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第8話 八巻は風紀委員なんだなぁ
「八巻ぃ……お願い、どうにかして欲しい」
と、八巻に頼むしかない僕だ。
「簡単にそんなことを言っちゃわないの」
と、眉をよせた八巻。
困り顔の八巻。
僕の方が困った状況なんですけど。
「この人、誰?」
と、顎で示す八巻。
「2年の高橋先輩」
「高橋さん、強姦未遂で連行します」
と、風紀委員っぽいセリフを言った八巻。
「強姦じゃないっ!」
と、即答の先輩。
「合意なの?」
と、訊いてくる八巻。
「そんなわけないよっ!」
と、僕。
「だそうですよ、高橋さん」
「間宮ぁ!」
と、僕の腰に抱きついたまま叫んでくる先輩。
「何度も言いましたけど、僕はあなたのこと好きじゃないです、高橋先輩。だから、気持ちには答えられません。ごめんなさい」
と、言ってから先輩を引き剥がすけど、離れてくれない先輩だ。
「風紀委員室までご同行を」
と、八巻が言った後、僕から先輩を引き剥がしてくれた。
あっさりと。
本当に驚くほどあっさりと、先輩が僕から離れたのだ。
ほんの一瞬の出来事で。
まるで魔法でも使ったのか。
と、思っちゃうくらいに、簡単に僕から離れたのだ。
僕がどんなに頑張っても、引き剥がせなかったのに、だ。
八巻って、怪力の持ち主?
目の前には、先輩の両手を体の後ろでひとまとめにして、片手で拘束している間宮がいた。
「離せっ!」
と、喚 きながら蹴りを入れようとする先輩。
「暴れると、執行妨害や暴行も追加されますけど、いいんですか? 注意では済まなくなり、処分が下りますよ、高橋さん。それでもよいんですか?」
と、淡々と話す八巻。
「おまえの過剰取り締まりだって言ってやるっ!」
と、八巻を睨みつける先輩。
あぁ、かわいい顔が台無しだ。
「過剰取り締まりねぇ。おれ、あなたに暴力なんか振るっていませんよ?」
と、八巻。
「手をつかんでいる時点で暴力だっ!」
と、先輩。
「嫌がる相手の体を弄 りまわしていた時点で、あなた、未遂じゃなくて強姦が成立しちゃってますよ。そこんところ、理解してます?」
と、八巻。
「……強姦じゃない。愛情表現だ」
と、先輩。
途端に、おとなしくなった先輩だ。
「ここ暑いし、詳しくは風紀委員室で聞かせて頂きますから」
と、八巻。
「間宮、あんたも来れる?」
と、僕に視線を振ってきた八巻。
「……今?」
「出来れば」
と、八巻。
「……後で行く」
「迎えを呼ぶから、嫌かも知れないけどしばらくはここにいて」
と、八巻。
「八巻じゃないの?」
「なにそれ?」
と、八巻。
「あっ…別に深い意味はないよ。ここで待ってる」
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