よかったぁ。 理解してくれたんだ。 「会長よりおれのことが好きになるよ、間宮は」 は? 「今は会長を好きでも許してあげる。でも、明日はおれを好きになってるよ」 …………頭、おかしい。 きさくで優しい先輩の中身は、自己中の塊で、人の言葉を理解出来ない怪物だった。 「おれが間宮を一番愛してる。だからおれを好きになって。……今はおれのこと嫌いでもいいから。でも、さわらせて。キスさせて、抱かせて」 気持ち悪い。 一方的に押しつけられる好意に吐き気がする。

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