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第7話 救世主だと思うんだけど……

先輩がパンツの上から、僕のアソコをなでてくる。 「やめろっ…てば……」 親衛隊口調も敬語もなし。 「間宮のチンコ、まだやわらかい」 当たり前だっつーの! 変態に(いじ)られてた()つかよっ! そんな奇特な性質じゃない。 「ねぇ見せて」 と、先輩が言うと、僕のズボンの中から手を出した。 そして僕の前に(かが)んだ。 先輩が僕のベルトに手をかけてきた。 「やめろっ!」 蹴るために上げた足をつかまれた。 「足、細いね」 「やぁ」 と、僕は小さな悲鳴を上げた。 先輩にズボンの裾から手を入られたからだ。 「つるつるの足。すね毛剃ってんの? それとも脱毛?」 答えないでいると、 「今度はおれがしてあげるからね。足以外の毛も剃ってみたいなぁ」 先輩は見上げてから、ズボンの裾を(まく)りあげて僕の足に頬ずりをしてくる。 うっすらと笑いながら、すりすりをやめない。 キモい。 キモいよ。 すげぇキモいんだけどっ。 助けて、アンパン◯ン! みんなの夢を守ってくれんだろーがっ。 「節水~」 と、背の高い生徒が言いながら蛇口を閉めた。 後ろを振り向いた彼は、クラスメイトで風紀委員の八巻修一郎(やまきしゅういちろう)だった。 赤いクセ毛に緑のタレ目の派手な見た目に、甘いマスク。 一度見たら、忘れない容貌だった。 「お邪魔?」 と、八巻。 くるりと(きびす)を返した。 「なんで助けないんだよっ!」 と、叫んだ僕。 「……そういうプレイだと思ったから」 と、振り向いてヘラっと笑った八巻。 「見てわかんないの? 襲われてんだけどっ!」 「他の人と話さないで」 と、僕の足にすり寄ってくる先輩。 「あーそうなんだ。親衛隊員同士でいちゃついてるんだと思ったわ」 と、八巻。 「おれの間宮ぁ」 と、僕の腰にしがみついてくる先輩。 「おれの、って言ってるけど?」 と、八巻。 「嫌がってんのわかんないっ?」 「う~ん、わかりづらいよん。喜んでるって言われればそうかなぁ、って見えなくもないし」 と、八巻は納得したのかしてないのかよくわからない返事をした。 「自力で引き剥がせないの、それ」 と、八巻。 「それが出来たら、頼まないし!」  「かっこいい八巻くん、僕をどうか助けて下さいは?」  と、八巻。 「かっこいい八巻くん、助けて下さい」 言ったよ。 言え、と言われたセリフ言ったのに、助けてくれない。 「そんな恨めしい顔をしないの」 と、八巻。 恨めしい顔ってどんな顔だよ……。 あんたが、この変態をどかしてくんないからだろーが。

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