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第20話 生徒会長親衛隊を除名されました

「おまえ、除名だから。除隊届けはいらないよ」 と、隊長。 「被害者の僕が?」 「問題おこした者は隊にはおいておけない。常識だろうが」 「高橋先輩も?」 「彼は三浦様の判断を請う」 と、隊長。 「僕は隊長判断で?」 隊長にギリッとにらまれた。 「隊則だ」 「あぁ、なるほど」 「納得されたようで、助かります」 と、副隊長。 「僕の代でこんな醜聞が起きるなんて思わなかったよ。二度と僕の前に現れないで」 と、隊長が言うと玄関に歩いていった。 そして玄関が閉まる音がした。 「ソファーに座ったら」 と、副隊長。 「いえ、平凡ですから」 「平凡ねぇ?」 と、くすりと笑われた。 今日、何度かきいたセリフだ。 「隊長を一人で帰していいんですか?」 「何それ?」 「だって、隊長はいつも団体で行動しているようなので」 「子供じゃないんだから、部屋にぐらい一人で帰れるよ」 「待ってるかもしれませんよ?」 「そんなに追い出したいんだ?」 「まさか。そんなこと思っていませんよ」 「間宮っておもしろいよね」 と、副隊長の手が伸びてきて、僕の髪をさわった。 「もっとタオルドライしないと。水滴が垂れてるよ」 と、副隊長。 「お客様がお帰りになったら、乾かします」 「ドライヤー持ってきなよ。俺が乾かしてあけるよ」 「子供じゃないので、自分のことは自分でします」 「……ほんと、おもしろいよ」 と、真顔の副隊長だ。 除名されたのだから、もう生徒会長の親衛隊じゃないのだから、副隊長ではないのだけど。 「言葉使いが変わっても、つっこむどころか顔色ひとつ変えないし」 と、副隊長。 「隊員じゃなくなったので、プライベートな会話なのかなと思いまして」 「プライベートでもほとんど敬語だけど、俺」 「…………」 ここは無言は正解じゃないはず。 では、何て言えばよい? ほとんど、とは全部ではない。 敬語じゃない人もいるということだ。 きさくに話す間柄ではない。 ろくにしゃべったことのない人だ。 スルーすべきか? まともに受けてたつべきか? 「どのような心境の変化がおありで?」 「深瀬と高橋は初等部からの友達」 僕の問いかけはスルーされたよ。 「あぁ……なるほど。僕が全面的に悪者の理由がわかりました。ありがとうございます」 と、副隊長に頭をさげた。 「成績もいいけど頭の回転もいいのな。高橋が間宮のこと『頭がよいのに、みんなに合わせていてかわいい』とか妙のこと言ってたけど、わからなくもないよ」 ほんと、あの人、僕のことよく見ていたんだ。 もっと違うアプローチがあったのでは? だからといって、好きになるかはわからないけど。 今のように、気持ち悪がられて嫌われる立場にはならなかったはずだ。

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