24 / 29
第23話 風紀のアフターサービス?
夕食を作る気にはなれなくて、南ちゃんがスーパーでお弁当を買ってきてくれた。
それを僕の部屋で二人で食べて、南ちゃんは泊まった。
部屋のベッドはダブルサイズなので、二人で一緒に寝ても狭くないのだ。
「瑛ちゃん、朝だよ……」
「ん…」
間近で聞こえるセクシーボイスに、
「みな…みちゃん……もうちょい寝るぅ」
と、目を開けずに近くにある温かみにすり寄った。
すぐにそれがなくなってしまった。
シーツをパンパンと叩いて探していたら、手をつかまれた。
「瑛ちゃん……朝弱すぎ」
「ぅん…まだ…だめぇ」
「ほんと、寝汚い」
「うぅん……」
「ぼくも自分の準備しなきゃなんないから、もう構えないよ」
と、南ちゃんに手を離された。
南ちゃんはベッドから下りたようで、気配がなくなった。
う~ん。
だってまだ起きなくてよいじゃん。
目覚まし時計だって鳴っていないし。
朝が苦手な僕は、大音量ベル式の目覚まし時計が3つあって、時間差で鳴るようにセットしていた。
ついでに、スマホのアラームも完備していた。
南ちゃんにうるさすぎる、と言われている……。
「起きて。朝ごはん食いっぱぐれる」
肩をゆすられて、
「……ごはん…いらゃない」
「あんたはいらなくても、おれはいるの」
僕は腕を持ち上げられ、
「いたっ…」
上体を引き起こされた。
「暴力反…」
半開きの目で抗議しかけて、ぱっちりと開眼した。
「八巻?」
なんでいるの?
夢?
「目ぇ覚めた?」
と、八巻。
本物だ。
現実だ。
「なんで?」
「迎えに来たら、篠塚が入れてくれて、間宮を起こせって言われた」
昨日の今日だから?
わざわざ迎えに来たの?
風紀のアフターサービスって、すごいわ。
そばに南ちゃんがいないか、
キョロキョロして探し、
「その南ちゃんは?」
「朝の準備に忙しそうだったよ。間宮も早く準備して」
「え~。まだ時間あるよ」
「は? ギリギリだよ? ご飯食べてる時間なくなるよ?」
「だって僕、朝食べない人だから」
八巻の紫色の目がすがめられた。
今日は紫なんだ。
噂通り日替わりでカラコン変えるんだ。
「……それ、事前に欲しい情報だよ」
「だって聞かれてないし。まさか朝イチで迎えにくるなんて、聞かされてなかったもん」
「もんじゃない。早く顔洗って服着替えて。食堂いくよ」
「あ~。ご飯食べないのに食堂行くのって無駄じゃない?」
「間宮には無駄でも、おれには必要なことなの。それに朝はきちんと食べた方がいいよ。脳みそが糖分欲しがってるのに。間宮は人より頭使うのに、食べないからガリガリなんだよ」
腕をつかまれたまま、ベッドから降ろされた。
手をつながれて洗面所に連れていかれる途中で、リビングでお茶を飲んでいる南ちゃんをみつけた。
「おはよう~」
と、手を振ってきた南ちゃん。
なにを優雅にお茶を飲んでいるんだ?
これ、なんとか、して欲しいのに。
ともだちにシェアしよう!