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第19話 セカンドって偉いのか
着替えてリビングに戻ったら、生徒会長親衛隊のトップ二人が優雅にソファーでくつろいでいた。
隊長の深瀬さんは2年生で、学園カーストでセカンド。
家柄も容姿もよく、生徒会長の三浦様を心底崇拝されている人だ。
小柄でふわふわしててかわいくて、性格も人当たりもきつくて、身も心もセカンド。
僕の苦手とする人種だった。
副隊長の掛川さんも2年生で、物静かな人で声を荒げたところを見たことがない。
日本人形を具現化したような容姿の美人だ。
相反するような二人が生徒会長親衛隊のトップだった。
「お待たせしました」
と、僕は言って床に座った。
「髪、乾かしてくればよかったのに」
と、副隊長。
「ローカで待たされた方が長かったんだけど」
と、隊長。
「すみませんでした」
……平謝りしかない。
理不尽だけど、仕方がない。
「風紀から連絡がきたんだけど、どうしてこんなみっともないことが起こったんだと思う?」
と、隊長。
みっもないこととは、隊員同士の強姦騒動のことだよなぁ。
被害者の僕にそれを聞く?
加害者の高橋先輩に好かれていたことさえ、気づかなかった僕に聞くかぁ?
「……わかりません」
「わからないの? 高橋はねぇ、セカンドなの。その彼が何の取り柄も特徴もない平凡平凡したきみを襲うなんて、考えられないんだけど」
と、隊長。
「事実ですか?」
と、副隊長。
年下の僕にも敬語の副隊長は紳士だよ。
「事実です」
「さっきみたいな格好で迫ったんじゃないの?」
と、隊長。
いくら例えでも、学園のトイレでバスタオル1枚にはならないでしょうが。
いったいどんなシチュエーションだよ……。
「まぁバスタオルは無理があるけど、間宮くんのほうから思わせな態度をとったりしなった?」
と、僕の表情を読んでの副隊長の質問だ。
「高橋先輩はきさくに話しかけてくれるので、仲のよい先輩でした。二人きりで会ったこともありませんし、先輩の気持ちには気づきませんでした」
「一方的に好意を寄せられていたと?」
と、副隊長。
「そうなんでしょうね」
と、僕。
隊長がかばっと立ち上がり、
「高橋がこんな平凡を好きになるわけない! おまえがなんかしたんだっ!」
と、大声を出した隊長。
すぐに感情的になるから好きになれないんだよ、この人。
指をさされなかっただけ、ましか?
なんかって、なに?
話すのもNGなの?
平凡は空気のごとく存在を消せと?
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