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第10話 生徒会長の親衛隊隊長は怖い人
「挨拶が遅くなったけど、初めまして風紀委員の佐々木です。きみは?」
と、佐々木さん。
自己紹介されなくても知ってるんですけど。
生徒会役員と同等に有名な風紀委員の一人だし。
あえて副委員長という役職は名乗らないのか?
それとも普段から、そういうのしない人なのか?
「1年の間宮です」
と、僕。
「間宮さん、部活とか委員会に入ってる?」
「生徒会長の親衛隊員です」
「高橋さんも同じとこ入ってるよね」
「はい」
と、答えた僕。
僕のことは認識していなかったのに、高橋先輩のことは把握してるんだね、佐々木さん。
八巻は知らなかったみたいだけど、パッチリお目目でかわいらしい親衛隊員顔の先輩は、風紀にマークされる存在のようだ。
「会長の親衛隊員同士で強姦騒ぎって。タイマンはられて、挙げ句にマンツーマンで制裁されてたの?」
と、佐々木さん。
「先輩に告白されて僕が断って。でも納得してくれなくて襲ってきました」
「……会長そっちのけで、親衛隊同士の痴話喧嘩か」
「違いますよっ! なんかあの人、スッポンみたいにひっついて離れなくって……」
「あぁごめんね。そんだけ話せるんだったら、風紀委員室に行けるよね」
「風紀委員室……」
「そ。被害届け書いてもらわないと。それに詳しい聞き取りもしないとならないから」
と、佐々木さんが僕の眼前に手をさしのべてきた。
その手を取らずに、僕は一歩、歩きだした。
風紀委員室は前を通り過ぎたこともない。
特別棟の4階の北側の角部屋にあった。
その棟の反対側の南側の角部屋が生徒会室だ。
今いるのは2階のほぼ真ん中に位置するトイレ。棟の階段は南北に一つずつある。
「親衛隊隊長にも連絡がいってるから、来ると思うよ」
と、佐々木さん。
「隊長に連絡……」
「それと会長にも連絡がいくよ。きみには災難だったね」
「……僕は除隊させられるんでしょうか?」
「高橋さんは除隊だろうねぇ。きみは会長と隊長が話し合って決めるんじゃないかなぁ。こんなことになっても、親衛隊は辞めたくないんだ? そんなに会長が好き?」
と、直球の質問をされたのだ。
僕が黙っていると、
「会長に知られたくなかった?」
と、佐々木さん。
会長なんてどうだっていいんだけど。
隊長に目をつけられたら、隊の中で居ずらくなる。
会長に媚 を売る者や近づく者に容赦がない。
とことん排除してしまう。
自分の気持ちを偽って他の隊員と合わせていたけど、親衛隊活動は楽しかった。
除隊しちゃうと楽しみが減っちゃうなぁ。
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