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第16話 風紀委員向きとはなんぞや

風紀委員室の個室から出ると、八巻が待っていた。 「帰ろっか」 と、八巻が言うから、 僕はうなずいた。 前を歩く八巻についていく。 風紀委員室を出ても僕達は無言で歩いた。 寮に着いて、エレベーター待ち時間に、八巻が僕を振り返った。 「佐々木さんが、間宮は風紀向きだって言ってた。風紀に誘われるかもね」 と、八巻。 「龍ヶ崎にも同じこと言われた」 八巻のタレ目が驚いたように見開かれた。 「龍ちゃんに? ずいぶん気に入られたんだねぇ」 「たんに遊ばれただけ」 「佐々木さんはともかく、龍ちゃんはさぁ、面倒くさがりで基本あんまり話さないから。龍ちゃんが誘うなんてすごいね」 軽快な音が鳴って、エレベーターが到着した。 開閉ボタンの下の読み取り機にIDカードをかざし、僕達は乗り込んだ。 僕は自分の部屋がある3階のボタンを押した。 「きまぐれだよ。平凡すぎて物珍しかったんじゃないかな?」 「……………………平凡ねぇ」 と、やけに間がある八巻。 「なに?」 「間宮は頭いいし、埋もれてはいないよ」 「頭の出来なんて、ここではどうでもいいことだよ? 見た目が一番重要視されるの。それと生家の格付け」 「見た目は悪くないよ。大手法律事務所の子供で家柄も悪くない」 「たかが2代目の個人経営の事務所。悪くない、と、見た目がよい、では違いすぎなんだけど」 八巻がクスクスと笑ってきた。 僕の眉間に皺がよったら、 「その顔、似合わないな~」 と、八巻が僕の眉間をぐりぐりとさわってきた。 「痛い…」 じっとりと八巻を見上げたら、 「間宮って、おもしろいね~」 と、僕の顔から手が離れた。 目的の階にエレベーターが着き、軽快な音が鳴り、扉が開いた。 僕が歩き出すと、 僕の後ろを八巻がついてきた。 「もう送ってくれなくても大丈夫だけど」 「部屋まで送り届けるのがおれの役目」 「僕がいらない、って言っても?」 「任務放棄したのがバレたら、後で大変な目にあうから」 「どんな目?」 「守秘義務」 と、八巻がにやりと笑い、 「秘密」 と、自分の口元に人差し指をあてた。

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