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第15話 育ちのよさは些細なしぐさにもあらわれるもの

「三浦のとこ抜けて、僕の所に来なよ。た~ぷりかわいがってあげるから」 と、龍ヶ崎。 「結構。どうせいじる相手が欲しいだけでしょうが」 「……頭、悪くない。もう少し回転がいいと上出来なんだけどな」 「なんの?」 「友達」 「誰の?」 「僕の」 はぁ? 「……………………龍ヶ崎様、友達いないんですか」 「そこ断定する?」 「信者はいっぱいいそうなのに」 「信者って。何教?」 と、クスクス笑い出した龍ヶ崎だ。 何がおかしいのかずっと笑っている龍ヶ崎。 「教祖様なの、僕?」 「あぁ。それに近いかも」 「間宮って、おもしろいよね。おとなしそうなのに、気が強くて」 「龍ヶ崎がおしゃべりだとは思わなかったよ」 「あぁそれは、間宮が僕のお気に入りになったからだよ」 龍ヶ崎の親衛隊員なら卒倒する位に喜ぶと思うセリフだけど。 僕にとっては迷惑にしかならない。 「すっごく嫌そうな顔してる」 と、龍ヶ崎。 「そんなことないですよ、龍ヶ崎様。これが元々の顔なんで」 「いまさら守りに入っても遅いよ、間宮」 ドアをノックされ、佐々木さんが入ってきた。 「間宮さんて修一郎とクラスメイトなんだよね。彼に送らすから行こうか」 と、手を差し出された。 僕だけ立ち上がっていても、スルーした佐々木さん。 こだわらないのか、興味ないのか。 たぶん後者だな。 きれいな手を見て、佐々木さんの顔を見たら、にっこりと微笑まれた。 遠慮がちに手を重ねたら、そっと手をつかまれた。 こんな力加減にも育ちが現れてる気がするよ。 佐々木さんに、促されて部屋を出ようとしたら、 「印鑑持ってきてね」 と、龍ヶ崎。 「明日持ってくるよ」 と、答えて部屋を出た。

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